初の全面改良を果たしたアウディA1スポーツバック、フルモデルチェンジしたプジョー208、3代目となるベントレーの新型フライングスパー。
新たな進化を遂げた3台の試乗の様子をご紹介。
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■ラインナップ
・アウディA1スポーツバック 35TFSIアドバンス(365万円)
・プジョー208 Allure(価格未定 約250万円と予想)
・ベントレーフライングスパー(2615万8000円)
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※本稿は2019年11月のものです
文:西川 淳、渡辺 敏史、飯田 裕子/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年12月10日号
■A1ならではの一体感が更に進化!! アウディA1に試乗!!!
(TEXT/飯田裕子)
アウディの主軸モデルの名前は“A”のあとにボディの大きさやクラスを示すナンバーが続く。現在は「A1」から「A8」まであり、今回紹介する「A1」はアウディの最コンパクトモデル。
本国では2世代目がすでに登場ずみで、日本でも11月1日に新型A1が登場した。今回、日本上陸の直前に、その新型をアウディの本拠地であるドイツはインゴルシュタッド周辺で試乗する機会を得た。
A1は日本の道路環境にもマッチするボディサイズとアウディの洗練されたデザイン性、そして軽快なドライブフィールを持ち、「アウディのデザインが好き!」という老若男女から高い支持を得ているモデルだ。
新型は同ブランド内のコンパクトモデル、A1のみならずA3にまで及ぶハードルを自ら上げるようなパッケージングや装備が与えられていることに明らかな進化がうかがえる。
アクセントの効いたインパネ。メーター回りはヘキサゴングリルイメージ?
先代でもエクステリアデザインの特徴のひとつでもあったやや幅広で直線的なCピラーは1980年に登場したクワトロをオマージュしたもので、コンパクトながらボディ後方に力強さを与えている。
フロントのシングルフレームグリル上左右のヘッドライトへと続く三分割されたスリットは新型の“顔”の特徴となる。
ボディサイズは欧州スペック比で先代に対し、全長4029mm×全幅1720mmはほぼ同等であるにもかかわらず、ホイールベースが「+94mm」と伸びている点だ。おかげで「A3」にも迫る居住性が実現し、ラゲッジスペースも拡大。
室内の居心地は前後シート位置にかかわらず、例えばドライバーにとっては扱いやすいのにゆったりなムードで試乗中、「これはA3と比べられちゃうこと間違いないな」と何度心のなかで呟いたことか。
アウディのなかではベーシックなモデルとなるが、インテリアの質感は兄貴たちに負けてはいない
室内は広さのみならず運転席周辺のタッチスクリーンやオプション設定ながらバーチャルコックピットなどが近年のアウディのデザインや装備の質を上げた。多角的なパーツと水平感が印象的なデザインはエクステリアデザインの雰囲気と品よくトーンを合わせている。
さらに運転支援技術の装備も進んだ。衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報、アダプティブクルーズコントロール、事故危険察知時のシートベルトの巻き上げやハイビームアシストが設定されている。
ボディが大きくなった分、室内空間も余裕が生まれ快適性もアップ。リアシート回りも確実に広くなっている
試乗車は2LのTFSIエンジンに7速Sトロニックトランスミッション(AT)を組み合わせた40モデルだった。
日本にはまず35TFSI=1.5L TFSI(150ps/250Nm)エンジン搭載モデルが導入される予定だそうで、2L TFSIの導入は未定だ。
そこでドライブインプレッションはあくまで参考としていただきたいが、搭載エンジンが異なってもドライブパフォーマンスが向上しているのは明らかだ。
先代とボディサイズはほぼ同等ながら足腰の剛性感は上がり、ホイールベース拡大の効果もあってか軽快さに加え直進走行時の安定感が乗り味に上質さを与えている。
アウディはA8であっても軽々とした足運びが軽快感に繋がっている印象にあり、A1もそれは同様。加えていうならコンパクトモデルだからといってイタズラに軽快感をプラスしたりはしていない。
