車体の密度の高さによって一体的に動くアルピナらしいSUV
SUVがサルーン&ステーションワゴンにとって代わって “乗用車の基本スタイル”となって久しい。もちろん背景にはいろんな要因が考えられるが、中でも重要な理由として背の高いSUVでも乗り心地のよい安定した走り=セダンに負けない性能を発揮するようになったことを挙げたい。そういう意味で、初代BMW X5の功績は大きかった。
以来、今では“駆けぬける歓び”ももっぱらSUVスタイルが主流となり、BMW Mまでがサーキットで駆っても楽しめるSUVを出し始めた。そのように時代のSUV化が進む中でも、沈黙を守り続けたのがアルピナだった。
彼らはリムジンベースの快速モデルにこだわり続けたのだ。それが創業者ブルカルト・ボーフェンジーペンのこだわりでもあったという。BMWの主力SUVがアメリカ工場で生産されるという事情もあった。
そんな方針が転換されたのは、BMW AGでエンジニアとして活躍しアルピナへと戻ってきた創始者の息子、アンドレアス・ボーフェンジーペンが後継となってからのことだ。彼はSUVのアルピナ化を積極的に取り組んだ。そして、アルピナ初のSUVとして登場したモデルがこのXD3(とXD4)というわけだ(その後にXB7も登場した)。 ベースモデルとなったのはX3のM40dである。アルピナの流儀にのっとって直6ディーゼルエンジンの最高出力と最大トルクはともにわずかながらも引き上げられており、アルピナ・スイッチトロニック付きの8ATを組み合わせている。
ディーゼルエンジンを搭載したSUVであるため、ガソリンエンジンを積んだリムジンモデル(例えばB3)ほど驚くような感動の乗り味というわけにはいかない。けれども、スタンダードモデルより上質なドライブフィールであることは断言できる。走りのリファインは誰もが確実に感じられるレベルにあった。
ファインチューニングレベルのパワートレインも、実感値としてはもう少し性能アップしているように思える。2000回転以下から右足の裏に張り付いて押し返す力強さを感じ、その塊にいつまでも押され続けるかのようだ。実に頼もしい。日本の常用速度域においては何一つ不自由することなく、右足の軽いタッチのみでカバーする。街乗りから長距離ドライブまで、非常にラクだ。
そのうえ、アルピナの真骨頂というべき足が良い仕事をしてくれる。前述したように、驚くほどまろやかとまでは言えない。サルーンとは違ってホイールの大きさを感知する場面もあったからだ。 それでも全般的には乗り心地がよくなっており、車体の密度が高まって一体的に動くというアルピナらしい実感があった。X3というと、それこそ今や初代X5くらいのサイズ感があるわけだが、XD3は無闇に大きく感じさせないよう足がしつけられている。ワインディングロードに持ち込んでも思いのままのハンドリング能力を見せ、スポーツカーのように楽しめた。
安定した姿勢で胸のすく加速を楽しむ。エグゾーストノートは中で聴いている限りディーゼルエンジンのそれとは思えない響きだ。また、低回転域での静かさも特筆していい。ディーゼルエンジンの可能性をまだまだ実感させてくれるアルピナの“ファインプレー”であった。 アルピナ XD3(現行型)の中古車を探す▼検索条件アルピナ XD3(現行型)× 全国文/西川淳 写真/茂呂幸正、ニコル・レーシング・ジャパン
ベースモデルとなるBMW X3(3代目)の中古車市場は?
オンロードでもBMWらしい軽快な走りが味わえるミドルクラスSUV。2017年に現行型となる3世代目へと進化している。2021年に行われたマイナーチェンジでは、フロントマスクを中心にエクステリアを変更。最新の予防安全・運転支援システムやコネクテッド機能が搭載されているのがポイントだ。
現行型の中古車は約70台が流通しており、マイナーチェンジ後のモデルも30台以上見つけられる。BMW Mが手がけたスポーティなディーゼルモデルM40dも数台ながら流通している。 BMW X3(3代目)の中古車を探す▼検索条件BMW X3(3代目)× 全国文/編集部、写真/ビー・エム・ダブリュー
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