のどかな地方の村にそびえ立つ近代的なミュージアム
ドイツ在住の池ノ内みどりさんが、とある自動車イベント取材の移動途中で立ち寄った自動車ミュージアムが「Nationales Automuseum The Loh Collection」。数多くの希少な市販車やレーシングカーが並びます。のどかな地方の村に、なぜこの近代的なミュージアムが設立されたのか? その理由に迫ります。
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地元の実業家が集めた秘蔵のマシンが並ぶ
前回は展示されていた数々のフェラーリなどに興奮したコラムをお届けしましたが、今回はあらためて「Nationales Automuseum The Loh Collection」について紹介します。
ミュージアムがあるのは、ヘッセン州のフランクフルトの中心地から北に約120kmのところにあるディーツヘルツタール-エーヴェルスバッハという自然に囲まれた可愛らしい村。そのなかに近代的な建物が現れるのでビックリします。2023年7月にオープンしたばかりというピカピカの新しいミュージアムです。
1階の正面を入るとすぐにチケット&案内カウンターがあり、こちらでチケットを購入します。常設展示のみは大人1名19ユーロ(約3000円)で、特別展のみは9.5ユーロ(約1500円)。両方のコンビネーションチケットは26ユーロ(約4200円)で、ほかにもそれぞれお得なファミリーチケットがありますので、ご家族の方はそちらの方が随分とお得です。
さて、私の友人は出張でオフィスにはいなかったのですが、同僚のトビアスさんがミュージアムの展示を説明してくれました。「The Loh Collection」とあるように、この地で巨大の富を得た地元の名士であるロー氏が、もともとご趣味でコレクションされていた名車たちを見てもらえるようにと、ミュージアムを作り一般公開しているそう。
ちなみにロー氏はドイツ国内の長者番付トップ15位内にランクインされている大きな財閥のトップの方だそうです。このような方がいらっしゃるからこそ、稀少車を後世に残すべくきちんと整備し、最高のコンディションで何十年も経った現在もピカピカの状態を見ることができるのですから、本当にありがたいことです。開館してまだ1年ちょっとのミュージアムですが、すでに9万人以上の来場者を誇っているそうです。
常設フロアのコレクションは150台もの歴史的な車両が年代やカテゴリー別に展示されているのですが、とくに素晴らしいところは、クラシックカーをただ並べるだけではなく、その演出もステキなこと。車両に合わせた時代の道具類なども展示され、そちらにも見入ってしまいます。
ほかにも1年ごとに変更となる特別展示フロアには、前回もレポートしたとおり2024年はフェラーリの特別展が開催されており、ストリートカーからレーシングカー、エンジンや貴重なレースの資料まで展示されています。ミハエル・シューマッハの初ワールドチャンピオンマシン、ジャッキー・イクスやニキ・ラウダがドライブした数々の超稀少車も展示されています。
日本のレースファンは必見のマシンも展示
この「Nationales Automuseum The Loh Collection」は、欧州内の著名なミュージアムと提携しており、互いの車両の貸し借りもされているそうなのです。例えば、今はル・マンのサーキットミュージアムに1台貸し出しているとのこと。
モータースポーツの展示フロアで最も私が驚いたのは、2004年にル・マン24時間耐久レースLMP1クラスに参戦して総合優勝を果たしたプライベートチーム「Audi Sport Japan Team Goh」のアウディ「R8」の実車が、なんとこのミュージアムの所蔵されていること。ドライブした荒 聖治、リナルド・カペッロ、トム・クリステンセンの3名の選手のファンの方々には、ぜひとも実車をここまで見にきてもらいたいですね。
このアウディR8、レース後はチームオーナーである郷氏が所有していたそうですが、時を経てこのミュージアムのロー氏のコレクションとなり、大切に保管・展示されています。日本人としてドイツのこんなステキなミュージアムで対面できるなんて、とても感激です。
館内にはステキなレストランやカフェテリアコーナー、ショップ、SIMレーシング、スロットカーコースもありますので、休憩をしながらゆっくり見学をすることができます。
このミュージアムのオーナーでもあるロー氏がなぜ、フランクフルトやミュンヘン、ベルリンなどの大都市ではなく、あえてご自身の出身地である地方にミュージアムを作られたのかといえば、美しい村の地域経済の活性化を考えたからだそう。都会にミュージアムを作った方が集客率も大幅にアップし、収益には優位です。しかし、ロー家は長年住んでいるこの地方を中心に事業を展開しているだけに、地元への恩返しのためにも経済的な還元を望んでいるとのこと。また、大都市にはない旧き佳き美しい地方のドイツにもぜひ足を運んで頂きたいと、ロー氏をはじめとしたミュージアムの方々は願っているそうです。
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