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中古のアウディR8 vs 新車のゴルフR 比較テスト 高級クォーツと機械式クロノ

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中古のアウディR8 vs 新車のゴルフR 比較テスト 高級クォーツと機械式クロノ

もくじ

ー 驚きの事実 万能のゴルフR
ー スペックはほぼ互角 シンプルさが心地よいモデル
ー 驚きのR8 もはや絶滅危惧種
ー 別格の存在感 その功績はいまも
ー 番外編1:中古のR8をご紹介
ー 番外編2:中古R8バイヤーズガイド
ー 2台のスペック

「Qカー」知ってる? 「羊の皮をかぶった狼」なクルマ21台 後編

驚きの事実 万能のゴルフR

定評ある高級ブランドの、それもV8ミドシップのスーパーカーが、新車のホットハッチとおなじ値段あるいは安くで買えるなんて。あまりに単純明快な謳い文句には、なにか裏があるはずだ。

でも、それが目の前の現実なのだ。有名なデザイン会社シーモアパウエルの設立者ディック・パウエルの所有するご覧のアウディR8は、程度のよさと走行距離の少なさから中古車価格としては4万ポンド(578万円)くらいはすると思われる。だが、ちょっと値引き交渉すれば3万ポンド(433万円)以下でもちゃんとした個体が手に入るのだ。

対するフォルクスワーゲン・ゴルフR 5ドア、今回用意したデュアルクラッチ式AT車の素の価格は3万3740ポンド(488万円)だ。もちろんこの個体のようにオプション装備をはずめばあっという間に価格はうなぎ上りになることはいうまでもない。

このテールにチタン製マフラーがのぞくクルマ、どう見てもフォルクスワーゲンなのに、なんとあとわずか325ポンド(4万7000円)で5万ポンド(722万円)の大台に乗ってしまうのだ。


だが今回乗ってみて、少なくともわたしにはこのゴルフRがいまだにホットハッチ軍団の中で光り輝いてみえる理由が改めてわかった。

ホンダ・シビック・タイプRよりも運転は楽だしルックスもずっと良い。おまけに、それらしく走らせたときの楽しさでもひけをとらないのだ。

新年早々やってくるメガーヌ・ルノー・スポールの激辛トロフィー版がどう太刀打ちしてくるか、じつに興味深い。

とりあえず今のところは、ゴルフにあらためて参ってしまっている。このクラスで類を見ないバランスのとれたパワーと全天候性能がもたらす冷徹なまでの高速移動手段という性格と、それがもたらす落ち着きだ。

内装にちょっと色気が足りないとか、見た目もふつうのゴルフに大径ホイールを履かせただけという意見もあるかもしれないが、そんなことはあまり気にならない。

この40年以上、時の最速のゴルフはいつもそうだったが、あらゆる状況で予想以上の走りを見せてくれるのだ。

スペックはほぼ互角 シンプルさが心地よいモデル

ホットハッチの中でこのゴルフをいち押しするのは、なにもわたしだけではない。日常の足として1台所有するパウエルも(「言ってくれたらわたしのを使ってもらったのに」ともいう)、惚れ込みぶりは誰にも負けない。

さて、R8のほうはちょっと話が違ってくる。今さら引っぱり出さないほうがよかったかもしれない。取りまく世の中の状況もすっかり変わってしまったし、10年前にあれほど高性能で、アウディがはじめてつくったミドシップにしては奇跡的なほど楽しかったクルマも、今となってはちょっと時代遅れに見えてしまうかもしれないからだ。

たしかに、紙の上ではもはやそう特別とはいえない。420psのパワーもそうだし、0-100km/h加速の4.6秒という数字も、いまやゴルフと互角なのだ。


また、この10年でR8がどこまで上級移行したかもよくわかる。後輪駆動の限定車RWSはべつにして、最低で12万6200ポンド(1823万円)という現行R8の価格は、2007年当時の7万6825ポンド(1110万円)のほとんど5万ポンド(723万円)増しなのだ。インフレのせい―ではない。

