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マツダ新戦略はかつての悪夢「5チャンネル化」の轍を踏まないか

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マツダ新戦略はかつての悪夢「5チャンネル化」の轍を踏まないか

 マツダが大きな変革期を迎えている。

 アテンザをマツダ6に、アクセラをマツダ3に、デミオをマツダ2に車名変更し、「深化した魂動デザイン」とSKYACTIV技術を前面に押し出し、走行性能にこだわるモデル構成へと生まれ変わった。

【累計販売台数で検証】車名を変更したクルマの成功と失敗

 クルマ好きの多くはこうしたマツダの変化を好意的に受け取っているが、しかしそのいっぽうで車両本体価格は全般的に上昇し(ざっくりいうと割高感が出てきて)、販売店もオシャレになって、古いクルマ好きは「かつて大失敗したマツダ5チャンネル化が頭をよぎる」と噂している。

 マツダのこうした変革は、どのように評価すべきか。ひとつひとつの施策を見ていき、その狙いと成否を改めてチェックしてみたい。
文:渡辺陽一郎 写真:マツダ、奥隅圭之
【写真ギャラリー】マツダの少し古い車種と新しい車種


■国内販売は苦戦中

 最近、話題に登ることの多い自動車メーカーがマツダだ。開発コストが高まるエンジン、プラットフォーム、サスペンションなどを同時に新開発してSKYACTIV技術を成立させ、優れた走行性能を実現した。

 外観は魂動デザインでカッコよく、クルマ好きのユーザーから大いに注目されている。

マツダの新時代を代表するモデル「マツダ3」。かつてアクセラという車名だった中心的販売車種は、欧州での販売名と統一された。美しいデザインとクラスを超えた走行性能を持つが、車両価格もそれなりにアップした

 その一方で、今のマツダを心配する声も根強い。理由はマツダ車の売れ行きだ。世界生産台数は2010年が131万台、SKYACTIV技術と魂動デザインを導入した後の2018年は160万台に伸びたが、日本国内の状況は異なる。2010年は22万3861台、2018年は22万734台だから若干減った。

 今のマツダ車は以前に比べると全般的に設計が新しく、マツダ6(旧アテンザ)の現行型発売は2012年にさかのぼるものの、2018年に大幅な改良を受けている。各車種が手間を費やしているのに、売れ行きが伸び悩む理由は何か。

■カッコはいいが使い勝手は……

 一番の課題は車種構成だ。

 国内市場で売れ筋の5ナンバー車はマツダ2(旧デミオ)だけで、CX-3は、売れ筋カテゴリーのコンパクトSUVなのに価格は割高だ。ライバル車のホンダヴェゼルに比べると、後席や荷室も狭い。

 また日本向けに開発されたミニバンのプレマシーやビアンテ、背の高いコンパクトカーのベリーサなどは、生産を終えて久しい。

 今のマツダ車は、SKYACTIV技術と魂動デザインにより、走行性能が向上して外観もカッコよくなった。その半面、良好な視界、運転のしやすさ、広い室内、荷室の優れた使い勝手といった実用性は低下させている。以前に比べると長所と短所をハッキリさせたのはいいが、そのバランスから国内市場では売れ行きが伸び悩む。

 また今のマツダは、従来とは違うさまざまなチャレンジを行っている。そこにも長所と短所があるので見ていきたい。

■ソウルレッドクリスタルメタリックのボディカラー

 鮮やかなレッドのボディカラーで、深みのある色彩が特徴だ。魂動デザインとの相乗効果により、光の当たり方でボディの陰影が美しく映える。

 その半面、今のマツダ車は魂動デザインで統一されているから、後輪駆動スポーツカーのロードスターを除くと、どの車種も外観が同じように見えてしまう。

写真はマツダCX-3。正直いってぱっと見でCX-5と見分けをつけるのは難しい…

 さらに外装のイメージカラーまでソウルレッドクリスタルメタリックで統一すると、ますます似通ってくる。このデザインが好きなユーザーは、すべて気に入るだろうが、その逆も考えられる。

 またマシーングレープレミアムメタリックもある。渋いグレーで上質感が魅力だが、ソウルレッドクリスタルメタリックほど人気を得ていない。

■ブラックの新世代店舗

 マツダは2014年度から、新世代店舗の整備を開始した。従来の店舗とは異なり、外観をレクサスのようなブラックで仕上げている。内装も落ち着いた雰囲気で、初期の新世代店舗は店内が薄暗い。ソウルレッドの展示車が美しく見えることを重視してデザインされ、プレミアムブランドの雰囲気にも合わせた。

 ただしソウルレッドのボディが美しく見える代わりに、マシーングレーは沈んでしまう。また店内が暗いと、せっかく質感を高めた車内がほとんど見えない。クルマの購入商談では、休日に子供連れで販売店を訪れる顧客も多いが、店内が暗いと子供の様子も分かりにくい。