その一方で運転席と四隅に置かれたタイヤがすぐそばにある一体感はA1ならでは。どちらかといえば軽めのステアリングフィールを手中に感じながらボディサイズが与えてくれる安心感と操る愉しさにも繋がっている。
新型A1は静粛性も上がっているようで、モデル自体の車体の質感の向上ぶりも新型らしく期待どおり、向上しているようだ。最新のインフォテインメントと走行支援システム、そしてこれまで以上の快適さが与えられた新型A1の日本上陸が待ち遠しい。
スポーツバックはダイナミックなデザインが特徴
ちなみに今回試乗した本国の広報車。“ターボブルー”の目にも鮮やかなブルーのボディに真っ白なホイールのセンスのよさはもちろん、ボディサイドの下方に貼られた一枚の真っ白のフォーリング(アウディのマーク)のステッカー(正式なデザインの一部ではないでしょう)にかつてのクワトロを一層思わせ、心をくすぐられたことか。
■アウディ A1スポーツバック 40TFSI 主要諸元
・全長:4029mm
・全幅:1720mm
・全高:1433mm
・ホイールベース:2563mm
・エンジン:2L 直4ターボ
・最高出力:200ps/320Nm
・価格(A1スポーツバック 35 TFSI アドバンス):365万円
・価格(A1スポーツバック 35 TFSI Sライン):391万円
■注目は刷新されたプラットフォーム!! プジョー208試乗
(TEXT/渡辺 敏史)
欧州でVWグループに次ぐ第二位のシェアを築くPSA(プジョー・シトロエン)グループ。その数的基幹車種となるプジョー208が完全刷新を受けて今秋、欧州で販売を開始した。
最大のトピックは「CMP」と呼ばれる新しいプラットフォームを採用し、多様なパワートレーンへの対応を容易にしていることだろう。
従来のガソリン&ディーゼルだけでなく、リアサス周りのちょっとした改変のみでBEVとしても対応できるその特性を活かして、新型には床下にバッテリーを搭載するラインナップe-208も用意される。
日本における新型208は、このe-208に加えて1.2L 3気筒の直噴ターボにアイシンAW製8速ATを組み合わせたモデルが展開される予定だ。
独特なライト回りはこのクルマの見せ場?
バリエーションは100psと130psが用意されるが日本仕様は100psを選択する可能性が高い。ちなみにその動力性能は最高速度が188km/h、0~100km/h加速は11.9秒と発表されている。
e-208の方は最高出力が136ps、最大トルクは260Nmのモーターで前輪を駆動。0~100km/hは8.1秒とホットハッチ級の瞬発力を誇る。
リチウムイオンバッテリーは床面とセンタートンネル部に配置されその容量は50kWh。航続距離はWLTP計測モードで340kmと、充分以上の実用性を確保しているようだ。充電仕様やバッテリー保証については未定だが、日産リーフをはじめほかのEVと同等の維持環境は担保されるだろう。
フランス生まれのプジョーらしい厚めのシート
208のサイズは全長4055×全幅1745×全高1430mm。これは先に発表された日本仕様のトヨタヤリスよりひと回り大きく、VWポロにほど近い。車高が低くリアウィンドウも寝ているため後席環境は期待できなさそうにみえるが、プレーンなグリーンハウス形状もあって心理的な圧迫感は小さい。
但しe-208の方はバッテリー搭載により床面が上がっており、標準に比べると前席下部への足入れ性がやや劣る。
小径ステアリングを基に視認系を構成する内装のデザインには煩さを感じる向きもあるかもしれないが、その仕上げ質感は目を見張るものがある。
メーターナセル内の液晶モニターにHUDのような投影画面を重ねて3D的に情報を表示する新しいデジタルクラスターはオプション的な選択肢となるかもしれないが、新型208を象徴するユニークな装備となるだろう。
最新の「i-Cockpit」を採用。コネクティビリティが重視されている
試乗は配車の関係で130ps&8速ATのガソリンモデルが中心となった。そのグレード構成は従来と同様、16インチを履くベーシックな「アリュール」と、17インチを履くスポーティな「GTライン」というものだが、タウンスピードでの乗り心地はいずれも僅かながら硬めの印象だ。
これはアシの動きの渋さ云々というよりも、そもそも新型208のキャラクターが敏捷性を志向するがゆえのものだろう。昨今柔らかな乗り味を強く意識するシトロエンとの差別化を明確にしようというブランディングの一環ではあるかもしれない。
