■フルモデルチェンジの段階で「デザイン鮮度」が課題と指摘されていた
2019年10月18日にマイナーチェンジを実施するホンダ・フリード。その新しくなるモデルに触れる機会がありました。エンジンフード(ボンネット)、フロントグリル、フロントバンパーと顔周りを一新しています。クロスオーバーSUVテイストの「クロスター」を追加設定したこともニュースでしょう。
さて、フリードといえば、ホンダの登録車としてはもっとも売れている車種です。マイナーチェンジ直前となる2019年8月の販売台数は7,000台、これは前年同月比120%となっていますから、市場は十分に支持している状態です。直接のライバルといえるトヨタ・シエンタは8月に登録車セールスランキングのトップとなっていますから、このカテゴリーに伸び代があるのは間違いないところですが、それでも2016年9月に現行モデルへフルモデルチェンジをしてから3年近く経っても、これだけ支持されているのであれば、マイナーチェンジで標準車のフロントマスクを大きく変える必要はなかったようにも思えます。
それでも、フェイスリフトを敢行した理由な何でしょうか。
キーワードは「デザイン鮮度」です。直近、フリードの販売状況からすると大きく変える必要はないと思えますが、作り手には違う声が届ていたそうです。フリードの開発責任者として、現行モデルのフルモデルチェンジから今回のマイナーチェンジまで一貫して見ている田辺 正さんは次のように話します。
「フルモデルチェンジしたときから、デザインに新鮮味がないいという声が届いていました。フィットやヴェゼルと共通性のある顔で統一感を狙いましたが、フルモデルチェンジのタイミング(フィット、ヴェゼルとも2013年)が3年も違いました。ですから、フリードについてはフルモデルチェンジの段階で『デザイン鮮度』が落ちているという部分もあったのです」
だからこそ、今回のマイナーチェンジでは従来とは違うイメージの顔にする必要があったわけです。その新しいエクステリアの考え方について、次のように説明してくれました。
「キーワードは“凛”です。精悍で落ち着きのある表情を狙いました。芯の通った安心感あるカタマリで“信頼”価値を表現しています。シンプルでわかりやすいスタイリングになったと自負しています」
たしかに、アッパーグリルを小さくした新しい顔は、プレーンかつ信頼感を表現しているように感じます。バンパーに埋め込まれたロアグリルをワイドにすることで、車高を感じさせない踏ん張り感につながっているといえるでしょう。実質的には専用プラットフォームを採用しているフリードのハンドリングについてはかねてからスライドドア車としては高い評価を得ていますが、そうした走りのよさについても新しいフロントマスクは表現しているようです。
ちなみに、後ろ姿についてはハイマウントストップランプをクリアレンズからレッドに変更しているのが、ほぼ唯一の変更点。つまり、ほとんど変わっていないわけですが、新しいフロントマスクとの組み合わせでも前後バランスは崩れて見えないところには、デザイナーの苦心が感じられます。じつは、これだけ変わったフロントマスクですが、ヘッドライトはそのままだったりします。それを感じさえない意匠も見事です。ちなみにヘッドライトについては、多灯式のLEDヘッドライトなども検討したそうですが、シンプルでわかりやすい顔を考えるとヘッドライトユニットはそのままにしておくのがベストという結論になったのだそうです。
新グレード「クロスター」の影に隠れがちなフリードの標準車ですが、デザインの考え方としては半歩先を行っているという印象もあります。こうして「デザイン鮮度」をリフレッシュしたことで、ユーザーからどのように評価されるのでしょうか。
文・写真:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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みんなのコメント
フリードのデザインが
逆にフリードの鮮度を
大幅に落としました。