この記事をまとめると
■2020年5月にRMサザビーズのオークションで「スバル360」のパトカー仕様が出品された
なんと1960年代にリッター100馬力の高出力エンジンを積んだホットモデル! スバル360ヤングSSとは
■パトカー風になっているだけで実際のパトカーではない趣味で作られたモデルだ
■ニュージーランドでのチャリティイベントに向けて作られた1台といわれている
可愛すぎるてんとう虫のパトカーがあった!?
2020年5月にRMサザビーズが開催したオークションに「ニュージーランド警察のパトカー仕様のスバル360が出品された」ということで、ある時期少々話題になった。
ご承知のとおり、スバル360は1958年から1970年にかけて39万台以上が販売された軽乗用車。搭載エンジンは356ccの空冷2ストローク直2「EK31型」で、その最高出力はわずか16馬力。のちの改良型でも18~25馬力でしかなかった(※スポーツモデル「ヤングSS」は36馬力)。
オークションに出品されたスバル360には黒と白のパトカー的カラーリングが施されており、サイレンやランプ類なども備えているその姿は、確かにパトカーそのもの。かなりグッとくるビジュアルであり、このパトカーにならば「むしろ検挙されてみたい!」とも思う筆者である。
で、これの写真を見た各メディアやブロガーなどが「ニュージーランド警察が使っていたスバル360のパトカーを発見!」的な記事を書いたわけだが、結論からいうと、コレは「元パトカー」ではなく、誰かが製作した「趣味の品」だ。
まず、そもそもボディサイドに貼られているデカールには、ニュージーランド警察ではなくMINISTORY OF TRANSPORT、つまり「ニュージーランド交通省」と書かれている。ニュージーランド交通省とは、日本の国土交通省国土政策局によれば、陸上交通投資に関する国家方針文書を作成したり、ニュージーランドの交通戦略などをいろいろヨロシクする省庁であるとのこと。
その文字を読んだだけで「パトカーではないな……」というのが推測できるわけだが、念のためニュージーランド警察が使っているパトカーのカラーリングはどんなものなのだろうか? と調べてみると、どうやら彼の地のパトカーは「白い車体に黄色と青の市松模様」が基本で、それに加えて高速隊では、赤やオレンジ色の車体に市松模様をあしらっていることもあるらしい。
いずれにせよ「市松模様+POLICEという大きな文字」が、彼の地のパトカーの基本だ。
誕生した経緯とは
ならば、この黒白のツートーンカラーにパトカーっぽいランプやサイレン、そしてなんとなく警察っぽい(実際はニュージーランド交通省)デカールを組み合わせたスバル360は、一体なんなのだろうか?
それを調べるべくRMサザビーズの公式サイトを見てみても、とくに詳しいことは書かれていない。「New Zealand Ministry of Transport livery(ニュージーランド交通省仕様)」「Unlikely to catch any speeders(速度違反をするクルマには追いつけない可能性大)」などと書かれているだけだ。ちなみに出品車は4万4800米ドル(2020年5月の為替レートで約480万円)にて落札された模様である。
「いったいこのスバル360はなんなんだ……?」ということが妙に気になった筆者は、自宅のコタツに入って徹底調査を開始。すると、おそらく正解であろう答えは「ニュージーランド人同士がフェイスブック上でおこなっていた会話」から、わりとすぐに判明した。
以下、会話の要旨を意訳のうえ引用する。
スティーブさん:このロゴは警察ではなくニュージーランド交通省(MOT)のものやね。ナンバープレートもニュージーランドの標準発行プレートですし。
ブライアンさん:たしかにMOTはアメリカンタイプのサーチライトなんて付けてなかったはずだよね。つーことはこれ、誰かが『昔のニュージーランド警察のパトカーはこうあるべきだった』みたいなアイディアに基づいて作ったモノなのかな?
スティーブさん:MOTがスバル360を所有していたとは思えんし、そもそもこの車両、右ハンドルですらありませへんがな。ワシ、当時ニュージーランドでスバル360を所有していた人がチャリティーイベントか何かのために360をMOTカラーに変えたっちゅう記事を、どっかで読んだ記憶がありますわ。
カルロスさん:それにしてもキュートなスバルやね……。
ニュージーランドのスティーブさんがおっしゃっていることが100%正しいという証拠はない。だが諸々の状況証拠から考えると、まぁそういうことなのだろう。それにしてもカルロスさんがおっしゃるとおり、本当にキュートなスバルですな……。
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