現にタイトなワインディングでは新型208、ベーシックな仕様ながらも強烈なロードホールディング性からくる安心感のもと、連続するコーナーをまったく音を上げることなくヒラヒラと軽快に駆け抜けてくれた。既に日本でもお馴染みの1.2Lエンジンは3気筒の振動癖もまったく気にならず、音の質感やパワーの伸びも心地よい。
短時間ながらe-208にも乗ることができたが、こちらもBEVながら発進時のトルク伝達は努めて穏やかに、そして回せば加速の伸び感を感じさせるようなパワーマネージメントを仕込んでいたのが印象的だった。
300kg近くに及ぶ重量増は持ち前の敏捷性を削ぐことなく、落ち着いた乗り味に貢献している。ラフなアクセル操作にもやすやすとトラクションを失わない辺りからも、大トルクをしっかり受け止める前脚の作り込みの巧さがうかがえる。
この新しい208の国内発売は2020年の夏から秋の予定。ヤリスやフィットも出揃い、Bセグメント市場は価格や燃費だけでなく、質感や味わいの面においても激しい競争を迎えることになりそうだ。
リアスタイルもキュート
■プジョー 208 Allure 主要諸元
・全長:4055mm
・全幅:1745mm
・全高:1430mm
・ホイールベース:2540mm
・エンジン:1.2L 直3ターボ
・最高出力:130ps/205Nm
■ポルシェ開発のFRプラットフォーム採用!! ベントレー フライングスパー試乗
(TEXT/西川 淳)
ブランドのアイコン、「コンチネンタルGT」をベースとした4ドアのラグジュアリィサルーン、フライングスパー。SUVのベンテイガと並んで、ベントレーの主力というべき重要なモデルだ。
ポルシェが開発に加わった、新型プラットフォームによりフロントミドシップになった新型フライングスパー
フルモデルチェンジした新型で三世代目を数える(大昔に同名のモデルもあったが)。今回もコンチネンタルGTのメカニズムをベースにしたという点ではこれまでと同じ手法だけれども、実際に試乗してみれば、前2世代におけるコンチネンタルGTとフライングスパーとの違い以上に、異なる走りのキャラクターが与えられていた。
現行型のコンチネンタルGTはよりスポーツカーライクな味付けで、それをベースにフライングスパーでは心配だと思ったものだが、実際には洗練されたGTサルーンというキャラクターを明確に打ち出すことに成功している。
フロントサスはダブルウィッシュボーンでリアはマルチリンクとなる。いずれもエアサス仕様。フロント回りではより押し出しの強くなったデザインが目につく
それを可能にしたのが、いずれのモデルにも採用されたポルシェ開発のFRプラットフォームだ。フロントアクスルははっきりと前進しており、6LのW12ツインターボエンジンもきっちりフロントミッドに積まれる。
加えて8速のZF製デュアルクラッチトランスミッション+アクティヴ4WDという駆動系や、連続ダンピングシステムを備えたエアサスまでほとんどコンチネンタルGTと同じシステムなのだが、だからといって乗り味まで同じにならないあたりが最新モデルの凄まじさだろう。
ちなみにフライングスパーにはコンチネンタルGTにはない4WSが採用されている。ロングホイールベース化による取り回し悪化に対応するためだ。
乗り心地のよさと静かさはショーファードリブンとして使われることも多いこのクルマにとって必須の進化ポイントであったが、それ以上に素晴らしかったのはドライブフィールのほうだった。
コンチネンタルGTとはうってかわってDCTに不快なマナーはなく、極めてスムーズに回るW12の持ち味をまったく損なわない。心地よくエキゾーストノートを響かせながら豪快だが洗練された加速をみせる。
4WSは取り回し以外にも直進安定性や旋回性能にも寄与しており、なかでも前輪を思った位置にもっていける感覚は、スポーツサルーンで鳴らすBMW7シリーズやポルシェパナメーラ以上に正確で心地よい。
新型フライングスパーは、当代最高レベルのスポーツサルーンでもあったのだ。
■ベントレー フライングスパー主要諸元
・全長:5304mm
・全幅:1968mm
・全高:1488mm
・ホイールベース:3195mm
・エンジン:6L W12ツインターボ
・最高出力:635ps/900Nm
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