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【スーパーGT】GT3車両を使う“カスタマー”はカーボンニュートラル燃料にどう対処している? 課題解消に向けエントラント協会に提言するチームも

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【スーパーGT】GT3車両を使う“カスタマー”はカーボンニュートラル燃料にどう対処している? 課題解消に向けエントラント協会に提言するチームも

 スーパーGTは今シーズンより、環境に配慮した燃料『カーボンニュートラルフューエル(CNF)』を、GT500、GT300両クラスの全車両に導入する。これはバイオマス由来の燃料であり、従来のガソリンと違い化石燃料を一切使用しないものとなっている。最近では、将来的なエンジン車廃止を謳っていたEU(ヨーロッパ)が、合成燃料使用という条件付きでエンジン車を容認することで合意しており、合成燃料は今注目の燃料と言える。

 スーパーGTで使われるCNFはハイオクガソリンのJIS規格に限りなく適合したものと言われており、昨年の段階でGT500に参戦するホンダ、トヨタ、日産の3メーカー、そしてGT300クラスのGT3車両を供給する海外メーカーに事前にCNFが渡されてベンチテストが行なわれ、基本的な問題がないことが確認された上で導入が決まった。

■環境面でもレース面でも利点が多い? カーボンニュートラル燃料の究極形“eフューエル”は実現可能なのか

 ただやはり、CNFはガソリンとは特性がやや異なる部分がある。例えば熱エネルギー量や揮発性は、ガソリンと比べるとやや低いようだ。そのため出力や燃費は若干低下する傾向にあり、各チームはそれらに対処するため様々な策を講じている。

 ただし、GT3車両で参戦しているGT300クラスのチームにとっては、その対処が一層難しいようだ。彼らはGT3のパッケージを購入して参戦する立場であり、そのパッケージのほとんどがホモロゲーションされていて手出しできないため、GT500クラスのメーカーやGT300規格車両(かつてのJAF-GT車両)を使うチームのように、エンジンを開発してパワーダウンを補ったり、制御系をアップデートすることなどもできない。

 この点について、GT3系チームの見解はどうか? GT3規格のアウディR8 LMSを使用するTeam LeMansの古場博之氏に話を聞いた。

 古場氏はかつてトヨタで『C-HR』の開発責任者を務めた人物でもあり、昨年はエグゼクティブ・アドバイザーとしてチームに関わり、今季はエントラント代表を務める。CNFは特に揮発性の低さが課題だと言われているが、古場代表はそれによって特に冬場や春先はエンジンの不具合を誘発するリスクがあると指摘する。

 揮発性の悪化によって起こる不具合のひとつが、“オイルダイリューション”。燃え切らなかった燃料が揮発せずに、エンジンオイルに混ざってしまうことだ。そうなってしまうと、オイルの粘度・潤滑効果が低下してしまい、メタル等の金属部品が損傷してしまう可能性がある。

 これに対するひとつの対応策として、電子制御によって燃料噴射のタイミングなどを調整することが挙げられるが、少なくともアウディに関しては、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)のマップ変更はできないという。そのため、エンジンオイルの温度や冷却水の水温を上げることで、出来るだけ燃料が揮発するようにコントロールするしかないと古場代表は言う。

 彼はさらにこう続ける。

「揮発性が悪いと、エンジンの始動性も非常に悪いです。冷えている時は十数回エンストしてしまう……そういう話もあります」

「そうなると、バッテリーやスターター、エンジンが痛んでしまいます。エンジンが壊れると何千万というお金がかかってしまうので、そういうところを防いでほしいと思っています」

 新燃料導入による若干のパフォーマンス低下は致し方ないにしても、不具合が起こらないような改良はできないものか……そういった考えから、古場代表は富士公式テストの前日に、aprの監督でありGTエントラント協会(GTE)の会長も務める金曽裕人氏と話し合いの場を持ち、提言をしたという。

「通常のガソリンでは夏と冬で揮発性を分けていて、夏より冬の方が蒸発しやすいガソリンになっていますが、今のCNFは夏ガソリンと同じくらいの揮発性しかありません」

「そこでGTEの金曽さんとお会いして、揮発性を上げるような改良をできないかという話をしました。ガソリンだと一定の成分で蒸気圧を変えられるので、ガソリンと同じように夏・冬で揮発性を変えることができるはずです」

 ただ古場代表としても、CNF導入による社会的意義の大きさを考えても導入の延期などはすべきではないと考えている。したがって、シリーズ全体で協調をしていきながら、課題を解決する術を模索していきたいとした。

「カーボンニュートラルに向けての活動はモータースポーツの将来にも繋がりますし、そこは僕たちみんなで一緒に、しっかりと取り組んでいかないといけません」

「モータースポーツは技術開発の場ですから、問題があるからやめるのではなく、みんなで一緒に改良していこう……そういう話をさせてもらっています」

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みんなのコメント

1件
  • 300は再始動できない車両が続出
    スバルなんかは白旗あげてました
    混ざってオイルが増える・・・
    新しい燃料のおかげでブローバイ吹いて路面コンディションは最悪でした。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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