スポーツモデルは走りに特化しているため、乗り心地や実用性、そしてスパルタンなイメージから、なかなか触手を伸ばせないユーザーも多いだろう。しかし、非スポーツモデル系の“普通の車”でも走りを楽しめるモデルは多い。むしろ、そんな車にこそ常識的なペースで公道を走る際の楽しさがあったり、スポーツモデルとは違った個性を味わえるという魅力もある。なかでも、無理なく買える非スポーツモデルの優良車にスポットを当ててみたい。
文:永田恵一/写真:編集部
流行りの超高額SUVに無理やり物申したい!!【謎の江戸っ子オヤジ、吠える!】
素のグレードも楽しい日欧コンパクト
■スズキ スイフト (159万4080円/RS)
スイフト RS/エンジン:1.2L直4DOHC、最高出力:91ps/6000rpm、最大トルク:12.0kgm/4400rpm
スイフトは、欧州でも販売される世界戦略車なのもあり、2004年に軽乗用車ベースではない純粋なコンパクトカーになって以来、3世代に渡って「乗って楽しい普通のコンパクトカー日本代表」の定番だ。
現行モデルも動力性能や特にハンドリングがシャープであるなどの刺激こそないものの、ザッと900kgという軽さを生かした「スイフト」という車名(=軽快、快速の意味)に相応しい俊敏な動きや、ハンドリングをはじめ全体的に操作通りにクルマが動いてくれ、乗り心地も良好と、乗っていて楽しく、自分のモノとして長期間乗っても飽きることがなさそうなのもいい。
買うなら標準系に対し若干高いが、サスペンションの動きが上質でスイフトの魅力が一層際立つのに加え、グリルもカッコいいRS系を勧める。
■ルノー トゥインゴ(177万円/ZEN)
トゥインゴ ZEN/エンジン:1L直3DOHC、最高出力:71ps/6000rpm、最大トルク:9.3kgm/2850rpm
トゥインゴはターボ車の「GT」はともかくとして、NAエンジン車だと動力性能は軽のターボ車に届かない。
インテリアなどクオリティが高いわけでもなければ、キャビンやラゲッジスペースが広いわけでもないと、「いいクルマですか?」と言われたら、答えは即座に「NO」である。
しかし特にNAエンジン車であれば遅さを逆手に取った少ないパワーを使い切れるというかけがえのない楽しさがある。
さらに、トラクションとブレーキ性能の高さや、直進安定性は今一つでハンドルを通して感じる接地感も薄い。
その代わりに前に自然に荷重が掛かる下り坂では安心感が増すなどのRRの個性を危険なく、NAエンジン車ならハイエンドの軽乗用車に近い177万円で味わえるというのはトゥインゴだけの魅力だ。
非スポーツ系でも操る楽しさ光る2台
■BMW 1シリーズ(364万円/118iスタイル)
118iスタイル/エンジン:1.5L直3DOHCターボ、最高出力:136ps/4400rpm、最大トルク:22.4kgm/1250-4300rpm
モデル末期(2011年登場)のため話題になることも少ない1シリーズだが、次期モデルはFF化が確実となっているだけに、このサイズで実用性も備えたFR車やBMWが欲しい人ならばぜひ自分のモノにしたい車ともいえる。
1シリーズも、もちろん乗って楽しい車で、その楽しさの多くはFR(フロントエンジン・リア駆動)であるためだ。FRといっても普通の1シリーズはトヨタ86&スバルBRZのようにサーキットやクローズドコースでドリフトを楽しめるという車ではない。
しかし、BMWの企業スローガンの「駆け抜ける歓び」を実感する軽快で自分のイメージ通りに走ってくれる車の動きや、FRらしいスムースでクリアなステアリングフィールは上質感や高級感を感じさせてくれる。
また、8速ATを使うトランスミッションも変速がスムースかつシフトアップ、ダウンともに素早い。エンジンも118i系の1.5L3気筒ターボに特筆すべき点はないものの、118d系の2Lディーゼルターボならパワフルで低燃費、おまけに軽油も安いと三拍子が揃う。
そして、車そのもの以上に魅力的なのがコストパフォーマンスで、登録だけした未使用車(いわゆる新古車)を探すと、新車価格364万円の118iスタイルが210万円程度から流通しているのだ!
モデル末期ゆえ、新車の値引きも大きいことも予想され(リセールバリューは悪い可能性もあるが、安く買っておけば帳消しだろう)、欲しいなら今のうちに買っておきたい1台だ。
それだけに私事であるが、118iの未使用車は筆者の頭の中から離れない。
■マツダ アクセラ&アテンザ(308万8800円/22XD Lパッケージ)
アクセラ 22XD Lパッケージ/エンジン:2.2L直4DOHCディーゼルターボ、最高出力:175ps/4500rpm、最大トルク:42.8kgm/2000rpm
登場から時間が経っているが、MT限定でアクセラ&アテンザディーゼル車も運転して楽しい普通の車上位に入る。
この2台の楽しさはズバリ「MTを駆使して自分の手でエンジンをコントロールすること」だ。というのもマツダの2.2Lディーゼルターボは、現状2台に搭載される大改良前のものでも、パワフルなだけでなくレッドゾーンまでガソリンエンジンのように回り、低速トルクも図太いという豊かな個性を持つ。
そのエンジンにMTで乗れば自分の裁量でいろいろな楽しみ方が、いつでもできるというわけで、普通に乗っているだけで本当に楽しくて仕方ない。
さらにいろいろな楽しみ方の中にはエコランも含まれ、ディーゼルエンジンはMTだとATより燃費を稼ぎやすいという面もあるため、そんな楽しみ方ができるというのもたまらない。 個人的には車のサイズや価格にもよるが、日本のエコカー代表となっているハイブリッドカーに対抗できるナンバー1は「エコで楽しい」ディーゼル+MTと思っているくらいだ。
◆ ◆ ◆
「素性が良い」という言葉がピタリはまるスイフト RS。トゥインゴは非力さがむしろ楽しいフレンチベーシックで、BMW 1シリーズはFRならではのハンドリングを持ち、アクセラ&アテンザはディーゼルならではの力強さをMTを駆使して操る楽しさがある。
個性のベクトルは違えど、どれも日常のワンシーンからドライバーを楽しませる魅力を持つ1台だ。
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