センタータンクレイアウトの広々室内はライバルを圧倒
思い返すと2000年代は、コンパクトカーに勢いがあった時代でした。いまはそれが軽自動車に取って代わられた感じがしますが、あの頃はまだまだ黄色いナンバープレートに抵抗感がある方が多く、コンパクトカーのほうが断然力が強かった。街中をパッと見渡せば、フィットは必ず1台は目に入る。それくらいの存在感だったと思います。
【最新モデル試乗】話題はRSの復活だけではない! パワフルに上質に変身したホンダ・フィットの高い完成度
そんな状態ですから、当然のごとくライバルも各社からリリースされておりましたけれど、中でもフィットがアドバンテージを持っていたのは、パッケージング力の高さでした。
全幅は5ナンバーサイズギリギリの1695mmとし、さらにはセンタータンクレイアウトという飛び道具を手に入れて、室内の広さは現行モデルに至っても他車を引き離しているくらいですからね。デビュー当時はブッチギリでした(笑)。
そして、現行モデルも引き続き、このセンタータンクレイアウトのおかげで、後部座席のシートアレンジは他車にはないバリエーションを展開。これもフィットの大きな特徴です。ワンアクションで背もたれをダイブダウンすると、それこそ一人暮らしの引っ越しならできてしまうんじゃないか? と思えるくらいの広いスペースが作り出せるのはもちろん、後部座席の座面を跳ね上げるチップアップ機構で、後部座席の足元に背の高い荷物が積めるというのは、他メーカーのクルマではできない芸当。
たいていのクルマは、後部座席の下に燃料タンクがあるので、こうはいきませんからね。とはいえフィットは、床下に燃料タンクがあるにもかかわらず、これだけの低床フラットフロアを実現しているというのは、本当にお見事だと思います。
そして現行モデルは、初代から徐々にワイルドなたくましいデザインの方向に向かっていたのをガラリと変えて、優しくシンプルになったのが大きな話題を呼びました。しかも、いわゆる装備違いのグレードというのではなく、エクステリアもインテリアも含めたデザイン違いで、最初から5種類もラインアップしてきたのに驚かされたんですよね。
ベーシック、ホーム、リュクス。そして登場時はネスというフィットネスをモチーフにしたモデルがあったのですが、マイナーチェンジでスポーツモデルのRSに立場を譲ります。RSはさすがにMTモデルこそありませんでしたが、ホンダさんのことですから、そのうち投入してきたりして……なんて、心待ちにしている方もいらっしゃるかもしれません。
そして、今回ご紹介したクロスター。これはいま流行りのクロスオーバーSUVモデルなわけですが、こういったところが抜かりないんですよね。そう、フィットのヒットの真相は、HVが……とかいうよりも、自分だけの1台が見つけられる、そんなところなのだと思います。だって毎日乗る相棒ですから。
フィット「ヒットの真相」
1)センタータンクレイアウト構造が可能にした低床フラットフロア。ラゲッジルームは広くて使いやすく、レイアウトは多彩
2)内外装のデザインでグレードを分類。SUVテイストのクロスターは3ナンバーボディ。スポーティなRSグレードが2022年に復活
3)2モーターハイブリッドのe:HEVと、純ガソリン仕様をラインアップ。安全運転を支援するホンダ・センシング標準装備
■主要諸元
グレード=e:HEVクロスター
価格=262万200円
全長×全幅×全高=4095×1725×1570mm
ホイールベース=2530mm
トレッド=フロント:1495×リア:1485mm
車重=1280kg
エンジン(レギュラー仕様)=1496cc直4DOHC16V
型式=LEB-H5
燃料タンク容量=40リッター
最高出力=78kW(106ps)/6000~6400rpm
最大トルク=127Nm(13.0kgm)/4500~5000rpm
モーター最高出力=90kW(123ps)/3500~8000
モーター最大トルク=253Nm(25.8kgm)/0~3000
WLTCモード燃費=24.2km/リッター
(WLTC市街地/郊外/高速道路:23.8/25.2/23.8)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ド・ディオン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=185/60R16+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.0m
●クロスターは、フィット・シリーズの中で唯一の3ナンバーボディを持つクロスオーバー風モデルで、ルーフレールを標準で装備する。最低地上高160mmという点も他グレード(130mm)と異なる。エクステリアはフロントグリルや前後バンパーガーニッシュ、アルミホイールが専用デザインになっている。クロスターのシート地はプライムスムース×撥水ファブリックを採用。フィットの4WD仕様はPTCヒーター(自己温度制御システム)が標準である
たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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みんなのコメント
むしろ失敗作だろ。
旧型は結構走ってるが。