STIらしさを追求したコンプリートカー
STIコンプリートカーは、「Sシリーズ」や「tS」などが代表的なものになる。専用エンジンやタイヤ、内外装パーツなど、妥協なき開発が行われる「Sシリーズ」に対し、「tS」はノーマルの潜在能力をより活かす方向で手が加えられる。そういう意味で「tS」は、「チューニング=調律」ということを象徴するモデルとも言える。
彼女のスバル「BRZ」が目指すは「走れるスタンス系」! 最初の愛車は「レガシィツーリングワゴン」というスバ女の愛車の仕様は?
(初出:『XaCAR 86&BRZ magazine Vol.01』)
初代BRZ tSとはどんなクルマだったのか
STIのコンプリートカーに共通するテーマは「Sport always(すべての時、すべての道、クルマとの対話はいつもスポーツだ)」である。これはサーキットでの限界性能だけでなく、一般道で普通に乗っているときでも「いいクルマ」だと感じさせるクルマづくりを意味する。振り返ると、1998年に登場した「インプレッサ22B STIバージョン」もそうだった。見た目こそ勇ましい「WRカーレプリカ」だったが、その走りのチューニングは、ロードカーにふさわしいセットアップだったのを思い出す。それから15年の歳月を経て、2013年に久々に登場した2ドアのSTIコンプリートモデルが「BRZ tS」だ。
徹底した走りのチューニングが施されている
「tS」はシャシー系と内外装のモディファイが基本なので、基本的にはパワートレインは手を加えていない。そのため、FA20エンジンはノーマルモデル同様に200ps/20.9kgmとスペックはそのままだ。しかし、「tS」のコンセプトに少しでも近づけるため、吸気サウンドを演出する「サウンドクリエーター」のフィルターを専用品に変更。ノーマルよりも遠くから聞こえるようなチューニング(音量はやや控えめ)になっている。
また、専用の大径ドライブシャフトを採用したことで、副産物的な効果にはなるが「加速感向上」や「ギアの入りの良さ」なども実感できるという。実際にノーマルと乗り比べてみると、数値ではない違いを感じるはずだ。ちなみに、よりスポーティなサウンドがお好みならば、STIスポーツパーツとして「スポーツマフラー」がオプション設定されている。トランスミッションは6速MT/6速ATどちらも選択可能(ギア比やファイナルはノーマルと同様)なのも嬉しいポイントだ。
STIマジックが投入されたボディに仕上がる
BRZはノーマルでも「環状力骨構造」をより進化させたボディを採用している。「どの部品をどう配置し、どのように剛性を高めれば、人間にとってリニアな伝達を得られるか?」をテーマに、さまざまなトライが行われた。ノーマルの時点で「強靭でしなやか」、「レスポンスを高める」、「リニアに反応する」というボディに仕上がっていると言っても、量産モデルにはさまざまな制約があるのも事実。STIでは「“より”強靭でしなやか」、「“より”レスポンスを高める」、「“より”リニアに反応する」ボディに仕上げるべく、STIマジックを投入した。
定番のフレキシブルタワーバーは、衝突性能にも影響するというVタワーバーとのバランスを考えてチューニングした物。フロントのクロスメンバーと車体を結ぶ「フレキシブルドロースティフナー」も、BRZの車体特性に合わせた設定になっている。STIのボディチューニングは、ベースモデルの素性の良さをより引き上げること。他のコンプリートモデルに比べ使用するパーツが少ないと思う人もいるが、それにもちゃんとした意味があるのだ。
日本の道だけでなくニュルでも鍛えられた足
サスペンションは新しい試みが行われている。フロントストラットの写真を見るとわかるのだが、下側が65mm延長されている。これはベアリングスパンを長くするのが目的。スパンが伸びる→横剛性がアップし→フリクションが減る→よりスムーズにサスペンションが働くというわけだ。リアはよりスムーズにストロークさせるため、ピロボールブッシュ・リアサスリンクを採用。このリアサスリンクは、ピロボールを片側3つ採用することで、リアサスの位置決めをシッカリさせている。
ちなみに、ダンパーはノーマルと同じSHOWA製、スプリングは10mmローダウンの専用品を使うが、「4輪の接地性を上げる」、「減衰を下げずに乗り心地を確保する」、「グリップ感をより伝える」というコンセプトで、日本の道だけでなく欧州(ニュルブルクリンクを含む)でもセットアップした。FRスポーツの楽しさに、安心感/コントロール性を上げたハンドリングはもちろんだが、上質な乗り心地も実現しているところにも注目してほしい。いいクルマは走る場所を選ばないのである。
