昨年、ブランニューモデルとして登場したX7のアルピナモデルが、予想を上回る早いタイミングで我々の前に現れた。それを可能にした理由は本文に譲るが、それにしてもどうだ、この圧倒的な存在感ときたら。しかも、走らせた瞬間、アルピナの底力が全身に染み渡る。
守備範囲の広さと懐の深さは驚異的
実は 2016年、アルピナのアンドレアス・ボーフェンジーペン社長は、すでに「アルピナXB7」の商標登録を済ませていた。当時ベースとなるX7の存在はBMWの社内ですら知る人は少なく、2017年の秋に開催されたフランクフルト・ショーで初めてX7コンセプトiパフォーマンスとしてプロトタイプが公式発表。つまり、アルピナはこのXB7の開発をBMWのX7とほぼ同時に進めていたことになる。両社がいかに密接な関係にあるかが知れるエピソードだ。
晴れ渡った青空の下に登場したアルピナブルーのXB7は、威厳に満ちた「城」と形容するに相応しい存在感を放っていた。アルピナのロゴを中央に配したラジエターグリル下のエアインテークとリップスポイラー。サイドには23インチの鍛造ホイール&タイヤと、視覚的な安定感を与えるサイドシル。そして、リアエンドはディフューザーの左右からオーバルのテールパイプが2本ずつ並ぶ。
ドアを開けると、アルピナ風のおもてなしが迎え入れてくれる。オフホワイトの上質なラヴァリナレザー張りのシートやトリム、ステアリングにはグリーンとブルーのステッチが入り、その背後にはユーザーの50%が選択するという人気アイテム、無垢のアルミ製シフトパドルが控える。センターコンソールにはシリアルプレートのほかに、クリスタル製iドライブコントローラーにはアルピナエンブレムがレーザー刻印されるなど、実に細部にまで行き届いたエクスクルーシブな仕上げとなる。
搭載する4.4L V8ツインターボはタービン径を54mmへ拡大、高効率なインタークーラーやアクラポヴィッチ製エキゾーストシステムの採用などにより、最高出力は621ps、最大トルクはなんと800Nmへとそれぞれ増強。結果として、およそ2.6トンのフルサイズSUVに0→100km/加速4.2秒、最高速度290km/hという驚異的なダイナミック性能をもたらしている。
この高出力化に対応するべくブレンボのスチール製ブレーキシステムを採用するが、オプションでもカーボンセラミック・コンポジット・ディスクを用意しないのは、コストバリューに加えて、セラミックは冬季の路面凍結防止用の塩によるダメージも考慮しなければならないからだ。アルピナ独自の哲学はここにもみられる。
さて、まずはドライブモードをコンフォートにセットしてオープンロードに繰り出す。驚かされるのは23インチという大径タイヤを履くにもかかわらず、まるで海上をクルージングするかのように快適な乗り心地を提供してくれることだ。しかも、コーナーの連続では自重2.7トン、高さ1.8mのサイズを忘れるような軽快なハンドリングさえ味わわせてくれる。さらにアウトバーンに入る直前、ドライブモードをスポーツへ切り替えると車高は最大で40mmローダウン。車両の無駄な動きを抑え込み、超高速走行時の車線変更も一切躊躇うことはない。
そのポテンシャルの高さは、その後のサーキット走行でも実証された。スポーツ+モードでは、まるでアスリートのような軽快な身のこなしをみせてくれたし、前述のスチールディスクも最後まで決して弱音を吐かなかった。目下、その守備範囲の広さと懐の深さにおいて、XB7の右に出るSUVはいないかも知れない。
【Specification】BMWアルピナXB7オールラッド
■車両本体価格(税込)=24,980,000円
■全長×全幅×全高=5151×2000×1797mm
■ホイールベース=3105mm
■トレッド=前1682、後1703mm
■車両重量=2655kg
■エンジン種類=V8DOHC32V+ツインターボ
■内径×行程=89.0×88.3mm
■総排気量=4395cc
■圧縮比=10.5
■最高出力=621ps(457kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2000-5000rpm
■燃料タンク容量=83L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前ダブルウィッシュボーン/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ=前後285/45R21(9.5J)
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みんなのコメント
「デカくて速い」やっぱベンベはこうでなくちゃ!
サイズ的には、趣味で使うレンジーのロング仕様と大差は無いから、乗り味次第。