現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > これがあると超絶カッコいい!! ボンネットの穴はなぜ必要?

ここから本文です

これがあると超絶カッコいい!! ボンネットの穴はなぜ必要?

掲載 更新 45
これがあると超絶カッコいい!! ボンネットの穴はなぜ必要?

 かつて、多くのスポーツカーに装備されていた、ボンネットのエアインテーク、またはエアアウトレット。「ボンネットにエアインテーク、エアアウトレットがある=排熱が必要な高性能車」ということから、機能として必要であることはもとより、「存在自体がカッコいい!!」とされてきた。

 だが、昨今の高性能スポーツカーでは、ド派手なエアインテーク、エアアウトレットが徐々に減りつつあり、あっても小さな形状になっていることが多く、リアウイングと同様、その効果のほどには疑問を抱く方も多いようだ。

地味だけどかなり良い!? 新型シビックの走りは「超ゴリゴリのホンダ味」だった!!

 そこで、改めてボンネットに大きな穴は本当に必要なのか、最新の空力事情とともに、ご紹介していこう。

文/吉川賢一
写真/トヨタ、日産、ホンダ、スバル

【画像ギャラリー】ボンネットの「穴」が高性能の証!! 世界のエアインテーク&エアアウトレット装着車 全26台

■緻密なシミュレーションができるようになったことで、必要性がなくなった

シビックタイプR専用となるアルミフードに設けられたエアインテーク。エンジンルーム内にフレッシュな空気を取り入れ、そして空気の流れとともに廃熱をしている

 緻密な空力設計が難しかった時代は、エンジン廃熱のため、ボンネットのエアインテークは必須とされてきた。空気の流れを正確に知ることができなかったため、とりあえず開けておく必要があったのだ。

 しかし現在は、シミュレーション技術が進化したことで、エンジンルーム内の空気の流れを緻密にコントロールすることが可能となり、廃熱のしくみを緻密に設計できるようになった。

 たとえば、FK8型シビックタイプRでは、フロントグリルから取り込まれ、ラジエーターを通過した熱い空気を、アルミボンネット上に設定したインテークダクトからの走行風によって、車外へ放出している。

 そもそも、ボンネット上を流れる空気の一部を分断するような大きなエアインテークは空気抵抗となるため、必要ないのであれば装備しない方が、空気抵抗が低減でき、燃費に貢献できる。

数少なくなったボンネットのエアインテークを備える2代目レヴォーグ。ダクトから導入した空気をインタークーラーに当てている

 レヴォーグや新型WRXのように、水平対向エンジン特有のレイアウト上の都合(インタークーラーの冷却用)などで、エアインテークありきのエンジンルーム内レイアウトがなされている場合もあるが、シミュレーションの進化によって空気の流れをコントロールできるようになったことで、ボンネットのエアインテークは必須アイテムではなくなったのだ。

 また、エンジンルームは、キャビン(乗員がいる空間)ほど密閉されているわけではないので、冷却に使用した空気は、自然と隙間から抜けていく。その空気の抜き方によっては、空気抵抗を下げることもできたり(燃費が改善する)、高速走行時の直進性を上げることも可能だ。

 空気をどのように取り入れて、どこから抜くか、各メーカーで少しずつ方策が異なるため、見ていて面白いポイントだ。

2021年9月10日に世界初公開となった新型WRX。エアインテークだけでなく、エアアウトレット付きの樹脂製フロントフェンダーも特徴的だ

リアバンパー左右のダクトは後輪に流入した空気を後方に出し、車体の揺れを低減

FK8型シビックタイプRのエアダクト。エンジンルーム内の熱をアルミボンネット上に設定したインテークダクトからの走行風によって、車外へと放出している(FK8説明資料より)

NSXタイプSは空力性能と冷却性能などを高次元で両立させる「トータル・エアフロー・マネージメント」のもと開発

R35GT-R NISMO2022年のボンネットにあるNACAダクト。R34型スカイラインGT-Rの時代から装備されるようになったNACAダクトは、R35型では2カ所となった

■新型Zは、強化ウォーターポンプを採用した水冷式インタークーラーを搭載

ツインターボエンジンを積むターボ車だがボンネットにはエアインテークはなくすっきりしている

 とはいえ、ハイパワーエンジンには、それに見合う冷却システムが必要。8月に北米版が発表となった新型Zには、400ps級のツインターボエンジン、VR30DDTTが搭載されることが発表されている。

 この新型Zには、外気温の高い環境や低速走行時などでも、エンジン性能を安定して維持するため、強化ウォーターポンプを採用した水冷式インタークーラーが搭載されている。

 空冷式に対して、ターボのコンプレッサー下流の吸気容積を最小化することで、ダイレクトなトルクレスポンスを実現することができ、限界領域までターボエンジン性能を使うことができるとのこと。

 フェアレディZも、かつてはボンネットにエアインテークを装備していたが、空力設計の進化に加えて、冷却技術も進化したことで、ボンネットのエアインテークは必要なくなったのだ。

