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BMW最新のX1系列をICEとBEVで乗り比べ。プレミアムコンパクトSUVに求められているのは、どんな才能なのか

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BMW最新のX1系列をICEとBEVで乗り比べ。プレミアムコンパクトSUVに求められているのは、どんな才能なのか

BMWのXシリーズの人気のコンパクトSUVがフルモデルチェンジした。そして、そのX1に新たに電動化モデルのiX1もラインナップに加わった。ガソリンエンジン車と電気自動車、その似て非なるモデルの違いとは。(Motor Magazine2023年7月号より)

手ごろなサイズのX1に新たにBEVをラインナップ
いまだ世界のマーケットでの衰えを知らない好評ぶりに加え、電動化時代に駆動用バッテリーのためのスペースを確保しやすいといった、特有の都合の良さなどもあって、「乗り手」側にも「作り手」側にも好まれることでその人気に陰りが見えないのがSUVの世界だ。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

これまでは、この種のモデルには無縁と思えた「スポーツカーメーカー」までを含め、さまざまなブランドが続々とそのバリエーションを拡充している。その中にあって、当然のようにその潮流に身を置くドイツ発のブランドのひとつがBMWだ。

ただし、ダイナミックな走りのキャラクターを強く前面に押し出すこのブランドの場合、SUVを「SAV」(Sport Activity Vehicle)もしくは「SAC」(Sport Activity coupe)と読み換えて独自のカテゴライズとして紹介することを知る人も多いはず。

いずれにしてもBMWではこのポジションにラインナップされるモデルの名称を、「X」シリーズとして展開している。現在、日本への導入予定モデルも含め、モデルを揃えるまでになる。

というわけで、そのネーミングからもそのラインナップのエントリーに位置することが明らかな『X1』シリーズ。誕生以来2度のフルモデルチェンジがされ、今回試乗したのは2022年秋に発表され、23年2月には日本での販売もスタートした、09年誕生の初代から数えて3代目にあたるX1の最新のモデルである。

FRレイアウトを採用することをひとつの特徴としてきたBMWのクルマでありながら、それをMINIシリーズ由来のFFレイアウトベースの構造へと置き換えたことで大きな話題を振り撒いたのが15年に登場した2代目のX1シリーズ。

3代目となる新型X11ももちろんそれを踏襲し、日本に導入されるモデルはすべて「xドライブ」を謳う4WDシャシの持ち主でありながら、そのベースは、パワートレーンを横置きとしたFFレイアウトということになる。

キドニーグリルの「大きさ」がひときわ目を引く
昨今、モデルチェンジのたびにボディのサイズが拡大されるのは世界的な流れになっているが、新しいX1シリーズもその動きには抗えなかった。

4500×1835×1625mmというボディのスリーサイズは、従来型比で50mmほど長く、20mm強幅広でほど40mm高いという関係。ホイールベースも伸びて2690mmとなった。それでも、日本の環境とはとても相容れないと思える大型の輸入SUVも少なくない中で、相対的には日本との親和性の高い手頃なサイズ観であるのは新しいX1シリーズの見どころのひとつとして間違いないだろう。

そしてもうひとつのトピックとして、歴代モデルにはなかった今度のX1シリーズならではの特徴が、ピュアEVバージョンが設定されたということである。

このブランドのネーミングルールに従って、車名の頭にピュアなEVVであることを示す「i」の記号が加えられた『iX1』がそれだ。こうして、日本に導入される新型X1シリーズは現在のところ、2Lのターボ付き4気筒ガソリンエンジンを7速DCTを介して4WDシャシと組み合わせたモデルと、そうした純エンジン仕様と共通する基本骨格を採用しながら、容量66.6kWhの駆動用バッテリーを搭載し、WLTCモードでの一充電走行距離が465kmとアナウンスされるピュアEV仕様で構成されている。

新型のスタイリングは、基本的には従来型のイメージを踏襲している印象。そうした中で目を引くポイントは、昨今登場するBMW車の傾向から予想ができたと言うべきか、やはりこのブランドならではの「キドニーグリル」が明確にその大きさを増している点と言えるかも知れない。

とはいえ、そもそも高さ方向にボリューム感の大きいSUVらしいフロントマスクということもあってか、新しい顔つきの印象は最新の4シリーズや7シリーズを初見した時のような「ギョッ」とするような印象を抱くほどではなかったというのもまた事実。

一方、そうしたエクステリアに比べればインテリアはダッシュボードまわりを中心に雰囲気がより大きく刷新された。ドライバー正面のクラスター内に置かれていたメーターは、バイザーレスでセンターディスプレイとシームレスに繋がったワイドな画面の中に表示されることとなり、コンソール上にレイアウトされて長年親しまれてきた大きなダイヤルとその周囲のプッシュスイッチから構成される「ドライブ」もその姿を大きく変えるなど、とくにインフォテインメントの項目が大きな進化を遂げていることを改めて教えられることになった。

スモールモデルながら不満のない動力性能
Xモデルラインナップの末っ子とはいえ、4WDシャシを採用することもあって車両重量は1.6トン超とそれなりの重さを持つ。それでも、さまざまなシーンで動力性能に不満を抱くことは皆無だった。トランスミッションにDCTを採用しながらも微低速シーンでの挙動の滑らかさにも問題は感じられず、前述の「大き過ぎないサイズ」もあって街乗りシーンでも持て余してしまう感覚を抱くことはなかった。とくに動力性能の高さが謳われるモデルではないものの、この点に不満を抱くユーザーはそうは存在しないだろう。

