これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、軽自動車でありながら上質を目指した、スペシャリティ軽自動車、ソニカを取り上げる。
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】ハイトワゴンの時代に逆行し売れなかったが志は高かった[ダイハツソニカ]
文/フォッケウルフ、写真/ダイハツ
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■軽自動車規格の範疇で躍動的なスタイルを実現
ダイハツ・ソニカは、「爽快ツアラー」をテーマに掲げ、軽自動車に対するイメージを根底から覆し、小さなクルマでもファーストカーとして選べるクルマとして注目を集めた。
小さいながらも躍動的なスタイルや乗員を包み込むような快適空間、ツアラーと呼ぶに相応しい爽快な走りが味わえることを特徴とし、レジャーや日帰り旅行など、ちょっと遠くまでのドライブを気持ちよく楽しめることをウリにしていた。
新時代のスペシャリティカーとして2006年に発売開始。全高を低く設定した低重心ボディとロングホイールベースとしたことに加え、サスペンション特性の最適化、ロール剛性を高めたことで、優れた走行安定性と快適な乗り心地を両立している
外観はロー&ロングという発想から生まれた低重心のプロポーションと特徴とし、ボディサイズは全長3395mm、全幅が1475mmの軽自動車枠とし、全高を1470mmと低く設定。当時から軽自動車クラスの主流となっていた背の高いクルマとは一線を画す、低く長いシルエットを際立たせている。
一見するとシンプルなフォルムだが、ボディサイドの8ライトウインドウが伸びやかなフォルムをより美しく演出し、ボディ下端を全周ブラックアウトにしたことと相まってシャープな印象に仕上げられている。足もとにはタービンのフィンをモチーフにした15インチアルミホイールを履き、ソニカの特徴である躍動的なイメージが強調されている。
車内に乗り込んでみると、運転席まわりを中心に外観と同様に質感の高さが実感できる。特に装備内容の充実ぶりは軽自動車クラスのなかでも抜きん出ており、ドライバーの満足感を高めてくれる。
メーターはブラックパネルのなかに計器類が浮かび上がったように見える自発光式とし、昼夜を問わず視認性は良好。メーター中央には平均燃費や瞬間燃費、航続可能距離、外気温といった情報を表示する大型液晶ディスプレイが備わる。
このほかにも作動状況がひと目でわかる液晶ディスプレイ付きのオートエアコンを一部グレードに標準装備したのをはじめ、クラスター部と一体化させて操作性に優れたオーディオシステムや、大容量の記憶メディアを採用して多彩なマルチメディア機能を搭載したHDDナビゲーションシステムをオプションで用意している。
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■車内にゆとりを確保してちょっと遠くまでのドライブが快適
1470mmの全高は当時の軽自動車クラスではもっとも低いが、2440mmのロングホイールベースとエンジンルームのコンパクト化によって、室内長は1915mmという十分な寸法としていた。そのうえ1320mmという軽自動車クラスでトップレベルの室内幅としたことも相まって、室内はスタイリッシュなフォルムからは想像できないほどのゆとりが確保されていた。
センターアームレスト付きの大型シートを採用。高速走行中の疲労感を軽減するゆったりしたドライビングポジションが確保できる
室内は広いだけでなく、快適かつ爽快なドライブを実現するための工夫も随所に施されている。特に運転席は、走行中に生じる視覚的な疲労感を軽減するために前方への視点が遠方になるように設計。そのうえで前後に長いサイドウインドウは前端をなだらかに下がる形状とし、三角窓を採用することでフロントピラーの死角を減らしている。
さらにリアヘッドレストを使用しないときは低い位置に下げておくことができるため、後方視界もしっかり確保することができる。軽自動車はもともと運転がしやすいクルマだが、こうした工夫によって誰でもスマートに扱えて、爽快なドライブに大きく貢献する。