VR30DDTTに搭載されているツインウォーターポンプの水冷式インタークーラー

■最新のエアインテーク事情はこうなっている


●グリルシャッター

走行状態や暖機状態に合わせてシャッターを自動開閉する。冷却系に走行風を必要としない走行シーンでシャッターを閉じることで暖機を促進するとともに空気抵抗を軽減(写真はプリウスPHV)

 ボンネットのエアインテークが減っている現在、ハイパワー化するエンジン冷却のための空気の取り込みは、フロントグリルからの空気導入によって賄われている。このエンジン冷却の観点からは、より多くの空気を取り込むため、フロントグリルは広く大きく開けたいところであるが、そうはいかない。

 エンジン始動直後などは、なるべく速やかに、エンジンの暖機を促し、燃焼効率を上げて燃費改善につなげたいところ。そのためには、大きく開口したままグリルでは効率が悪い。「始動直後の暖機」と「走行中の冷却」、これを両立するアイテムとして、必要なときに開け閉めができる「グリルシャッター」が登場している。ラジエターシャッター、アクティブグリルシャッターと呼ぶ場合もある。

 グリルシャッターは、暖気を促進する場合や、高速走行での過冷却を防ぐ場合に閉じるようにできている。また、グリルシャッターを閉じた際に、空気流を床面へと導き、リフトフォース低減や、空気抵抗低減を狙うことも可能だ。

 すでに多くのクルマに搭載されており、トヨタはプリウス、カローラツーリングなど、日産はセレナe-POWERやエクストレイル、ホンダはCR-Vやアコード、スバルのレガシィアウトバック、フォレスター、XVなどにも搭載されている。

 特に、始動直後から電気走行となり、暖機運転が苦手なハイブリッド車との相性が良い。

●エアカーテン

 いま流行しているのが、フロントバンパーサイドの開口部にあるエアインテークだ。レーシングマシンのカナードウイング(主にダウンフォースを増やすフィン)とは違い、フロントバンパーからフロントタイヤ直前に、穴が貫通している。これは、フロントタイヤのサイドに空気を流し、タイヤ周りで発生する空気渦を整える、通称「エアカーテン」と呼ばれる考え方だ。主に、燃費改善と、高速直進性の向上のために採用している。

 直近で登場した日本車だと、シビックタイプRや2代目ヴェゼル、ノート、ノートオーラのようなコンパクトカーなどでも採用されている。BMWやメルセデスといった欧州系のメーカーが2010代前半から導入し始め、その後、採用事例が増えていったと記憶している。

2012年頃のBMWで登場したエアカーテン。フロントバンパーから取り込んだ空気を、タイヤサイドへ流している技術が構築されていた

FK8のフロントサイドのエアカーテン。空気流をまっすぐにタイヤ横へと流している。ダウンフォースはバンパーコーナーでの気流を上方に跳ね上げることで発生

 レクサスLCでは、後輪側にもエアカーテンと同じ機能を持たせた、ロッカーサイドグリルを設定しており、ボディ側面を抜ける気流をリヤホイールアーチ側へと抜ける導線で整流している。2枚ドアかつ、リヤフェンダーが左右に大きく張り出しているため実現したという。

レクサスLCのエアカーテンは前後輪に効かせている。リヤフェンダーに設置したロッカーサイドグリルによって、側面からの風をリヤホイールアーチへ抜ける導線で整流した

■エアインテークはスバル車では今後も必要

日本未発売、2019年に北米市場で販売されたS209。S209のオーナメント、フロントアンダースポイラー、クローム加飾付きバンパーベゼル、バンパーサイドカナード、そして片側21mmずつ拡大したワイドフェンダーで武装するS209。新型WRXとは違いフェンダーは樹脂製ではない

フロントフェンダー上のエアダクトはエンジンルーム内の熱を逃がす、これまでにない構造

リアフェンダー後ろ、リアバンパーサイドに設置されたエアダクト

 現代のように、シミュレーション技術が確立し、エンジンルーム内の熱マネージメントができるようになった今、ボンネット上の大型エアインテークは、必須とは言えない状況だ。

 しかし、スバルの高出力車は、そうはいかない。スバルが拘る「低重心な水平対向エンジン+シンメトリカルAWD」の場合、エンジンが低い位置にレイアウトされているため、前(グリル)から取り込む空気だけでは不十分であり、上からも空気を取り込む必要がある。

 エアインテークが空気抵抗になるのがわかっていても、この「水平対向エンジン+シンメトリカルAWD」を続ける限り、ボンネットのエアインテークを受け入れざるを得ないのだ。

空力の化け物、ヤリスWRCのエアインテークとエアアウトの方法とは?

ヤリスWRCエンジンルーム内の写真。エンジンルーム内に冷却ファンが装着され、ボンネット上のエアアウトレットから熱気を排出する仕組みだ。トヨタのエンブレムの裏側からは吸気が行われている

【画像ギャラリー】ボンネットの「穴」が高性能の証!! 世界のエアインテーク&エアアウトレット装着車 全26台

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス

みんなのコメント

45件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

499.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

93.0899.8万円

中古車を検索
シビックタイプRの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

499.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

93.0899.8万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村