価格設定にあたってぶつけた相手が当時はポルシェ911カレラ4S、いまは911ターボになっただけのことだ。パワーもそう。現行モデルは低出力版でも540psあるのだ。

まあ、それはさしあたりさほど気にならないと思う。運転席のまわりにあるものすべて、簡素で快いのだ。しっかりとレバーで操作するサイドブレーキ、シリンダーに挿すエンジンキー、3つのペダル、アナログ式のメーター。ステアリング上のボタンも最小限だ。

文句の付けようのない運転姿勢、ゴルフなみの全方向の視界のよさもミドシップ離れしている。4.2ℓのV8は滑らかに目覚めるし、操作系も現代のアウディなどよりはるかになじみやすいから、走りだすのに何の手ほどきもいらない。

驚きのR8 もはや絶滅危惧種

右足をそれほど踏みこまないうちから、R8はわたしを打ちのめしてきた。不快なしぐさなどいっさい見せず、なるほど、以降のスーパーカーが右へ倣えしてきたのもうなづける。

発進させるのもエンジンの力、それも不朽の栄誉といえる、現行R8にもうけつがれる自然吸気の力だ。だが、滑らかさにかけては白眉といえるクロスプレーンV8エンジンも、もはや絶滅危惧種だ。

お次はギアボックスだが、これもただマニュアルなだけではない。操作感はもちろん、往時のフェラーリやランボルギーニのように露出したゲートも最高で、すばやいシフトがじつに楽しい。

とはいえ、いちばん目を丸くしたのはじつはサスペンションだった。R8の路面のいなし方がいかに巧みだったか、わたしも忘れてしまっていた。驚くべきことに、乗り心地は現代のスーパーカーはおろか、ゴルフすらはるかに上まわる。

路面の起伏に応じてボディもそれなりに上下はするが、突起で浮き上がったりくぼみで突き上げられることもない。あきらかにサーキットではなく公道指向のシャシー設定で、それはR8が年々強めている性格でもある。


それはともかく乗って楽しいのかという質問には、もちろんと答えられる。パウエルも最近スラクストン・サーキットで1日走りまわって楽しんできたそうだが、そのとおり自由自在に振り回せるのだ。

操縦性は寛大でバランスがとれているし、たんにコースをなぞるだけでも味わえる油圧式パワーステアリングの感触は、それ自体喜びといえるものだ。

おまけに、速さも現行モデルには多少ひけをとってもじゅうぶんだし、この芳醇なエンジンを8250rpmのリミット近くまで引っぱればなおさらだ。6000rpmをこえると雄たけびとしかいえない音も聴かせてくれる。

別格の存在感 その功績はいまも

移動速度だけをとってみればゴルフの勝ちかと思っていたが、今回走った道ではそうでもなかった。両者とも、カギとなるのはエンジンパワーやタイヤのグリップではなく、外的な要因だったのだ。

ゴルフのほうがすこし不安定に感じたのは、わずかに短いホイールベースよりもクイックなステアリングが主因だろうが、直線ではそんな弱点も気にならない。

ゴルフはトルクの絶対値こそR8に劣っても低回転から引きだせるし、R8はピークパワーで優るがしっかり回さないと発揮できない上、わずかに大きい車重で帳消しになる。ゴルフの融通無碍なターボエンジンはどの回転から踏んでもしっかり応えてくれるのだ。

もっとも、わたしの目にはR8は別格に映った。たしかにこのゴルフもクラス随一の最高の出来栄えを誇るが、それでも大量生産の実用車にはかわりない。

たとえるなら高級クォーツ腕時計みたいなもので、手づくりの精巧な機械式クロノグラフよりもたしかにより正しい時刻をつたえてくれるだろうが、いったん手首につけてしまえば気にもとまらなくなるたぐいのものだ。


