美しくシャープなプロポーション、卓越したパフォーマンス、そして手頃な価格設定……。1978年に販売がスタートしたマツダの意欲作、サバンナRX-7は、さまざまな魅力でカスタマーの耳目を集め、発売1週間で受注が8000台に達したという。人気を集めた理由はそれだけにとどまらず、スポーツカーとしての成り立ちにこだわったパッケージングにもあるが、それはロータリーエンジンだからこそ実現できたものなのである。
ロータリー搭載による理想的なパッケージング
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オリジナルコンディションの初代マツダRX-7を取材できると聞いたとき、子どもの頃の記憶が驚くほど鮮やかに甦ってきた。いま思えば発売日に合わせたものだったのだと思うが、新聞に一面広告が掲載されていたのだ。天地に薄いウェッジシェイプ、リアガラスハッチを与えたコンパクトなキャビン、そしてリトラクタブルヘッドライト……。あっという間に惹きつけられ、隅から隅まで読み込んだわけだけれど、さらに印象深かったのは一緒に掲載されていた側面からの透視図。エンジンや駆動系、シート位置などがきめ細かく描かれていて、メカニズムにそれほど明るくない少年にも、スポーツカーとしての資質が磨かれたクルマだということがはっきり伝わってくる内容だった。
ロータリーエンジン搭載による理想的なパッケージング。斬新ささえ感じたこの広告だけでなく、当時用意されたカタログに目を通しても、その根本的な成り立ちをクルマ好きに向けて強くアピールしようと努めたことがよくわかる。そして、それはロータリーエンジンのメリットを最大限に活かしたクルマづくりと言い換えてもいい。マツダが実用化した水冷2ローターエンジンは、レシプロに比べるとパーツ点数が少なく、コンパクト化が可能だった。クルマの構成部品のうちもっとも嵩張るのがパワーユニット。これが小さくできれば、軽量化にも、またデザイン面でも大きな意味がある。
1967年に発売された最初の量産モデル、コスモスポーツは、それを明確に示してみせた。しかし、以降はファミリア、カペラ、サバンナ(グランドファミリア)等々、レシプロエンジンも設定するモデルにロータリー搭載車を用意することで、マツダはラインナップの拡充を進める。なにせ、70年代半ばには26人乗りのパークウェイロータリーバスやロータリーピックアップなども販売していたほど。この頃は、意図的にフツ~のクルマであることを強調しつつロータリーエンジンの普及を図っていたように感じる。
けれどRX-7は違った。小さなパワーソースを味方につけることで、スポーツカーがいかに進化できるか? それをコスモスポーツと同様に追求しながら、より身近な存在として受け入れられるような魅力を与えようと腐心した、ロータリーエンジン専用車なのである。1978年3月30日に発売されたこの2+2ハッチバッククーペは、1971年にロータリースペシャリティを名乗って登場したサバンナ(RX-3)の後継車と位置づけられ、サバンナRX-7のネーミングが与えられた。サバンナの名は2代目のFC3Cも受け継ぐが、3代目FD3SからはRX-7の呼称となる。
改良を重ね進化したRX-7
話を戻そう。”Designed by Rotary”の文字が添えられていた広告やカタログの透視図には、”フロント・ミッドシップ”という説明も加えられていた。「ボンネットの下にエンジンを積んだミッドシップなんてあるのか?」なんて不思議に思ったことを覚えているが、前後長の短いロータリーエンジンをバルクヘッド側に寄せて搭載し、2名乗車時で50.7対49.3という理想的な前後重量配分を実現していた。また、軽いエンジンをできるだけ低くレイアウトすることにより、低重心化にも配慮。同時に低くスラントしたフロントノーズデザインも可能にすることで、当時の水準では優秀なCd値0.34を達成するなど空力性能も高めていたのである。
サバンナRX-7はまさに”ロータリーがデザインしたモデル”だったのだが、搭載されたエンジンは573cc×2の排気量を持つ12A型である。130ps/7000r.p.m.、16.5kg-m/4000r.p.m.を発揮するが、車両重量が985~1015kgという初期モデルには必要にして十分。0-400m加速は5速M/T車で15.8秒(3速A/T車:17.4秒)という俊足を誇っていた。
わかりやすい見ためのカッコよさや動力性能を、スポーツカーとしての優れたパッケージングの上に実現したサバンナRX-7は、この手のクルマとしては魅力的な価格設定もあって、イメージカラーのヴィヴィッドなグリーンとイエローを中心に好調な売れ行きを示した。しかし、不評だったのが燃費だ。昭和53年排ガス規制をクリアするため、HCやCOを再燃焼させるサーマルリアクター方式にEGRバルブを組み合わせたシステムREAPS-7を採用していたが、当時の10モード燃費で6.5km/Lという値は、第二次オイルショックが発売時期と重なったこともあり改善が急務となったのである。
そこで79年10月、希薄燃焼方式の12A型エンジンを採用し、排ガス浄化方法もサーマルリアクター方式から三元触媒方式に変更。ロータリーはレシプロより未燃HCの排出が多いのがネックだったが、HCの排出量をエンジン本体の改良と触媒流入前の前処理により削減することで大幅に改善。実用燃費を20%以上向上させた。