一方、フットワークの印象は良くも悪くもBMW車的な仕上がりを意識させられるものだった。走り始めてなるほどこのブランドのクルマらしいな、とまず思えたのは、比較的背の高いモデルでありながらもコーナリング時のロール感が少なく、ステアリングホイール操作に対する遅れも気にならないなど総じてキビキビとした身のこなしである。

率直なところこの点でFRレイアウトをベースにしたモデルに対するビハインドを連想させられることはなく、とくにこうしたキャビンやラゲッジスペースでの効率の高さが重視されるキャラクターの場合には、FFベースのパッケージングを選択することに対する合理性の高さは否定のしようがないと思えることにもなった。

そうした反面でこちらもなるほどFFレイアウトベースの一連のBMW車らしいと思えたのは、ストローク感が少なく全般的にチョッピーで、率直なところ「しなやか」というフレーズは使いにくいと感じられたその乗り味。

より端的に言えば、そうしたテイストには「ゴーカートフィーリング」を標榜するMINIシリーズがその「遠縁」にあたるということを改めて彷彿とさせられることにもなった。このあたりは、まさに好みが大きく分かれる部分でもあるだろう。

一級のスポーツカー並みの加速力を誇るiX1
そんな『i』から、表記からはこちらの方がヒエラルキーの上位にあることを連想させられる『30』という数字が振られたiX1に乗り換えると、当然ながらまず印象的なのは「静かでスムーズ」というEV全般に共通する動力性能のキャラクター。

さらに予想を超えていたのはその絶対的な加速力の高さで、実は0→100km/h加速タイムは5秒台と抵抗なく「一級スポーツカー並」と表現することのできるポテンシャルを備えているというのだからそれもそのはず。

加えれば、一見回生力の調整用かと思われたステアリングホイール左側にレイアウトされたパドルを引くと、秒間のカウントダウン付きでブーストモードが選択される点も見どころ。

実際、それを引くと一見のスタイリングには不釣り合いと思えるほどの「準爆速」とも表現をしたくなるすこぶる強力な加速力が、前後アクスルそれぞれに備えられた2基のモーターから最高出力と最大トルクが200kWと494Nmというスペックで発揮されるようになるのである。

そんな強靭な動力性能を実現させながらも、同時にこのクラスのSUVらしいユーティリティ性はしっかり確保されている。後席使用時と後席折りたたみ時のラゲッジルームの容量は490Lと1495Lというデータで、さすがにX1の540Lと1600Lという数値には差を付けられてこそいるものの、それでもこのクラスのモデルとしての競争力は十分にありそうだ。

iX1ではより強調されたBMWらしい軽快な走り
一方、iX1には標準仕様より20mmものローダウンが図られる「アダプティブMサスペンション」が標準で採用されることもあって、前述した「BMW車らしいフットワークのテイスト」はより強調されているようにも感じられた。

すなわち、X1に対して400kg近い重量のハンディキャップは抱えながらも、自在で俊敏なハンドリングの感覚はしっかりキープされているということ。

ただし、しなやかな感触やクルージング時のフラット感に欠けるという印象もやはり同様で、リラックスした走りのテイストを味わいたいユーザーには、好適とは言い難いセッティングではあるかも知れない。

実は、そんな新しいX1シリーズはヨーロッパの市場に向けにはすでにディーゼルエンジン搭載モデルや2輪駆動モデル、さらにガソリンエンジンをシステムに加えたプラグインハイブリッドなど多彩なバージョンもローンチされていて、日本よりも遥かに幅広い選択肢が用意されている。

しかし、今のところそれらが日本でも選べるようになるのか否かといったアナウンスは日本のインポーターからはまだ聞かされていない。(編集部註:2023年5月26日、BMWジャパンはプレミアム スモールコンパクト SAVのX1に、ディーゼル+マイルドハイブリッドを搭載した「X1 xドライブ 20d」を追加設定。デリバリーは、2023年6月からを予定)

けれども、こうしたモデルのキャラクターとのマッチングを想定すると、少なくとも高いクルージング能力と燃費性能が期待できるディーゼルエンジンモデルは、その導入を強く待望したくなるところでもある。

日本国内での大出力充電器のインフラ整備が遅れ、またテスラやポルシェ/アウディ/フォルクスワーゲンが進めるようなブランド独自の充電網拡充のプレミアムチャージングアライアンスのような話題も耳に届くことのない現状においては、やはりより強く待ち望まれているのはプラグイン電動化モデルよりもすでに従来型に用意されていたディーゼルモデルと考えられる。

激戦のSUV市場へ新たに加わったBEVのプレミアムスモールコンパクトモデルのiX1は、このクラスの主力モデルとなることができるのだろうか。(文: 河村康彦/写真:井上雅行)

BMW iX1 xDrive30 M Sport主要諸元
●全長×全幅×全高:4500×1835×1620mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:2030kg
●モーター最高出力:前140kW(190ps)/8000rpm、後140kW(190ps)/8000rpm
●モーター最大トルク:前247Nm/0-4900rpm、後247Nm/0-4900rpm
●バッテリー総電力量:66.5kWh
●WLTCモードEV航続距離:465km
●トランスミッション:ー
●駆動方式: 4WD
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):668万円

BMW X1 xDrive20 xLine主要諸元
●全長×全幅×全高:4500×1835×1645mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:直4DOHC
●総排気量:1998cc
●最高出力:150kW(204ps)/5000rpm
●最大トルク:300Nm/1450-4500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・54L
●WLTCモード燃費:12.9km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):556万円

[ アルバム : BMW iX1× X1 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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