みなさんは、自動車メーカーのBMWにどんなイメージをお持ちだろうか?たぶん、40代以降のクルマ好きの方であれば、「駆けぬける歓び」というブランドスローガンとともに“走り”の楽しいスポーティなクルマを思い浮かべる方も多いはず。
写真左が「i3」、右が「i8」
そんなBMWから2011年2月21日、「Born electric(ボーン・エレクトリック)」というブランド・コンセプトのもと“ iブランド”が誕生。そして2013年(日本では2014年)には電気自動車の「i3」、さらに続けてPHEVの「i8」が販売され、同社のCO2排出量削減や環境問題に対する意識の高さ、さらにその素早い行動力に感心させられた。
そして、昨年から今年にかけてSUVタイプの電気自動車「ix3」と「ix」、セダンの「i4」が日本で発売され、2022年以降も立て続けに「x1」や「7シリーズ」などのBEVを導入してすることがアナウンスされている。
そこで、自動車メーカーとして環境問題に対して真摯に向き合うBMWのサスティナビリティへの取り組みについて、BMWジャパン 広報部部長の佐藤毅氏にお話を伺ったので紹介しよう。
BMWそのものをサスティナビリティにする
まずは、基本的な考え方として、BMWでは「サスティナビリティを企業戦略の核」としており、クルマやバイクなどの製造だけに留まらず、何を行なうにもサステイナビリティを中心とした思想がグループ全体で、すでに根付いているという。それは、つまりサスティナブルな活動に取り組もうとするのではなく、BMWそのものをサスティナビリティにするという考え方。
実はBMWでは、早い段階で未来に目を向け、サプライ・チェーンから、生産、全製品の使用寿命まで、一貫してサスティナビリティと資源保護を重視してきた。そんなサスティナビリティという考え方が、BMWの企業戦略の中心に据えられたのは、1970年代にまでさかのぼるという。
1972年にミュンヘン・オリンピックが開催された際、BMWは「1602」を電気自動車へと改造し、マラソンの伴走車として導入した。すでに当時から、環境問題に対しての意識が高まっており、その1年後、BMWは自動車メーカーとして初めて環境保護のための役員任命を行ない、その役員によって環境対策の基礎が築かれたのだそうだ。
それ以来、BMWはサスティナビリティ戦略や方策を発展させ実行しつづけており、触媒コンバーターや塗装工場の水性塗料技術など、CO2排出量を削減する新しい技術が導入され、リサイクルへの取り組みも考案。
1993年には、BMW経営方針のなかで全社員に向けた環境保護のガイドラインが策定された。さらに、BMWの各モデルに対し、環境に配慮した解体やリサイクル方法を詳説する数多くのマニュアルが作成されているという。
「Hydrogen 7」
そして2000年には、水素燃料電池車(FCV)の「Hydrogen 7(ハイドロジェン・セブン)」を開発。この6.0リッターのV12エンジンを搭載する7シリーズをベースとしたラグジュアリー・サルーンは、水素でもガソリンでも作動可能な画期的なクルマであった。
さらに、2020年にBMWグループは、同グループの2020年度年次報告書および2001年から続くサスティナブル・バリュー・レポートをひとつの報告書に統合。以降、BMWグループ年次総会に合わせて、同グループの業績と環境および社会への貢献を説明する統合報告書を発行するようになった。
これの意味するところは、この統合報告書を投資家などに発表することにより、BMWのサスティナブルな取り組みと企業経営を一体化させ、会社の戦略的目標の中心に据えるという強い決意を示したことになる。
2030年までにCO2排出量を2億トン削減
実はBMWでは、CO2排出量を2030年までに2億トン削減するという目標を発表している。これは、例えばミュンヘンのような人口100万人を超える都市の年間CO2排出量の20倍(20年分)以上に相当するという。
これを達成するために、RE:THINK(再考) 、 RE:DUCE(削減) 、 RE:USE(再使用) 、 RE:CYCLE(リサイクル)というアプローチによって、車両のライフサイクル全体、つまり原材料の抽出から生産および使用段階を経て製品寿命終了後のリサイクルまでを通じて、車両のカーボンフットプリントを削減していくのだという。
さらに、BMWグループだけで、このCO2排出量を2億トン削減という目標を成し遂げるのではなく、資源採掘から機械加工などを行なっているパートナー企業なども対象とし、「Use Phase(車両使用時)」「Production(製造工程)」「サプライチェーン」の3本の柱におけるCO2排出量削減目標を設定し達成を目指していく。
■Use Phase(車両使用時)-40%
BMWでは、車両使用時に排出されるCO2を2030年までに対2019年比で40%削減する目標を掲げている。そんなCO2排出量の削減に欠かせない電気自動車の製造・販売については、3段階のフェーズを設定。そのフェーズ1では、“ iブランド”の発足から「i3」、「i8」の販売を経て、現在は、商品ラインアップの電動化を推進している真っ只中のフェーズ2にあるという。
そのフェーズ2での達成すべき目標については、2025年までに電気自動車を2020年に比べ50%増加させ、2025年末までに200万台をユーザーに届けること。さらに、2023年時点でラインアップしている各セグメント(1シリーズ、3シリーズなど)に対して90%の電気自動車を提供していくとしている。