その後の大きな変更は1980年11月に実施。ボディ一体形状のエアダム付ウレタン製バンパーや二重スモークテールランプなど外観にも変化があったが、ローターハウジング、リアクティブ・マニフォールドの肉薄化などエンジンの軽量化や燃焼室内気密性向上も実施。さらにクロスメンバーに高張力鋼板採用するなどして、車重を30kgもダイエットしている。そして、これらの相乗効果により、10モード燃費は9.2km/L(5速M/T車)にまで向上した。
それでも、エンジンの完成度を高める取り組みまだまだ続く。1982年3月にはすでにコスモやルーチェに搭載されていた12A-6PI型ユニットを採用。これは低速用プライマリー・ポート、中速用セカンダリー・ポート、高速用パワー・ポートと、1ローターあたり3個のインテークポートを持つ可変吸気システムが導入されたもの。これによって燃焼効率を大きく高め、10モード燃費は10.2km/Lを達成した。このほか12A-6PI採用時には、LSDの設定(SE-Limited、GT-X)、高性能ラジアルタイヤPOTENZA RE47の採用、ダンパー強化なども行われている。
このように初代サバンナRX-7は、動力性能と環境性能を可能な限り高いレベルで両立させることを目指して改良が積み重ねられたヒストリーを持つが、その最終完成形といえるのが、今回取材が叶ったターボモデルである。
お世辞抜きに美しいオリジナルコンディション
新旧幅広くエンスージァスティックなモデルをストックする茨城県のフィオラーノにお邪魔すると、お世辞抜きに美しくオリジナルコンディションを保った84年式サバンナRX-7ターボGT-Xがショールームを飾っていた。デビューから5年半後の83年9月に内容の濃いマイナーチェンジが施されたのだが、ターボはこのときに追加されたモデル。ロータリーターボの搭載は、世界初となるコスモ(82年)に次ぐものだが、12Aをベースにしたターボエンジン『12A-T』はコスモと仕様が若干異なっていた。日立製ターボチャージャーはコンプレッサー径が63mm→56mmへ、タービン径62mm→57mm、そしてタービン外径も67mm→62mmと小型になったが、出力はさらに向上し、低回転域での過給効果もアップするなど、RX-7専用に設計されていた。
6PIは採用されなかったものの無鉛レギュラーガソリン仕様で、最高出力165ps/6500r.p.m.、最大トルク23.0kg-m/4000r.p.m.を発揮し、10モード燃費10.0km/リッターをマーク。車両重量が1020kgのターボGTでは、6.18kg/psのパワーウェイトレシオを実現していた。ちなみにRX-7は北米など海外にも輸出されていたが、彼の地ではより排気量の大きい13Bを搭載し、12A-Tは用意されなかった。この”最終型”のRX-7では、A/Tが4速になったほか、14インチホイールの標準化、車速感応型パワーステアリング、4輪ベンチレーテッド・ディスクの採用、さらには駆動系の強化などが施されている。
さて、セル一発で粛々と安定したアイドリングを始める12A-Tユニットは、走り出してもじつにスムーズなのに驚かされた。コクコクと小気味よくきまるシフトレバーを操りながら、スロットルを開けるとすでに2000r.p.m.手前から過給がかかり始めるのが体験でき、余裕を持ってドライブできる。確かにRX-7のトライは、ここに結実したのだと実感。そして、この成果がなければ、次に続くロータリースポーツの歩みもなかったのではないかと思えたのである。
RX-7はロードスターよりも10年以上前にリトラクタブルヘッドライトを採用し、歴代モデルの個性となった。初期型はバンパーサイドにポルシェの930モデルのような”蛇腹”を備えていたが、1980年によりスマートなボディ一体のエアダム付ウレタン製バンパーを採用している。ドアミラーは1983年追加のターボモデルから装着。5.5J×14インチアルミホイールもターボ追加時の仕様変更で設定。取り外し可能なサンルーフは1979年から用意。開口部は59×84cmと広大だ。
足まわりの変更も順次盛り込まれたが、RX-7ターボはダイヤルをクリックしてアジャストできる8ステップ・バリアブル・ダンパー(手動調整式可変ダンパー)を標準装備。取材車両はこれも当時のまま! フロントシートはヒップポジションが地上から40cm程度ととても低く、ロータリー車ならではの低重心をそんなところからも感じとれる。後席は座面の奥行きがミニマムで、大人が乗るのはかなり厳しい。ベロアと合成レザーによる表皮はいまでもグッドコンディションを保っていた。さらに助手席のフロアマット(ちなみに純正品だった!)をめくると、バー状の純正フットレストが現れた。こんな装備からも、本格スポーツカーを目指していた心意気が感じ取れる。
SPECIFICATION
1984 MAZDA SAVANNA (SA22C型)
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みんなのコメント
前半はWikipediaで調べたのか?
後半の実車の情報だけでいい。
それにしても、街中で初代セブンを初めて見たとき、登校中の小中学生が驚きと憧れの声を漏らしていました。私もその中の一人ですが。