■SNSで意外な方向で話題に! 外観は近未来を意識?
ホンダのコンパクトSUVとなる新型「ヴェゼル」が2021年4月22日に正式発表(23日発売)されました。
2代目となった新型ヴェゼルが同年2月18日に世界初公開されてから2か月、SNSなどでも大きな話題となりましたが、開発責任者・岡部宏二郎氏はどのような想いで新型ヴェゼルを世に送り出したのでしょうか。
新型は、2021年3月中旬から始まった先行受注も開始から2週間ほどで約1万5000台と、非常に良い滑り出しだと聞いています。
2013年12月に発売され、7年半のロングライフモデルとなった初代は、当初は「フィット派生のクロスオーバー」と呼ばれていましたが、「フィット」より本命といわれるくらいの人気となりました。
とくに日本市場では、2014年、2015年、2016年、2019年と4度にわたりSUVジャンルで1位を獲得しています。
また、グローバルでも高く評価され、2020年11月時点で世界累計約384万台を販売するなど、短期間でホンダのエース的存在に成長しました。
そんな初代を受け継いだ新型ですが、大ヒットモデルの次世代は保守的になりがちです。
新型はある意味キープコンセプトだと思いますが、開発に際してどのようなテーマが掲げたのでしょうか。
「私は初代の開発も担当して、ずっと関わってきたので『ヴェゼルの良さ』は知っているつもりです。
新型はそこをシッカリと継承しながらも、時代のニーズを織り込んだ進化をしています。いうなれば『今の時代にあったヴェゼル』ですね」(岡部氏)
良くも悪くも過去を振り返らないといわれるホンダですが、初代から変えなかった所、逆に変えようと思った所はどのような部分なのでしょうか。
「初代はクロスオーバーの形を提案したモデルでした。
それを端的にいうと『SUVの信頼感/パーソナル/使い勝手がいい』なのですが、新型はその価値は不変ですが、バランスを今の時代に合わせて最適化させました」(岡部氏)
エクステリアは初代に対して「よりクーペライク」、「よりスタイリッシュ」と初代の進化形に思えますが、初代と見比べると似ているようで似ていない。キープコンセプトと思いきや、意外と攻めているように感じました。
「エクステリアはデザインの考え方は共通ですが、手法が異なります。
初代はフロントからキャビンが『パーソナル』、車両下部は『SUV』を合体させたデザインですが、新型はそのふたつの要素をクルマ全体で考えたデザインになっています」(岡部氏)
新型のデザインは、SNSで話題となり「CX-ハリアー」というキーワードがTwitterトレンド入りしました。
これに関しては社内ではどのような反応だったのでしょうか。
「キーワードはともかく(笑)、注目されるのはいいと思いました。
一番ダメなのは話題にならないことですからね。二次元だとディテールに目がいきがちですが、全体のプロポーションに目指した形が見えるので、是非実車をご覧になってください」(岡部氏)
筆者(山本シンヤ)も初対面の際には、フロントグリルも含めて「えっ」と思ったのも事実ですが、時間が経つにつれて馴染んできて、逆に初代が野暮ったく感じてしまったほどです。
「実は社内でも最初は同様の印象を持つ人が多かったのですが、見ていくにつれて新型が目指した『洗練』がジワジワと浸透しました。
ホンダのデザインはN-WGN/フィットを皮切りにシンプルな表現を始めていますが、ヴェゼルもその流れなのは当然のことです。
さらに電動化の時代なので『先進』……つまり近未来感もプラスさせています」(岡部氏)
■初代で好評の室内空間、新型ではさらに向上?
