2014年に生誕30周年を記念してランドクルーザー70(以下ランクル70)が期間限定で販売された。約1年という短い期間ながら、マニアだけでなく注目度は絶大で、かなりの台数が出た。
販売を終了して5年が経過するが、現在もランクル70、特にクリーンディーゼルエンジンを搭載したモデルを日本でも売ってほしいという声をよく耳にする。
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トヨタがランクル70を日本で再販する可能性について、渡辺陽一郎氏が考察する。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、FIAT CHRYSLER AUTOMOBILES
【画像ギャラリー】世界中で長く愛され続けているランドクルーザー70 日本で再販された30周年記念モデルをじっくりと見る!!
日本で悪路を重視したオフロードSUVが大人気
現行ランドクルーザー(通称200)は2007年デビューだが、2015年のマイチェンで魅力アップしてプラドと合わせて月販2100台をマークするなど依然人気
最近はSUVが人気のカテゴリーとされるが、注目車や売れ筋の車種を見ると、微妙な変化も生じている。車種の数はハリアーやC-HRといった都会的なSUVが圧倒的に多いが、話題の中心は、RAV4やライズなどオフロード風味を併せ持つモデルに移ってきた。
RAV4やライズもプラットフォームは乗用車と共通で、前輪駆動ベースのシティ派SUVに位置付けられる。それでもフロントマスクなどの外観は、ランドクルーザーのような後輪駆動ベースのオフロードSUVに似ている。
そして本物のオフロードSUVも人気が根強い。ランドクルーザー+ランドクルーザープラドは、2019年度(2019年4月から2020年3月)に1カ月平均で2100台を登録した。
アメリカ車が苦戦するなか、ジープが大健闘。特に本格オフロードSUVのラングラーは日本マーケットで快進撃を続けている
定番のシティ派SUVとされるエクストレイルの2400台、CX-5の2300台に迫る売れ行きだ。ランドクルーザーは発売から13年、プラドも11年を経過しながら売れ行きは堅調に推移している。
輸入車でも後輪駆動ベースのオフロードSUVが注目され、ジープブランドのラングラーが好調に売れている。前輪駆動ベースのシティ派SUVが大量に普及した結果、悪路を重視したオフロードSUVも関心を持たれるようになった。
ランクル70シリーズの寿命が長い理由
ランクル70シリーズは1984年に40シリーズの後継としてデビュー。デビュー当初は3ドアのみで、その後5ドアも追加され現在に至る
その意味で改めて見直したいのが、悪路走破力を徹底的に高めたランドクルーザー70シリーズだ。生粋のオフロードSUVで、40シリーズの後継車種として1984年に発売された。
この後にランドクルーザーは、80シリーズ、100シリーズ、200シリーズという具合にフルモデルチェンジを受けているが、70シリーズは一貫して生産を続けている。
今でも南アフリカなどでは、バンボディのランドクルーザー76、ピックアップトラック(ダブルキャブ)のランドクルーザー79が販売されている。細かな改良を受けているが、基本設計は36年前から変わらない。
70シリーズの寿命が長い理由は、切実な需要があるためだ。開発者は「70シリーズは、必ず帰ってこられるクルマ」だという。
70シリーズは1984年のデビューから基本設計は変わらないが、度重なる改良が施されていて、南アフリカでは76は現役選手として大活躍
食料を積み、条件のきわめて悪いルートを走る。この時に途中で長期間にわたり立ち往生すれば、車両の乗員と食料を待っている人達の生命が脅かされてしまう。
従って70シリーズのユーザーは、クルマが変わることを好まない。70シリーズがフルモデルチェンジを行って快適性や舗装路の安全性を大幅に高めても、今まで走破できた悪路のひとつでも通行不可能になれば、甚大な被害を被るからだ。
本物が持つもの凄いオーラ
また過酷な地域で使われるので、点検や修理を行うトヨタのサービス網も整っていない。複数の70シリーズを所有するユーザーが、修理機材と部品をストックして、自分達で点検や修理を行う場合もある。
このような用途でも、車両が変わり、従来の修理方法や部品が通用しなくなったら困るわけだ。
ランクル70は質実剛健なSUVの典型で、走破性の高さ=強靭さが評価されて、現在でも高いオフロード性能を持っている
ちなみに第二次世界大戦に使われたジープでは、部品の互換性が重視された。例えば戦場で5台のジープが破損して走行不能になった場合、使えるパーツを集めて、2台の走行できる車両を組み立てる必要が生じるからだ。
ランドクルーザー70シリーズの開発者は「70にも同じようなことが求められている」という。