マツダは最近、レクサスやアウディのように、ディーラーの外観を黒基調にしてオシャレな雰囲気に整備しているが…

 このような欠点があるためか、最近の新世代店舗は、以前に比べると内装が変化してきた。外観はブラックでも、店内の壁をベージュにして明るく見せたり、車両にスポットライトを当てている。

 販売店からは「外から見るとマツダのディーラーだと分かりにくく、改装後は店舗の前を通り過ぎたお客様も多かった。メーカーが一定の基準を示したが、店内は販売店の判断も含めて改装している」という声が聞かれる。

■マツダ2/3/6の車名変更

 日本国内で売られるマツダ車には、ほかのメーカーと同様、デミオ、アクセラ、アテンザといった車名が与えられていた。ところが海外は、欧州車と同じように数字で示されていた。

 そしてアクセラが先ごろのフルモデルチェンジで、車名を海外と同じマツダ3に変更した。開発者に理由を尋ねると、

「マツダ3には新型エンジンのSKYACTIV-Xが搭載され、魂動デザインも従来とは違う新しい表現をしている。通常のフルモデルチェンジよりも変化が大きく、これを機会に車名を海外と共通化した。車名にメーカー名のマツダを冠することで、マツダ車であることを強調する意図もある。

そして欧州車を選ぶ時に『BMWを買う』とブランドで表現されるように、『マツダを買う』といわれたい」

 と説明された。

 意図は分かるが、この考え方に基づくなら、車名の変更は変化の大きなフルモデルチェンジに限られるだろう。しかし実際はマイナーチェンジでデミオがマツダ2に、アテンザはマツダ6に変更された。

国内最量販車で、マツダの救世主ともいえるデミオも「マツダ2」へと車名変更。かなり大胆な販売戦略といえる

 これでは一般ユーザーは分かりにくい。フルモデルチェンジであれば「アクセラが生産を終えて、後継車種のマツダ3が新発売された」と受け取ることもできるが、マツダ2とマツダ6はマイナーチェンジだから宣伝もあまり行われない。デミオとアテンザの車名変更が伝わりにくい。

 この経緯には、1990年前後に展開されたマツダの5系列販売体制を思い出す人もいるようだ。マツダ/フォード(オートラマ)/ユーノス/アンフィニ/オートザムの5系列を短期間で設け、大急ぎで膨大な姉妹車も開発した。

 例えばミドルサイズなら、マツダクロノス/フォードテルスター/ユーノス500/アンフィニMS-8(セダン)&MS-6(5ドアハッチバック)/オートザムクレフという具合で、姉妹車を短い時間に整えている。

 開発者、デザイナー、製造現場などに物凄い負担を掛けながら、ユーザーは「どこで買えば良いのか分からない」状態になり、マツダの国内販売は急降下した。1990年にマツダの国内販売は59万台に達したが、1991年には55万台、1992年には48万台と下がった。その後も下降を続け、2000年は31万台、2018年は前述の22万台少々だ。

 マツダ2/3/6の車名変更と、かつての5系列販売体制はまったく異なるが(30年の歳月も流れている)、数字の羅列ということで関連性を感じてしまう。

 販売店の反応はさまざまだ。「車名の変更は、噂には聞いていたが、本当にアクセラやデミオをやめるとは思わなかった。お客様からも変更の理由を尋ねられた」という意見がある。その一方で「車名の変更に大した意味はない。説明すれば分かっていただける」という反応もあった。

■値引きを抑えた販売方法

 以前のマツダ車は多額の値引き販売を行った。その結果、セダンやハッチバックは、他メーカーに比べると売却時の金額が下がった。しかしマツダ車に乗り替えるなら、相応の金額で買い取るから、結果的にマツダ車を何台も乗り継ぐ状態になった。

 先代CX-5以降のマツダ車は値引きを抑えて、以前に比べると売却時の不利も解消したが、それでも依然としてマツダの販売店では高値で買い取る。値引きが少なかった分を売却時に取り戻そうとすれば、今でもマツダ車を乗り継ぐことになるのだ。

■大事なのは、お客様本位かどうか

 マツダは以前に比べると、主張の感じられるクルマを造るようになった。クルマ好きにとっては嬉しいことで、ほかのメーカーにもいい刺激を与えている。

 ただし、何でも世界共通にすればいいという話ではない。

例えばCX-5に使われるショックアブソーバーの減衰力は、先代型は基本的に欧州仕様と共通だったが、現行型では日本向けのセッティングを施している。

 車名や店舗の造りも同様だ。日本はデミオとかアクセラ、海外はマツダ2、マツダ3でもいいだろう。お客様本位で考えれば、名称を含めて、国や地域に合わせた商品を提供するのは当然だ。

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