2017年2月11日から発売開始された新型BMW5シリーズに試乗してきた。試乗車は523dで4気筒ディーゼルターボを搭載。アドブルーでのNOx対応へと変わり、7年ぶり、7代目となった新型5シリーズはじつにコンサバなフルモデルチェンジを遂げていた。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
■ポジショニング
ビジネスアスリートと表現している5シリーズはエグゼクティブ御用達のビジネス・セダンだ。累計800万台という販売台数が物語るように、クラスのベンチマーク的存在で、エグゼクティブ・セダンの代名詞と言ってもいいだろう。
型式が従来のF型からG型へと変わっているので、プラットフォームの変更が行なわれている。これまでは3シリーズでも採用してる中小型車用プラットフォームだったが、7シリーズで採用するCLARプラットフォームへと変更された。ただ、その外観からはマイナーチェンジかと思われるほどの小変更に感じる。しかし、こうしたモデルチェンジはプレミアムモデルにはよくある手法で、ドラスティックなデザイン変更は行わないという方程式なのだろう。
ボディサイズは全長4945mm、全幅1870mm、全高1480mmで、ホイールベースが2975mm。全体にわずかずつ先代よりもサイズアップしているものの、新型5シリーズは高張力鋼板、超高張力鋼板、アルミ材、マグネシウム鋳造材なども採用し、最大で100kgの軽量化を果たしている。
ライバルはメルセデス・ベンツEクラス、アウディA6、ジャガーXF、レクサスGSといったあたり。このクラスになると、良くて当たり前と言われるだけに、オーナーとしてはどこを気に入るか?の判断になるだろう。ハンドリングや乗り心地、装備、運動性能などは申し分のないレベルであり、要求性能はクリアしているのが当たり前だからだ。したがって5シリーズらしさを求め、ユーザーの要求に相応しいのか?という判断を求めていくことになる。
■デザイン
外観は、見た通り大きな変化はないキープコンセプトであるものの、よく見ればボンネットが先端まで1枚のアルミ板になっている。従来は追突安全のために、フロントグリル部が独立したようなデザインになっていたが、1枚になってすっきりした。これは5シリーズに限った話ではなく、ボンネット先端がノーズの先端ではないのが、今では普通なことでもある。
また、BMWらしくショートオーバーハングや流麗なルーフライン、サイドに走る2本のキャラクターラインなど、美しさを保ちつつ変貌を遂げている。フロントグリルはユニークなキドニーグリルとヘッドライトをつなげることで、よりワイド感が強調され、スポーティさを感じさせる。
リヤ回りではLEDライト・バーをL字型に採用し、リヤ・コンビネーションランプをサイドに回り込ませることで、ワイドな車幅を思わせる表情になっている。
■パワートレーン
新型5シリーズのパワートレーンには新世代モジュラーエンジンのツインパワーターボエンジンで、いずれもツインスクロールターボ、直噴、ダブルVANOS、バルブトロニックを採用している。またディーゼルの2.0L 4気筒ターボは尿素SCR(アドブルー)の処理システムを採用した。トランスミッションはZF製の8速ATを全モデルで採用している。
モデルラインアップはガソリンでは523iが2.0Lの4気筒ターボで184ps/290Nm。523dは同じく2.0Lの4気筒ターボで190ps/400Nmというスペックだ。530iに搭載のガソリンエンジンは523iの出力違いで、252ps/350Nmとなっている。
また540iは3.0Lの6気筒ターボで340ps/450Nm。AWDモデルの540i xDriveも導入されている。また少し遅れてPHEVの530eが導入予定だ。ちなみに、今回試乗で用意されていたのは540iと523dの2モデルで、523i、530iは少し先の導入となっている。
■運転支援システム
今回の新型5シリーズの最大の特徴かもしれないのが、大幅な運転支援システムを導入してきたことだ。詳細はこちらの記事で紹介しているが、今回注目の機能と言えるだろう。