ノーマルでも十分な性能を持つブレーキだが、「シャシーよりも速いブレーキ」ということで、ブレンボ製ブレーキキャリパー(フロント17インチ対向4ポッド/リア17インチ対向2ポッド)が奢られた。ちなみに、同じキャリパーを採用する「WRX STI」流用と思う人もいるかもしれないが、BRZのために専用設計された物だ(キャリパーの付く位置が逆なので、WRX STI用では上下逆になってしまう)。
ブレーキパッドは軽量FRスポーツの車両特性に合わせた専用品を使用、ブレーキローターは厚みを拡大(24→30mm)している。ブレーキ/タイヤと変更されたため、ABS/VDCもその特性に合わせたtS専用チューニング仕様に変更されている。じつはこのテストが「tS」開発の中で最も大変な項目であり、時間もお金もかかっている。ユーザーにとっては非常に地味な部分に思えるかもしれないが、ブレーキは安全に関わる重要な部分。そこまで徹底してこだわることが、単なるチューニングカーとコンプリートカーの違いと言っていいかもしれない。
STIの思想にピッタリなタイヤを装着
もともと「tS」は、タイヤやブレーキなどはノーマルと同じ物を使うという考えだったが、最近は「必要ならば手を入れる」方針に変わった。そのため、タイヤはノーマルの215/45R17(ミシュラン・プライマシーHP)から225/40R18(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)へサイズアップされた。純正と同じブランドをセレクトした理由は、「トータルバランス」、「タイヤの性能が丸いこと」だと言う。いいクルマ=ドライバーも走る道も選ばないというSTIの思想にピッタリなタイヤだ。
ホイールはSTIの18インチアルミホイール(ENKEI製)を採用。鋳造ながらも軽量高剛性が特徴で、なんと17インチのノーマルホイールより4輪で1.2kg軽量に仕上がっている。ちなみに、ノーマルのtSはシルバー塗装、GTパッケージはブラック塗装が装着される。
隠れたチューニングポイントとは
じつは「tS」には、カタログに出ていない変更項目やさり気なく記載されているパーツも存在する。STIは「カタログで言うほどでもないので……」と謙遜するが、これらのノウハウはあまり公表したくないという考えもあるのかもしれない。そのひとつが、ノーマル比で直径4mmアップ、ねじり剛性約20%アップの「大径ドライブシャフト」だ。このクルマの味付けをしたSTIの渋谷 真さんが、自らモータスポーツ参戦したときのノウハウをフィードバックした物で、トラクションや操安、快適性だけでなくシフト操作感までアップするという。
もうひとつが、ステアリングのシッカリ感を基本から直す「ステアリングギアの支持剛性アップ」である。ちなみに、これはカタログには掲載されておらず、後から追加することはできない。その他にも、サスペンション関係のブッシュなども専用品が使われているという。「STIのスポーツパーツを組み合わせればtSになる」は、半分○で半分×。コンプリートカーにしかできないこともあるのだ。
スポーティな走りに見合うエクステリアとインテリア
他の項目に比べると、エクステリアはかなり「控えめ」である。STIコンプリートモデル定番の「フロントアンダースポイラー」に「専用フェンダーガーニッシュ」、「STI/tSオーナメント(STIオーナメントはBRZ専用デザイン)」程度だ。さらにGTパッケージでは「ドライカーボンリアスポイラー(角度2段階調整式)」がプラスされる。このリアスポイラー、見た目はやや派手なデザインだが、抵抗を増やさずダウンフォースを生むという。
インテリアには、「S206」と同じ革を使用したステアリング、専用メーターバイザー&専用メーター、カーボン調インパネ、各部のダークメタリック加飾など、質感を高める方向でコーディネイトされている。ちなみに、専用メーターはスポーティ感を演出するだけでなく、視認性の良さ(目盛りのデザインや針の長さ)までこだわったという。
アルカンターラ/本革のスポーツシートを採用するが、GTパッケージではレカロ製バケットシートが奢られる。このシートは「スポーツスター」をベースにサイドエアバックをプラスしたSTIオリジナルモデル。ノーマルのtSにはオプション設定もされないのが残念なくらい、ホールド性だけでなく快適性もアップしているのだ。
※この記事は2015年のXaCAR 86&BRZ magazine Vol.01の記事をもとに、再編集したものです。表記の数値や肩書きなどにつきましては、当時のものになります。
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