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100%ポルトガル製を目指したけど……残念! 涙を呑んで「ダイハツエンジン」を搭載した「サド550」というおもちゃのようなクルマの正体とは

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100%ポルトガル製を目指したけど……残念! 涙を呑んで「ダイハツエンジン」を搭載した「サド550」というおもちゃのようなクルマの正体とは

 この記事をまとめると

■ポルトガル製のマイクロカーを目指して「サド550」は開発された

フィアットの「ネズミ」がEVで復活! トポリーノと名付けられたクルマの正体とは?

■パワー不足に悩んだサド550はダイハツ製の28馬力の550ccエンジンを採用

■庶民には手の出しづらい価格とミニマムサイズ過ぎたことが原因で期待するほど売れなかった

 まるで漫画に出てきそうなファニーなマイクロカー

 これまでバブルカーやマイクロカーと呼ばれるクルマをいくつかご紹介してきましたが、またもや編集部が掘り出してきました。サド550はポルトガルで1980年代に生まれ、およそ500台が販売されたとのこと。日本に上陸したことはないのですが、ダイハツ製エンジンを搭載していると聞けば、いくらか親近感もわくかもしれません。

 それにしても、デザインが漫画のパースといってもおかしくないスタイリングは可愛らしくて仕方ありません。しかしながら、ファニーフェイスとは裏腹に、サド550の開発はシリアスで胸アツなストーリーが隠されていたのです。

 ポルトガルといえば、ロナウドやモウリーニョといったサッカーセレブがフォーカスされがちですが、F1パイロットのペドロ・ラミーやディアゴ・モンテイロの出身地だったりします。とはいえ、自国に自動車メーカーは存在せず、シトロエンやルノーのノックダウン工場はあったにせよ、昔からほとんど輸入に頼り切っているのが実情だそうです。

 とりわけ、元は自国の植民地だったブラジルから、あるいは敵国であったり同盟国だったりしたスペインにクルマを頼む気持ちは微妙なニュアンスを含んだことでしょう。平たく言えば、格下だったり、さほど仲の良くない知人に頼みごとをするような気分なわけで、1974年のカーネーション革命による民主化を機に、国産自動車を望む声は大いに高まったそうです。

 そこで、民主化以前は国営企業として商業車を細々と生産していたコングロマリット、アントレポスト社が「100%ポルトガル製のクルマ、作る時が満ちた!」とばかりにプロジェクトチーム「Ximba」をスタートさせたのです。もっとも、民主化のあおりでもってアントレポストが財政難に陥り、早急な立て直しが必要だったとして小型車なら手っ取り早いと飛びついた、という証言もあるようです。

 とにかくXimbaプロジェクトは11人にのぼる各種のエキスパートが集められたほか、リスボン工科大学にも協力を求めるなど、その熱量は相当なもの。あらゆる可能性が探られた結果、開発すべきクルマはリスボンの込み入った道を難なく走りまわれるシティコミューターが選ばれました。

 リスボンは50万人が暮らす都市ながら、古い街並みが残り、道幅も狭いことから「あまり大きなクルマはウケない」と考えられたようです。が、じつのところは、エンジン開発の見通しが立たなかったことが要因という史家もいます。

 そして、1978年には試作機が完成。ピックアップトラック作りで培ったラダーシャシーを小型化しつつ、前1輪、後2輪の3輪車というのは、当時のマイクロカーとしては標準的だったものの、搭載した国産エンジンはなんと50ccのバイク用だったのです。当然、「自転車に追い越される」性能しか持ちえず、開発陣は国産エンジンという夢を捨てざるを得ませんでした。

 2年間で約500台を販売したという

 涙を呑んで世界中からエンジンサプライヤーを募ったところ、ダイハツから28馬力の550ccエンジンを購入する運びとなったのです。

 もっとも、エンジン以外の設計はよくできたもので、試作機と同じシャシーながら4輪化され、エンジンはフロントに搭載し、トランスミッションをリヤに配置するコンパクトなFRパッケージ。10インチの小型ホイールと相まって、ルーフが高い割には重心が低くなり、コーナリング性能は思いのほか良好だったようです。また、乗員がリヤアクスルの真上に近いところに座るため、トラクションのかかりかたも理想的なものとなり、もしもマイクロカーによるラリー競技でもあったら、サド550はチャンピオン候補に挙げられていたに違いありません。

 ほぼフラットな面構成のボディはリスボン工科大によるデザインで、FRPとプレクシグラスを駆使したもの。ちなみにサド550は、モデルライフ中に4回ほどマイナーチェンジが施されており、主にはヒーターや換気性能の向上ですが、フロントウインドウがフラットからいくらか湾曲したものに変わるなど、スタイリングと利便性にも手抜かりはなかったようです。

 1982年、政府の公認といくばくかの後押しを受けて発売されたものの、開発陣が予想していた爆売れにはほど遠いスタートだったとのこと。どうやら、庶民には手が出しづらい価格だったことと、リスボン市内はまだしも、郊外に出かけるにはミニマムサイズ過ぎたことが原因だったそう。

 たしかに、全長×全幅が2365×1345mmという超コンパクトなサイズは、ゴルフ場のカートより小さいわけですからマイクロカー全盛の1960年代ならまだしも、1980年代の道路環境には厳しかったはず。

 それでも、1984年までの2年間で約500台が販売されたと記録されており、噂によればいまだにアントレポストは受注生産しているとか、いないとか。真偽のほどはわかりませんが、オーダーの際はボディカラーを自由に選べたそうですから、日本の道をわりと元気よく走る姿を想像したら、ちょっと頬が緩みそうではあります。

 なお、最近RMサザビーズで落札されたサド550は6900ユーロ(およそ108万円)と、コレクターにとってはリーズナブルなものかと。むしろ、まだオーダーできるならEV仕様のサドというのもアリだと思うのですが、いかがでしょう。

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