“ヒュンダイ”あらため“ヒョンデ”が日本に再上陸した。同社のメディア向け発表会に参加した小川フミオが思ったこと、感じたこととは?
若い世代の価値観に焦点を当てた施策
“ふたり”のためのモーターサイクル──新型ホンダNT1100試乗記
日本市場に再上陸という韓国のヒョンデ。ソウルはもちろん、米国や、欧州でヒョンデを見かけると、“なんだかよさそう”という印象を、私はずっと持ってきた。
なので、日本にはいつかはやってくるのでは? と、思っていたので、FCVの「NEXO(ネッソ)」とBEVの「IONIQ 5(アイオニック5)」を、2022年5月から日本で販売すると聞いても、それほど驚きはなかった。
この数年、初夏になると訪れていた、ミラノ・デザインウィークでも、ヒョンデは毎年、サムスンやLGといったメーカーとともに、かなり力のはいったインスタレーションを、レクサスの真向かいで展開。これも私にはおもしろかった。デジタライゼーション、デザイン、ライフスタイルブランディングでも、グローバルな魅力を発信するブランドというイメージが強い。
日本では「ZEV(ゼロエミッションビークル=排ガスを出さないクルマ)に特化して販売します」と、東京・大手町三井ホールで行われた記者発表会で、ヒョンデ・モビリティ・ジャパンの加藤成昭マネージングダイレクターが語ったときも、驚きはいっさいなし。
販売はオンラインで、というのも、ボルボ・カー・ジャパンが着手したEV(新型C40 Recharge)のオンライン販売や、三菱自動車の楽天市場店がすでに展開されているいま、奇抜なアイディアには聴こえない。
DeNA SOMPO Mobilityのカーシェアリングサービスへの車両提供(しかも1時間は無料)や、友人にヒョンデ車を紹介するとインセンティブが支払われる制度など、若い世代の価値観に焦点を当てた施策に、私としては、興味をそそられる。
かつてのヒョンデとは?
日本にヒョンデ車が本格的に導入されたのは、2001年。そのときは大ヒットテレビドラマシリーズ『冬のソナタ』のぺ・ヨンジュンや、当時人気の小倉優子をコマーシャルに起用するなど、コストをかけた販売戦略を展開した。
それより前の1980年代に、ハッチバック「ポニー」が並行輸入されていて、私はそれにも乗ったことがある。
先だってホン・ウィジョンが監督した、なかなか出来のいい『声もなく』(2020年)を劇場で観ていたら、農村の風景のなかにKIA(起亜)がマツダ「ボンゴ」をライセンス生産していたKIAボンゴが、ぼろぼろの姿で登場。それがなつかしかった。かつては、韓国メーカーと日本メーカーは、けっこうつながっていたのだ。
ポニーは三菱製のエンジンを搭載したモデルだったはずだけれど、足まわりがふにゃふにゃで、当時の日本車にはかなわないという印象だった。“ヨン様”の「ソナタ」や、“ゆうこりん”の「XG」はそれなりにいいクルマだったけれど、これならほかにもっといいクルマがあるのでは? と、思ったのもおぼえている。
そんな印象があるヒョンデゆえ、ひとによっては、かつての“失敗例”を重ね合わせるケースもあるようだ。たとえば、米ゼネラルモーターズが日本車キラーとして開発したブランド「サターン」や、やはりGM傘下のドイツ企業「オペル」。
広告宣伝は派手だったし、製品価格はリーズナブルだったし、クルマとしても悪く出来ではなかったものの、結局は日本市場から撤退となった(サターンは母体のGMが経営破綻)。ヒョンデ(当時は社名をヒュンダイとしていた)も、2010年に日本市場における乗用車販売の中止を決定したのだった。
あたらしい市場を切り拓く可能性は十分あり
今回の再上陸で、ヒョンデはまた、早晩撤退という同じ轍を踏むのだろうか……それを危惧する声があるのもたしか。韓国製品へのポジティブなイメージは、スマートデバイスやテレビなどの家電どまり、という指摘もあったりする。
じしんはどう認識して今回の再上陸を決定したのか。ヒョンデ・モビリティ・ジャパンの広報担当者に確認すると、「事前の市場調査を見ると、ヒョンデへのイメージはいいも悪いもなく、真っ白でした」と、答えてくれた。なるほど。「強いていえば、アーミー(BTSのファンクラブ)は(BTSのスポンサー企業である)ヒョンデにポジティブなイメージを持っています」。
そういえばヒョンデは2020年、代官山にNEXOを持ちこんで「NEXO Terrarium」なるイベントを開催したことがある。そのときはBTSのノベルティの配布もあって、若いひとが詰めかけたと、後になって、ヒョンデの日本事務所のひとから聞いた。私は、自称アーミーの娘に「なんで行かなかったの!?」と、責められた。
若いひとをターゲットに据える販売戦略は、今回、原宿に「Hyundai House Harajuku」なるポップアップスペースを、2022年2月から5月にかけてオープンすることともつながっていることからもわかる。
「価値観として高級ブランドを所有することに興味がない層」が、今回のターゲットと、前出の加藤氏も、記者会見で明言していたとおりで、あたらしい市場を切り拓く可能性あり、と私もみている。
2021年に試乗したNEXOの印象はよく、トップエンドのパワー感にややとぼしいかなと感じたいがいは、質感が高く、快適で、たしかにグローバルセールスが好調というのがよくわかる出来だった。2022年に導入されるIONIQ 5も、魅力的なオーラを発している。
テスラの「モデル3」買おうか、IONIQ5買おうか迷うひとが出てきても不思議じゃない気がする。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
たとえ内容が良かろうが、韓国ブランドの製品に高い金を出して命を預けるのは気持ち的に無理だし恥ずかしい。
一昨年0台、昨年も僅かな販売台数に終わったユニバースも撤退でいいと思う。