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話題の高速道路手放し運転「日産プロパイロット2.0」はアイサイトより上か?

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話題の高速道路手放し運転「日産プロパイロット2.0」はアイサイトより上か?

 2019年7月16日に発表されたスカイラインの大幅なマイナーチェンジでは、これまで他のモデルで先進運転支援システムとして採用されてきたプロパイロットを進化させたプロパイロット2.0を採用したことで注目が集まっている。

 自律自動運転を目指した先進運転支援システムの機能が進化を続けるなかで日産のプロパイロットは「2.0」となって、また一歩自律自動運転に近づいた。

日産デイズの先進安全機能を体感!! スバルSTIの魅力も味わう ベストカーファンミーティングレポートVol.3

 では技術面では、この分野で名を馳せてきたスバルの「アイサイト」やトヨタの「セーフティセンス」などと何がどう違うのか?

 他メーカーの先進運転支援システムを圧倒するのか? モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。

文/岩尾信哉
写真/ベストカーWEB編集部 日産 トヨタ スバル ゼンリン

自律自動運転に近づいた「プロパイロット2.0」

2019年7月16日に発表されたビッグマイナーチェンジ版スカイラインから搭載されたプロパイロット2.0

 まずは日産、トヨタ、スバルを比較する舞台が高速道路/自動車専用道路に限られることを頭に置いて話を進めたい。

 自律自動運転に技術的に近づけるかは、走行していく先の道路状況をいかに正確に予測できるかにかかっている。

 高速道/自動車専用道路では、一般道路よりも“先読み”が容易だからこそ、今回のプロパイロット2.0のサポート技術が実現できたのだ。

 自動走行のサポートシステムの中身を確認していくと、旧バージョンとなった日産の「プロパイロット」を含め、3社とも以下のような共通した機能を実現している。

プロパイロット2.0が障害物を認識している画面


・ACC(オートクルーズコントロール):巡航速度を先行車との速度や車間距離を調整しながら巡航速度を維持する
・LKA(レーンキーピングアシスト):一定車線を逸脱することなく走らせる
・ステアリング(ハンドル)操作アシスト:道路の曲率に合わせてステアリングを操作する
・先行車両追従機能:カメラで先行車両の動きをとらえて追尾する

 これらと後方などからの自車の周囲に接近する走行車両を検知する機能と合わせて、上記の中でカギとなる技術は、カメラによる先行車両の追従機能ということになる。

 アイサイトはステレオカメラ、トヨタセーフティセンスが単眼カメラ+ミリ波レーダー、プロパイロットは単眼カメラのみで検知システムを構成していた。

 対してプロパイロット2.0では、独の大手部品メーカーであるZF製の“トライカム”と呼ばれる3眼カメラ((標準、広角、望遠の3タイプで構成。BMWも3シリーズで採用)とミリ波レーダーを採用して画像認識性能を高めている。

■スカイラインに装備されるプロパイロット2.0の各種カメラ、レーダー、ソナー類

プロパイロット2.0はカメラ、レーダー、ソナー、GPS、3D高精度地図データ(HDマップ)を組み合わせることで車両の周囲360度の情報と道路上の正確な位置を把握

装備を比較すると日産プロパイロット2.0が圧倒的だ

 ひとことでいえば、車両側の自律自動走行の機能開発はほぼ終わりに近づいているように思える。

 トヨタは自律自動運転に向けた試験車両の公道走行実験を進めているだけでなく、レクサスLSに採用済みの「レクサスセーフティシステム+A」は、セーフティセンスの単眼カメラ+ミリ波レーダーのシステムに対して、ステレオカメラ+ミリ波レーダーを装備。

トヨタセーフティセンスは 2018年に第2世代として採用を開始。単眼カメラ+ミリ波レーダーの基本仕様として、センサー類を組み合わせて運転支援技術を成立させている。トヨタが「レーントレーシングアシスト」と呼ぶ機能は、高速道路/自動車専用道路での車線逸脱やふらつきなどを防止する

 ブレーキ制御などとともに「アクティブ操舵回避支援」として、歩行者やガードレールといった障害物を回避する自動的にステアリングを操作、衝突防止もしくは衝突被害の軽減をサポートする。

 いっぽう、スバルもアイサイトに2020年を目処として(ミリ波)レーダーやデジタルマップ、GPSを組み合わせた自動制御の車線変更機能を追加して、限定的なレベル2の自律自動運転を実現するとしている。

社内呼称Ver3.5として知られるスバルアイサイトツーリングアシストは後期型レヴォーグ/S4とともに登場した最新最強のアイサイト。Ver.3のハードウェアはそのままに、ソフトウェアを処理能力の限界までアップデートすることで低速時のALKを実現。ACCの設定速度領域は、30km/h~135km/hまで拡大。これは近い将来予定されている高速道路の法定速度引き上げに備えたもので高速道路でのACCの有効性を高める。これに合わせて、ALKの作動上限速度も145km/hまで引き上げられた。最大の話題は、ALKの作動領域が0km/hまで拡大したことです。これによって、低速時でもALKによる進路維持を実現した