一方、インテリアは全面刷新されています。初代はコクピット感覚が強めでしたが、新型はシンプルでクリーンなデザインです。
「新型はHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)に力を入れました。
そのため機能を優先したうえで包み込むような空間設計をおこなっています。なので、デザインは基本に忠実で実はあまり遊んでいません」(岡部氏)
個人的にはスイッチの触感など、見た目だけでなく実際に使ったときのクオリティの高さを実感。この辺りは「見た目はいいけど……」といった従来のホンダとは大違いだと感じました。
また、空調の風が拡散して吹き出す「そよ風アウトレット」は、これまでありそうでなかった機能です。
「部品によって担当領域が違うので、それを整えるのは非常に難しいです。ただ、チームが意志を持つことで、各設計担当者に頑張ってもらいました。そのなかでもそよ風アウトレットはヴェゼルオリジナルです。
一見なんてことないように見えますが、実際に使ってみると『何で今までなかったの?』と思うくらい、実感できる機能です」(岡部氏)
エクステリアから想像できないセンタータンクレイアウト採用のパッケージングは初代譲りですが、後席はさらに広くなっています。
「初代も広かったですが、新型は『圧倒的に広い』と感じさせることが目標でした。
足元スペースは35mm拡大されていますが、それに加えて着座位置やシートバック角度などにも徹底してこだわり、セダンライクな座り心地になっています。
この辺りはセンタータンクの旨みをより活かすことで実現できました」(岡部氏)
パワートレインはガソリン車(1.5リッター)も用意されていますが、メインはハイブリッド車で、システムは初代の1モーター(i-DCD)から2モーター(e:HEV)に変更。
これはフィットにも搭載されていますが、新型は何が違うのでしょうか。
「システム自体は一緒ですが、ヴェエルに合わせて最適化しています。
具体的には1.5リッターエンジンは高出力化、電気式CVTはローレシオ化、バッテリーは大きなトルクを発生させるためにセル数の変更(48→60)などにより、走りを演出。
さらにドライブモードはフィットのノーマル/ECONに加えて『スポーツ』をプラスした3モードです。
スポ―ツはダイレクトでメリハリのあるセットアップになっていますが、エンジン音と連動して活発な走りになるような演出も入れています」(岡部氏)
■走りはどう? 初代では賛否あったが…新型は?
走りの部分の進化はどうでしょう。
初代はSUVを感じさせない元気な走りが魅力でしたが、その一方で乗り心地に関してはユーザーからの指摘が多かったのも事実です。
その辺りは熟成に加えて「RS」や「ツーリング」といった新グレード追加でカバーしてきましたが、逆をいえば「どれがベスト」なのか解りにくかったのも事実です。新型はどこを目指したのでしょうか。
「初代は日本が初導入、海外向けモデルは後から展開されました。
そこで得た知見や技術的な性能アップを水平展開したのがRSでありツーリングでした。
それ以上となると、フルモデルチェンジでなければできない部分を中心に手を入れています。
例えば、ボディは剛性だけでなくバランスや各部品の接地点の見直し、バネの固有値、低フリクションダンパー、リアのコンプライアンスブッシュなどなど、細かい部分まで手を入れています。
乗り味という意味では、電動パワートレインのシームレスな走りをより感じてもらうために、フラットライドと雑味の無いスムーズな足の動きにこだわりました」(岡部氏)
最近のホンダの走りは、軽自動車のN-WGNから変わり、その流れはコンパクトカーのフィットや、電気自動車の「ホンダe」も踏襲しています。
具体的にいうと、従来はよくいえば元気、悪くいえば初期応答重視で過剰演出でしたが、今は自然で滑らかな動きを重視しているように感じます。
「新型は乗り味のバランスを取りつつも、ホンダらしい走りの実現のために全ての性能を底上げできたと思っています。
その中なかでも『クルマの動きの繋がり』に関しては、かなりこだわった部分ですね。
初代はセット違いが色々ありましたが、新型は日本向けも海外向けも共通の1スペックで勝負しています」(岡部氏)
ちなみに新型のタイヤはミシュラン・プライマシー4を装着しています。筆者の経験上「デビュー当初からミシュランを履くホンダ車は本気」は間違いなく、走りに関しても期待出来そうです。
新型のグランドコンセプトは「AMP UP YOUR LIFE(あなたの生活を増幅させる)」です。
その実現のためにスペックや機能だけでなく、数値には表れにくい部分にまでこだわっていることが岡部氏の話からわかりました。
メーカーやモデルに関わらず、初代から2代目に変わるときは、既存オーナーや新規ユーザーから大きな関心が集まり、思った以上の成果が出せないことも多々ありますが、このクルマには「2代目のジンクス」はなさそうです。
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みんなのコメント
そりゃマツダデザインとハリアーパクったら炎上するわな。
まさしく炎上商法って訳だw