三菱が最後まで作り続けた魂のクルマ。ランサーエボリューションは世界中で愛され、三菱ブランドを強く支えた。三菱が目指す走行性能を具現化し、10ものモデルを生み出したランエボを振り返り、現代まで受け継がれる三菱の挑戦を考えていこう。
文/佐々木 亘、写真:MITSUBISHI
ランエボの終売から早10年……お前の事が好きだったんだよ! 受け継がれる三菱が懸けたランエボの魂
■安全に意のままに操れる高性能がランエボ
もうなにも言うまい、カッコ良すぎるんじゃお前!
ランエボの始まりは1992年。WRCのホモロゲーション取得用の車両として登場した。
歴代のランエボの多くは限定生産であり、ランエボは売るためというよりも、レースで(WRCで)勝つために生まれたクルマなのだ。
最終型となるランエボXが発売されたのは2007年の4月。
限定生産でしか生まれてこなかったランエボが、当代からカタログモデルとなる。
ランエボがアプローチし続けた「誰もが安全に、意のままに操れる高性能」は、ランエボと共に新しいステージへと歩を進めた。
ランエボXでは、歴代ランエボが載せてきた4G63型エンジンを変更し、新開発の4B11型を搭載。
トランスミッションには3ペダルの5速MTだけではなく、2ペダルMTの6速DCTが採用されている。
ハイパフォーマンスセダンは、10代目に大きな進化と変化を遂げた。
レースではなく公道という新たなステージで、ランエボXの挑戦が始まったのである。
■宣言された三菱のMT・セダンの終焉
2007年の登場以来、毎年マイナーチェンジを繰り返し、イヤーモデル化していたランエボXだったが、マイナーチェンジは2012年の10月を最後に止まる。
ランエボにとって静かな2013年が過ぎた。そして翌年、三菱はランエボをモデルチェンジせずに終了することを明らかにする。
2014年12月にSST車が生産終了を迎え、翌年8月には、ファイナルエディションを1,000台限定で販売し、ランエボは10代にも及ぶ長い歴史に幕を下ろした。
ランエボの終焉は、同時に三菱からセダンとMTモデルが消滅することを意味する。
ランエボ消滅が尾を引いたか、ここから少しの間、三菱は厳しい時代を過ごすことになる。
■見えないところで魅せるのがエボ流!
ランエボの魂が巡り巡ってトライトン復活に一役買ったと考えると感慨深い
少し前まで元気のない三菱だったが、段々と調子を取り戻している。
昨年登場したデリカミニは大ヒット、2024年2月に登場したトライトンの調子もいい。
ここ数年、三菱のクルマに感じる魅力は大きく変わったような気がする。
これまでは、見た目で勝負する部分が多かったのだが、最近はデリカミニといいトライトンといい、中身の勝負ができているのだ。
見えないところもこだわる。いや、見えないところだからこそこだわりまくるのは、ランエボXの特徴だ。ランエボXは中身で魅せるクルマだった。
ランエボXでは、ハイパワーエンジンの力を最大に発揮するためには何が必要かを、とても入念に考えていた。
どんなに大きな力を生み出しても、どんなに上手く駆動力が配分されても、地面に伝わらなければ意味がない。
そこで、ランエボXはタイヤやサスペンションに、とことんこだわった。
タイヤの接地性を確保するためのサイズアップや、フロントの倒立式単筒ショックアブソーバーや18インチの高剛性アルミホイールを標準装備。
メーカーオプションではbremboブレーキシステム、BILSTEINのショックアブソーバー、Eibachのコイルスプリングなどを用意する徹底ぶりだ。
ランエボが追求したのは、走りのためなら見えないところへも徹底的にこだわるという姿勢。
さらに、三菱に攻めることを教え、挑戦の魂を置いてきた。
ランエボの終了宣言から、間もなく10年が経過しようとしている。
10年ぶりの復活も期待したいが、今のところその気配はない。
ただ、ランエボが残していった攻めの精神が、三菱を復活させ、昨今の力強いヒットにつながっているのだろう。
三菱からエボの灯が消えない限り、今後も期待できるクルマが数多く投入されていくはずだ。これからも、三菱からは目が離せない。
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