システムはステレオカメラがルームミラー内に納められ、ミリ波レーダーを前方に3基、後方に2基とソナーも設置している。そして新機能もいくつか搭載しているのでお伝えしていこう。
ステアリング&レーンコントロールアシスト機能は、高速走行時に車線の中央を走行しやすいようにサポートし、前走車を追従する機能だ。ステアリングに操舵力を与えることで部分自動運転ということになる。
アクティブ・サイド・コリジョン・プロテクションはボディサイドの左右に設置されたセンサーで、車両側面の交通状況を監視し、側面衝突の危険性が高まった場合には、ステアリング操作に介入し、衝突を回避する機能も加わった。
そして、後車追突警告も新機能として装備された。リヤバンパーに組み込まれたセンサーが後方からの追突の危険を検知し、ハザードフラッシュを点灯し、後続のドライバーに注意を促す。それでも衝突の危険が高まった場合、アクティブプロテクションのすべての機能が作動し、乗員を保護する。といったところが新機能として装備されている。
■試乗レポート
試乗したのはディーゼルエンジンだ。3シリーズにも搭載している2.0Lの4気筒ターボと同じだが、かなり進化している。例えばエンジン音がさらに静かになってることに驚く。アイドル時のディーゼリング音も走行時の音も全域で静かになっているのだ。もともと、ガソリンなのか、ディーゼルなのか、走行中は判別できず、ディーゼルと感じるのは、アイドル時ないし低速走行時だけディーゼルであることが確認できるというレベルだったが、新型のアドブルー対応のディーゼルは全域で静かになり、ガソリン車との静粛性は差はさらに縮まったという印象だ。
走り出すと先代の5シリーズより全体がしっとりと滑らかになった。これはプラットフォームの影響もあるのだろうが、7シリーズに近づいた印象だ。以前は3シリーズを上質にした印象だったが、今回は7シリーズが見え隠れする印象へとより高級な印象へと変化した。
軽量化をしていくと、このしっとり感が失われやすくなり、高級車にとっては致命的なことになるが、新型5シリーズではそうした印象はまったくなかった。もちろん、ノイズや音などの静粛性のレベルは高く、振動も気にならない。ランフラットタイヤであることも、感じないしなやかな走りを体感する。
新機能の多くを搭載した運転支援システムは、かなり良くなったという印象だ。自動運転のキモは「運転が上手な人のように、自動で動かす」というのがポイントで、システムで自動化すること自体よりも、より違和感のない自動走行というのが現在の求められる性能になっている。したがって非常に難しい世界での開発といえよう。
今回の試乗では、高速道路でウインカーを出して追い越しをしようとしたとき、まず、ウインカーを出してわずかにハンドルを切ると、加速しながら追い越し車線へと移動する。まさに運転の上手い人と同じ動きだ。従来のシステムではまず、車線変更はしないので、ドライバーがハンドル操作をして車線変更する。自車の前が空いていることを確認して、加速するという2段階の動きがあった。それが、ウインカーとステア操作を連動させることで、加速体制に入るので滑らかな車線変更が可能となった。
また、ハンドルのセンタリングがいい。ドライバーには、安心感として伝わるので部分自動運転に対する信頼も高まる。また直進時、タイヤにかかる外乱によりステアリングは常に微動しているのだが、このシステムではハンドルが全く動かない。もちろん、直進を維持するために実際のタイヤは修正舵をあてながら直進しているのだが、ハンドルそのものは動かないので、妙な違和感を抱かなくて済む。もちろんカーブにさしかかり、曲がり始めれば、ハンドルは動き、車線を維持をしている。
こうした制御の進化は人間の研究を深めていくことで、違和感として感じることが何か?その対策は?という解決方法ができてくるのだろう。新型5シリーズの部分自動運転は安心感が高く、ストレスを感じにくいシステムだと感じた。ドライバーの疲労軽減に大いに役立つのではないだろうか。
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