セダンタイプの軽自動車では、後席乗員のスペースが狭くなりがちだが、ソニカでは後席でもゆったり座れるよう860mmの前後カップルディスタンスを確保。そのうえでフロントシートバックを引き込み形状とすることで、足もとに十分なゆとりが実感できる。
さらに広い室内で心地よく過ごせるよう、前席には乗員が心地よく身をゆだね、足を前方にゆったりと伸ばして座れるツアラーベンチシートを装備。シートカラーは、引き締まった印象を与えるブラックと華やかなレッドの2タイプを設定した。
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■爽快ツアラーの名に恥じないパフォーマンスを発揮
爽快なドライブを心ゆくまで楽しむために採用したメカニズムにも、ソニカのこだわりが見て取れる。
パワーユニットは、パワー&クリーンを走行性能と環境性能を高い次元で両立したターボエンジンと新開発CVTの組み合わせ。エンジンは低・中速域での豊かなトルクを発揮するKF-VEエンジンをターボ化した「KF-DET」が全車に搭載される。
ロングストロークやメカニカルロスの少なさによって、広いトルクレンジを確保したKF-VEエンジンの特徴を生かしながらターボをプラスすることで、発進直後から高速走行までパワフルかつスムーズな加速性能を発揮した。
このエンジンに組み合わされるトランスミッションは、インプットリダクション方式3軸ギアトレーン構造を世界で初めて採用した新開発のCVTだ。新たな機構が盛り込まれたCVTは、無段変速部の前段階であるプラネタリー部で減速を行い、ベルト回転速度を低減して極めて高い動力伝導効率と低速から高速までの全域で優れた加速性能を実現する。
KF-DETエンジンとのマッチングを徹底的に煮詰めることで、23.0km/L(10・15モード燃費)という、クラストップレベルの低燃費を実現。上級グレードには、マニュアル車感覚で7速のシフトチェンジが行えるアクティブシフトを採用し、ダイレクト感のある爽快な走りを楽しめた。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアは2WD車がトーションビーム式で、4WD車では3リンク式となる。前後のサスペンションはいずれも爽快ツアラーに相応しい走りを実現するべく、各所に専用チューニングを施したうえに、前後にスタビライザーを装着(4WD車はフロントのみ)してロール剛性の向上を図った。
サスペンションまわりに施した工夫だけでなく、低い全高による低重心ボディとロングホイールベースによってもたらされる優れた安定性の効果も手伝って、あらゆる場面でハイレベルな操縦性と快適な乗り心地を両立している。こうした特徴が、「爽快な走りで“ちょっと遠くまで”を快適にする」ソニカならではのセールスポイントとなっていた。
横長タイプのテールランプによって流れるようなボディデザインを印象付けるとともに、低重心でワイドなリアスタイルが強調されている
軽自動車といえば、日常の足として選ばれる傾向が強いクルマだが、ソニカはクルマ本来の魅力である「走り」にこだわって、新たな技術やメカニズムを数多く搭載。それらが功を奏して「爽快ツアラー」の名に恥じないパフォーマンスを有して新たな市場開拓を狙った。
しかし、すでにクラスの主流がハイトワゴンとなっていたことから販売は振るわず、1世代で歴史に幕を閉じてしまう。しかし軽自動車クラスで確たる人気は得られなかったものの、無駄のないボディに狙った性能や機能を凝縮させるという、ダイハツのクルマづくりにおける伝統はしっかりと息づいている。
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みんなのコメント
グローブボックスダンパーついてたり、集中スイッチに照明入ってたり
カップホルダーのロゴにまで照明ついてたのには、良い車作ってやろうって心粋を感じられた。
20年近く前の軽にしてレーダークルーズが用意されたり、当時のダイハツが市販できる事の全てを詰めて見せたんじゃないかという代物だったね。
市場背景はスーパーハイトありきの今と同じでトールワゴンありき、売れないの分かってたけどスズキはDiのセルボSRで応えてみせた。
各社とも面白い事やる気概があった・・・またこんなクルマを見てみたい。