みんなの憧れだったイオタSVRを自ら実現
見れば見るほどよくできているランボルギーニ・イオタSVRのレプリカ。憧れの名車に乗りたいけれども、さすがにイオタSVRの本物をゲットするのはキツイよな……と思った金澤さんが自作したモノ。
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金澤さんは住宅の外壁などを塗るペンキ屋さんを生業としていることもあり、持ち前の集中力と手先の器用さを活かしてガレージのみならず愛車のカウルまで造ってしまったのだ。スズキ・キャラをベースとして、イオタSVRに似せた唯一無二の愛車を自宅にて製作したオーナーの並々ならぬ熱意をご紹介しよう。
かつて、2ストローク/360ccエンジンをリアに搭載したスズキ・フロンテクーペや1976年式の日産フェアレディ280Z 2by2などを愛用していたという金澤さんは、ほぼ新車だったというスズキ・キャラを1994年に購入した。
「マツダ・オートザムAZ-1よりもキャラのほうが20万円ぐらい安くて、しかもキャラの新古車がいっぱい流通していたんですよ。それで、AZ-1ではなくキャラにしました」と金澤さん。キャラを購入したことをコンピューターに強い友人に報告し、写真を見せたところ、友人はそのフロントマスクをイオタSVR風にモディファイしたその写真データを戻してくれたらしい。
この出来事がきっかけで、金澤さんはイオタSVRレプリカの製作を決意した。当時、フェラーリ288GTOのプロポーションも少しだけ気になっていたそうだが、初心貫徹でイオタSVRを造ることにしたそうだ。
カーマニアを唸らせるディテールをDIYで再現
金澤さんは現在59歳で、40歳になるまで「いつの日にかランボルギーニ・ミウラかイオタSVRを買おう」と本気で思っていたのだという。小学生のときに好きだった1歳上の女の子の名前が“ミウラ”さんだったこともあり、ランボルギーニのミウラやイオタSVRは、金澤さんにとってヒーローであり、ヒロインなのだ。
その後、やっぱり本物は買えないな……と思った(気づいた)ことで、ゲットできないなら自分で造ろう(!)と一念発起。40代の前半からステージ1と呼んでいる初期モデルを造り始め、リアを延長して、チルトするフロントカウルを持つステージ2を50歳のときに完成させた。
ステージ1の製作は鈑金屋にオーダーし、ステージ2は自宅のガレージで自作。金澤さんはペンキ屋さんなので、ステージ2は自分で外装を塗ったらしい。
ステージ1の製作を依頼した鈑金屋はホンダ・ビートなどにも強いショップで、鈑金屋兼整備工場だったのだという。まず、友人がパソコンで製作してくれたイオタSVR風キャラの写真を見せたら「面白そうだね」と言ってくれたのでオーダーしたものの、8~9割ほど完成したところで作業がストップ。預けてから一年ほど経過していたこともあり、その状態で塗装してもらって引き上げてきたそうだ。
リアカウルまでチルトする現在のステージ3は52歳のときに入眼したとのことで、自作したカウルの製作期間はフロントが2年、リアが2年半ほどかかったそうだ。「ステージ2とステージ3のカウルは、全部自宅でコツコツ造ったんですよ。まず、発泡ウレタンを削って型を造って、FPRで形を決めて、表面を削っていったわけです。とにかく大変でしたね」。
こうして妥協することなく作り上げていったものだけに、プロポーションがよく、SSRのメッシュホイールを装着しているなど、カーマニアを唸らせるディテールを満載している夢のクルマが完成した。まじまじと見ると、車体のセンター部分にベース車のキャラであったことを窺い知れる名残がある点がまた面白い。
エンジンは700ccにボアアップされているが、もちろん、12気筒エンジンを積んでいるわけではないのでファンネルはダミーとなっている。
紆余曲折の末に完成したこともあり、ステージ3が出来あがったときの思いは「オレ、よくやったなぁー」というものだったそうだ。そしてなにより、イオタSVRを見てくれた人の感想で一番多いのが「これ、素人が作ったの?」というもので、「そうです、素人の私が」と伝えれば、金澤さん的に最も嬉しいリアクションは「うっそぉ~、DIYなんだね」だとか。
それでもまだ、手を加えたいところがあるそうだが、それをやり始めると乗れなくなるので、やらないそう。イオタSVRの製作で燃え尽きたこともあり、他車を造る気力は残っていないとのことだった。これからも金澤さんとイオタSVRのレプリカは、自作したガレージを秘密基地としながら、世のクルマ好きを歓ばせていくことだろう。
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