そして2025年~2030年の5年間におよぶフェーズ3では、フェーズ2に比べ電気自動車を20%増やし、2030年には全世界での販売台数の50%を電気自動車にすること。また、全てのセグメントに対して電気自動車を提供し、2030年までに40%のCO2排出削減の達成を目指すという。
なお現在のフェーズ2における電気自動車のラインナップについては、すでに「ix3」「ix」「i4」が発売されており、今後も「X1」「7シリーズ」「5シリーズ」「MINIクロスオーバー」などなど、次々と導入される予定となっている。
ただし、佐藤氏によると、BMWはラインナップの100%を電気自動車にするつもりはないという。今後の環境の変化や技術の進化、マーケットのインフラやニーズなどを注意深く観察し、あらゆるものに対応できるよう水素燃料やハイブリットなども選択肢としてしていくとのこと。
ちなみBMWグループには、ロールス・ロイスとミニを加えた3つのブランドが存在するが、比較的に短距離移動で使用されることの多いミニに関しては、2030年代前半までに100%の電気自動車ブランドになる予定だという。
■Production(製造工程)-80%
そして、製造工程においては、2030年までにCO2を対2019年比で80%も削減するという高い目標を設定している。これについては、いちばん影響の大きいのが製造工場で使用する電力で、これを風力発電や水力発電といった再生可能エネルギーにすることで目標を達成するという。もちろん、その他にも数多くの策を講じているのだが、ここでは割愛させていただく。
■サプライチェーン -20%
さらにBMWでは、パートナー企業などを含めたサプライチェーンなどに対してもCO2を2030年までに対2019年比で20%削減する目標を掲げている。実は、このサプライチェーンにまでCO2削減の目標を設定しているのは、自動車メーカーでもBMWだけだというほど非常に難しいものだという。
そのひとつの例が、ドバイにあるアルミの生成工場では、太陽光発電を使用した電力を使うことでCO2を削減している。また、製造に関わるパーツメーカーについても、単に品質や価格だけで選定するのではなく、どれだけCO2を削減しているのかということを労働環境なども含めてサステイナビリティに対する基準を設けて2014年より採用している。
もちろん、この取り組みは、BMWの一方的なものではなくサプライヤー同士がみんなでチェックしあうことにより、さらなるCO2削減やサステイナビリティに貢献していこうというものだという。ちなみに、そのチェックの範囲は、ローマテリアル(原材料)までにおよび、近年、社会問題となっている児童労働や低賃金のなどといった労働環境の改善にも役立つのだとか。
日本でのサステイナビリティへの取り組みについて
これまでは、BMWグループ全体の話であったのだが、ここからは昨年に設立40周年を迎えた日本法人であるBMWジャパンのサスティナビリティへの取り組みについて、佐藤氏に伺った。
まずは、1996年にISO14001の環境マネージメントシステム認証を取得したVDC(新車整備センター)について。実は、日本にはBMWの製造工場が存在しないため、海外からの船便で運ばれてくることになるのだが、到着後にこのVDCで車両の検査や洗車が行なわれる。
その際に使用される洗車の水の90%を再利用できるようにしている。さらに、運んできた際の梱包材についても、99%の割合でリサイクルしているとのこと。
また整備工場では、クルマのパーツもリユースしていこうという活動が、すでに1994年から開始されていたという。そして、BMWジャパンが使用しているオフィスや前出のVDC、パーツセンター、トレーニングセンターなどの電力は、すべてバイオマス発電のものに変更。
なお、BMWジャパンでは、CSR(社会貢献)活動も行なっており、「放課後npoアフタースクール」で子供たちに向けた教育プログラムを提供したり、「フードロス低減活動」でBMWの車両で社員が食品を運んだり、「ビーチクリーン」で海岸のゴミを拾ったりしているのだそうだ。
そして最後に、BMWジャパンとは違うのだが、日本国内に170店舗存在するディーラーについて。まず、BMW 東京では、ペーパーレスな電子カタログの推奨や制服のマテリアルのリサイクルなど数多くの点で環境に配慮していることが認められ、自動車業界で初めてエコマーク認定の「小売店舗」の認証を取得。今後は、他の全国のディーラーすべてでも、このエコマークを取得していこうという動きになっている。
さらに細かい点でいうと、ディーラーでおもてなしのひとつとして出す「おしぼり」についても、天然素材でつくられているため、使用後は3ヶ月以内に土に戻るエコなものだという。些細なことに感じるかもしれないが、土日やフェアの日などは数多くの来客があるため、かなりの貢献につながるという。
さて、長時間にわたり佐藤氏に話を伺った筆者なのだが、実は今年はBMW Mの50周年ということもあり、最後にその限定車の話題でひと盛り上がり。
そんな“走りのモデル”の話のついでに、電動化の進むBMWの「駆けぬける歓び」について、その味付けが薄れていってしまわないのかと尋ねたところ、「大丈夫です!そこは絶対外せないところですから」と胸を張った佐藤氏の姿が印象的であった。
■関連情報:https://www.bmw.co.jp/
取材・文/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)
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