キモとなる「3D高精度地図データ」

 日産のプロパイロット2.0の技術的な内容をまとめると、高速道路/自動車専用道路の複数車線での限定的な使用として、ドライバーが介入可能な自動運転の“レベル2”を実現したことだ。

 ナビゲーションシステムと連動して設定されたルート上を走行中に、自動的に車線変更と分岐、追い越し時の車線変更を可能とした。これに同一車線内でハンズオフを可能とした。

 それではプロパイロット2.0が他社をリードすることになった最大の理由はなにかといえば、日本市場で初採用となった「3D高精度地図データ」を利用していることだ。

 日本全国の高速/自動車専用道路の約2万9000kmをカバーするもので、地図製作会社としておなじみのゼンリンが日産に提供した。

ゼンリンの地図データ。写真は高速道路の分岐 。プロパイロット2.0で決め手となった日本初の「3D高精度地図データ」はナビゲーション機能とGPSと連動して、自律走行を支えている。残されている自律自動運転実現に向けた技術的なピースはソフト面では詳細な地図機能(膨大なデータの処理が必要)をいかにリアルタイムで入手するか、ハード側では車両周囲をリアルタイムで認識する3次元センサーのLiDARシステムの装備(コストと小型化が課題)などということになるはずだ

 この地図データにより、カメラの認識範囲を超えた走行予定の道路の曲率や勾配などを先読みして速度を制御、分岐やIC出口を考慮して適切なレーンを走行するなど、自車位置を高い精度で把握してステアリングの作動などを制御する自動走行を実現した。GPSと併用して自車位置を5cm単位で計測可能としている。

 日産はプロパイロット2.0では、車両周囲を認識する従来の「全方位運転支援システム」同様の機能を「360度センシング」と称している。

 白線や標識といった道路の標示や周辺車両の状況を、7個のカメラ、5個レーダー、12個のソナーを利用して、自車の全周位で検知。制御は1/100秒単位で実施される。

 いっぽうでセンサー技術よりも使い勝手のうえではむしろ重要に思えるのが、車両とドライバーの“対話型”システムとして採用された「インテリジェントインターフェース」だ。

ハンドルが放してもいい状態になると青色で表示

 ヘッドアップデイスプレイやメーター内の表示、音声機能などを利用して、たとえば自動走行中に前方に自車よりも速度の遅い車両をシステムが認識した場合には、車両側から車線変更を提案する。

 これをドライバーが確認したうえでステアリングに手を添えて、スイッチ操作によってシステムの作動を承認すると、自動的に車線変更を実施する。

ハンズオフ機能はドライバーが責任を負う

ハンドルを放しても責任を負うのはドライバーを前提としている

 日本メーカーとして初の法的認可を受けた同一車線走行時のハンズオフ機能は、前方の注意を含む安全運転義務を負うのはあくまでドライバーであることを前提として高速/自動車専用道路における手放し運転が可能となった。

 注意すべきは、走行している道路が対面通行、トンネル内、カーブ、料金所、合流、車線減少の地点およびその手前などでは手放し走行ができないことだ(ハンズオフ機能が停止する区間に入るときは事前に報知)。

 日本市場では去る4月に輸入車としてBMWが3シリーズで日産に先んじて、高速道路/自動車専用道路の同一車線内のハンズオフ機能である「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援システム」を与えることを発表したが(車両認可を取得した後、2019年夏以降にBMW3/8シリーズなどの新規導入車種にオプション設定の予定)、あくまで渋滞時に速度域を限定しているので、精密な地図データを必要としなかったことが想像される。

 むろん、道路交通法に基づいて、ドライバーには安全運転義務があるから、事故が発生した場合の責任はドライバーにあることは心しておきたい。

 この機能を成立させるために、日産はドライバー自身が自動走行に介入可能かどうか、前方への意識を確認する装置として「ドライバーモニター」を用意した。ドライバーの顔の位置をモニターする赤外線センサーをダッシュボード上部に設置。

 ドライバーの顔の向きや目の開閉状態を検知して、ドライバーが前方を注視していないと判断した場合に警報を発生する。これにも反応しない場合にはハザードランプを点灯して車両が減速、停止し、自動的に緊急通報センターに接続する。

 加えておけば、スバルのフォレスターのハイブリッド仕様「アドバンス」に、「ドライバーモニタリングシステム」を採用している。インストルメントパネル中央のバイザー上部に内蔵されており、同じく顔の表情を認識して警報音や表示によってドライバーに注意喚起を促している。

 ちなみに、トヨタは以前に先代レクサスLSなどに採用していたが、現行型では装備していない。いっぽうで、傘下の部品メーカーであるデンソーは緊急停止機能をもつシステムを開発しているから、トヨタ車で復活しても不思議ではない。

 日産のプロパイロット2.0は確かに現状では他メーカーから一歩先んじている。

 しかし、たった月販目標台数200台のスカイラインだけに搭載するよりも、セレナやノートなどのベストセラーモデルに普及するようにしてもらいたいものだ。

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