シトロエン久々のフラッグシップモデル、「C5X」が日本上陸を果たした。そこで、C5Xのルーツとなる大型上級モデルの歴史をふり返りながら、C5Xの概要をフランス車に造詣が深い武田 隆レポーターが考察する。(タイトル写真は、上がCX、下がC5X)
シトロエンの上級モデルといえば「ファストバック」スタイル
C5Xは、シトロエン ブランドにとって久々の大型上級モデルだ。なにより喜ばしいのは、かつて上級シトロエンのトレードマークだった、ファストバック スタイルを採用したこと。とくに1974年に誕生したCXを彷彿とさせる。
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C5Xは、2016年発表のコンセプトカー、CXperience(Cエクスペリエンス)をベースにしている。その名が示すとおり、それはCXのオマージュだった。CXperienceのデザインを最初に具現化したのはC5Xの弟分たるC4で、これはGSの再来的存在だった。そもそもCXはGSの大型版というスタイリングだった。
上級シトロエンのヘリテージには、DS19という大物モデルがあったが、これは2015年にDSが新規ブランドとして誕生したとき、そのヘリテージになってしまった。そこでやむなく・・・というわけではないが、シトロエンはCXに焦点をあてた。実際、CX以降の中大型シトロエンは、DS19よりもむしろCXのファストバックを継承してきたから、この選択は理にかなっている。
CXの後継モデルであるXMは、ベルトーネにスタイリングが依頼された。CXとは違って直線基調で角ばったボディスタイルとなったが、雄大なドーム型ファストバックは継承された。
XMのあとには、C5が2代にわたってつくられたが、車格としてはやや下で、スタイリングもファストバック風の雰囲気を残しながらも、基本的には3ボックス セダンになっていた。シトロエンも世界での販路を広げるために、個性を薄めていたのだ。
フラッグシップとしては、2005年にC6が登場した。これは逆に「シトロエンらしさ」を復活させる動きの中で登場したモデルで、まさにCXを現代に蘇らせたような雰囲気のドーム型ファストバックだった。ただし残念ながらC6は生産台数も少なく、2012年に廃番となる。そして約10年の空白期間を経て再登場したフラッグシップが、今回のC5Xというわけである。
新規のユーザーにもアピールするためには・・・
さて、CXではセダンの革新的スタイルとしてファストバックが採用されていたが、C5Xでは、セダンとワゴン、SUVの3つを融合したものと謳っている。
さらにフェンダー周辺の立体的造形でタイヤの存在を強調し、タフなSUVらしい雰囲気を出している。CXは抑揚のないボディサイドで、リアフェンダーにはスパッツが付き、むしろタイヤの存在を隠す趣向だった。CX5は、SUV全盛という時代に即したデザインといえるだろう。
このご時世、伝統的なセダンは売るのは難しい。しかもシトロエンの上級車は空白の時期もあり、認知度の点でも不利だ。C5Xはヘリテージを強調しつつも、新規のユーザーにもアピールするようデザインされたわけだ。新興市場の中国でよく売れているようだから、ねらいは成功したといえそうだ。
インテリアは、近年のシトロエン車と同じ雰囲気ながら、上級化されている。日本人デザイナーの柳澤知恵さんも参画し、クラフトマンシップを活かした、繊細で上質、しかも全体にすっきりしたデザインなのも印象的だ。
最新のDS各車はパリ オートクチュール的な手法を駆使した華美なデザインが内装各部に施されているが、C5Xは上質でありながらも、シンプルで落ち着いたモダンデザインの室内空間としている。これもまさに、CX以来の上級シトロエンの伝統が感じられる。C5Xの内装には、和モダンのような趣がある。
シトロエン独特の世界観を再興するために生まれたC5X
プラットフォームはEMP2(ver.3)だが、同じものを使う他モデルと違って、リアサスペンションにトーションビームを採用。PHEVもFFなのでマルチリンク独立懸架の必要がなく、そのうえ荷室の広さも鍵となるので、スペース効率に優れたトーションビームを選択しているようだ。
サスペンションにはプログレッシブ ハイドローリック クッション(PHC)を採用し、さらにPHEVでは電子制御可変式のアドバンストコンフォート アクティブサスペンションとなっている。いうまでもなくこれらは、かつてのハイドロニューマチックや、ハイドラクティブを想起させる技術。サスペンションにもシトロエン上級車の伝統が復活している。
タイヤも205/55R19という珍しいサイズだ。大径だが幅が細い。バネ下重量が軽く燃費も期待でき、乗り心地の点でも有利で、これは大きなウリとなる。幅広でロープロファイルのタイヤが文字どおり幅をきかしている中で、そんな傾向から脱却してスマートな技術を採用するのは、いかにもシトロエンらしい。
C5Xは、数値は未発表だがボディの空力も良さそうだ。CXは、空気抵抗係数「Cd」のフランス表記そのものを車名にしていた。DS19以来、空気抵抗を少なくし、むやみに大きいエンジンを積まずに走行性能を高めるのが、シトロエンの設計哲学であった。軽量化の技術であるFFにこだわったのも、その一環といえる。
そのうえで「魔法のじゅうたん」のようなサスペンションで、抵抗少なく、快適に、オートルートを高速で疾走する。そういった独特のシトロエンの世界観を再興するために、C5Xは生まれてきたといえそうだ。(文:武田 隆)
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