立ち往生が生命に影響する場面は、日本でも皆無ではないが、一般的なSUVの用途には含まれないだろう。その意味でランドクルーザー70シリーズは特殊なクルマだが、本物の持つオーラというか、職人的な説得力は物凄い。
中古車マーケットでも高値安定
そこでランドクルーザー70シリーズは、生誕30周年を記念して、2014年8月に「2015年6月30日の生産分まで」という期間限定で発売された。
ボディはバンとピックアップ(ダブルキャブ)で、いずれも1ナンバー車であった。エンジンはV型6気筒4Lのガソリンを搭載する。ピックアップは、日本では売られたことのないボディバリエーションであった。
ランドクルーザー70シリーズが2015年6月生産分で国内販売を終える理由は、発売時に保安基準改正に抵触するためと説明された。それでも販売を再開した70シリーズは、予想外の人気を得た。発売直後には3600台を受注している。
今でも中古車価格は高く、再販売された2014年式/2015年式は、290万~330万円で販売されている。
2014年に発売された時の新車価格は、バンが360万円、ピックアップは350万円だった。発売時点の消費税率が8%だったことを差し引いても、5~6年落ちの中古車価格としては際立って高価格だ。
2014年から約1年間の期間限定で販売されたランクル70バン。ボディサイズは全長4810×全幅1870×全高1920mmで新車価格は360万円だった
ランクル70ピックアップは日本で販売されたことがなかったが、30周年記念車として初めて販売された。新車価格は350万円だった
2014~2015年式ランクル70の中古車情報
再販すれば確実に売れるがその可能性は低い
ランドクルーザー70シリーズに関する今後の動向をトヨタ店に尋ねると、
「Lサイズのランドクルーザーは、2021年にフルモデルチェンジするが、70シリーズを復活させる話は聞いていない。一度復活した時も、30周年記念だったためで、いわばイベントのひとつだった」
というコメントが返ってきた。そして以下のように続けた。
フロントマスクはマイチェンにより洗練されたが、真横から見ると昔ながらも武骨さが残っている。ベンツGクラスに通じるヘリテイジを感じさせる
「70シリーズの人気は、今でもきわめて高い。再び販売しないのか、という問い合わせも受ける。今では以前の復活から5~6年を経過したので、この時に購入された70シリーズのお客様が、改めて新車で手に入れたいと考えている事情もある。今後再び70シリーズを販売すれば、好調に売れるだろう」
このコメントからも、70シリーズが日本で復活する可能性は、客観的に考えると低い。
現在南アフリカで売られているランドクルーザー76/79の内容を見ても、VSC(横滑り防止装置)は採用されていない。
改めて日本で販売するには、歩行者保護要件の対応なども含めて、現在の保安基準に適合させたり、先進の安全装備も装着せねばならない。
基本設計が古いランクル70の泣きどころは安全装備。運転席&助手席エアバッグは装着されているが、横滑り防止装置も装着されていない
今後SUVが増えると必要な選択肢となる
しかし70シリーズには注目される性能もあり、現行型はV型8気筒4.5Lのディーゼルエンジン(1VD-FTV型)を搭載している。
最高出力は205ps(3400rpm)、最大トルクは43.8kgm(1200~3200rpm)だから、低回転域の駆動力は抜群に高い。
副変速機をローレンジにシフトして、5速MTは2速に入れ、1600~2000rpmを維持しながらデコボコの激しい悪路を登っていく。考えただけでもワクワクするようなオフロード走行が期待される。
ランクル70はオフロード性能に特化していてガレ場、泥濘路、低μ路など路面状況を問わず優れた走破性、登坂能力を持っていて今でも健在
ランドクルーザー70シリーズは、今の日本の使用環境にはまったく合わないが、今後SUVがさらに増えると、必要な選択肢にもなるだろう。
乗用車のプラットフォームを使ったシティ派が増えると、先に述べたRAV4やライズのような悪路向けの雰囲気が好まれ、硬派の70シリーズにも目が向くからだ。
また以前からSUVに乗り続けているユーザーは、流行に乗って購入したと思われたくない。SUVが街中に溢れると、普通のユーザーでは手に余るようなSUVに乗りたい気分にもなるだろう。
そして何より「必ず帰ってこられるクルマ」というコンセプトは、自動車の本質を突いている。このコンセプトを備えるだけでも、ランドクルーザー70シリーズには、所有する価値があると思う。
ランクルシリーズのフラッグシップの現行200系は、2021年春から夏にかけてフルモデルチェンジすると予想している
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みんなのコメント
オフロード行こうなんて人はそれほど多くないでしょう。
たいていは街乗りオンリーのカッコだけ
雪が降れば分不相応に粋がってスッ転んでる