それに、今回乗ってみてもうひとつわかったことがある。このゴルフだけでなくR8デビュー当時のライバルたちとの対比でも、R8のあらたな面が浮き彫りになったのだ。

かつてはもしこの稼業で成功したら何に乗ろうかと空想したとき、997世代の911や初期のアストン マーティンV8ヴァンテージをよく思い描いた。だが、R8などついぞ出たことはなかった。

宗旨替えしてもうR8しか見えなくなったというわけではない。スーパーカーがはじめてのメーカーがいちから作りあげたこの新顔が、それら名門の出とまったく対等の位置にまで浮上してきたということだ。それこそ、R8いちばんの成果ではないだろうか。

番外編1:中古のR8をご紹介

2007年式R8 Rトロニック

走行15万1000km、価格3万1000ポンド(448万円)


走行距離は多いが、エンジンはきちんと整備さえすれば40万kmでも問題ない。それよりもセミATのRトロニックが気になる。自動モードでのシフトの滑らかさはデュアルクラッチ式にはかなわない。

2008年式R8 マニュアル

走行5万1000km、価格4万2000ポンド(607万円)


低走行・記録完備・オプション多数といった出物の中古R8を探すなら、この辺りの価格が出発点だろう。この個体には、スポーツシート・高機能版ナビ・ブルートゥース接続可能なプレミアムサウンドシステムがついている。マニュアルなのもおすすめポイントだ。

2009年式R8 V10 マニュアル

走行8万9000km、価格4万8000ポンド(694万円)


V10のR8は5万ポンド(722万円)あたりから目につきはじめる。たしかにV10は速いし音も凄まじいものがあるが、V8の繊細な芳醇さは見る影もない。V8を買って、差額はとっておくのも賢明だろう。

番外編2:中古R8バイヤーズガイド

「R8の初期型はいまが買い時」とみるのは、ハロゲイトにある高性能アウディ車専門店、レッドライン・スペシャリスト・カーズのジョナソン・パーカーだ。

「いまは3万7000~8000ポンド(535~549万円)あたりの値段でも、とてもいいのが見つかります。ただ、Rトロニックはおすすめしませんね。クラッチの減りが速いのは気にしないひともいるかもしれませんが、シフトのたびにアクセルから足を離さないとスムーズにいかないですから、マニュアルのほうが無難です」


新車時は高額オプションだったRトロニックのクルマは売れにくくなるとみられ、それは買取価格の低下にもあらわれる。ほかの点については、距離をかさねたクルマでも悲惨な話を聞いたことはないという。

とはいえ、基本部分がアルミ製でも完全にサビと無縁なわけではないので、飛び石などの放置、またはいい加減な修理によるボンネット先端の腐食には注意しよう。

また、大きなリアガラスはエンジンがよく見えて結構なのだが、青空駐車では内側に生じた結露がエンジンに滴り、見えない場所で腐食をおこすことがある。

2台のスペック

フォルクスワーゲン・ゴルフR 5ドアDSGのスペック

■価格 3万3740ポンド(488万円)
■全長×全幅×全高 
■最高速度 250km/h
0-100km/h加速 4.6秒
■燃費 14.3km/ℓ(複合)
■CO2排出量 163g/km
■乾燥重量 1505kg
■パワートレイン 1984cc 4気筒ターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 310ps/5500rpm
■最大トルク 40.8kg-m/2000rpm
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ・オートマティック


アウディR8のスペック

■価格 3万~5万ポンド(433~722万円)
■全長×全幅×全高 
■最高速度 300km/h
0-100km/h加速 4.6秒
■燃費 6.8km/ℓ(複合)
■CO2排出量 349g/km
■乾燥重量 1560kg
■パワートレイン 4163cc V8
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 420ps/7800rpm
■最大トルク 43.8kg-m/4500rpm
■ギアボックス 6段マニュアル

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