デリバリーの遅れていたテスラ モデル3。デモカーが遂に日本到着、早速試乗してきた。正直、初対面のルックスはちょっと拍子抜けな感じだった。5ドアハッチバックのプロポーショだけど実はトランクを備えるセダンで、ルーフが高くてずんぐりしている。
居心地のいい質感がある
たとえば、モデルXのファルコンウィングのようなインパクトもないし、モデルSのようなスマートさもなく、未来的なスタイルでもなく、エクスリテアデザインに惹かれるという感じではなかった。が、しかし、ドアを開けて室内に乗り込むと、斬新なインテリアが広がっていた。モデルSやモデルXに乗ったことがあっても、十分に新鮮であった。
無駄を一切排除し、シンプル イズ ベストを具現化したような広々した空間。ドライバーの前には、ホントにシンプルな水平基調のダッシュが広がるのみ。見た目には、エアコンの吹き出し口すらない。そして、ウッドパネルが美しい。まるで、リビングルームにいるかのような雰囲気だ。
このユニークさは他のテスラのモデル以上であり、”高級感”というより、居心地の良い”質感”がある。そして、ステアリングの脇には、横長に15インチのタッチスクリーンがレイアウトされる。まるで、タブレットを立てかけたかのよう。そして、ありとあらゆる操作はすべて、このスクリーンを介して行う。ちなみに、試乗車では試していないが、自分のスマートフォンをキーとして使い、このタッチスクリーンでドライブコントロールにアクセスができるという。
スマホやタブレット所有者なら、ほぼ抵抗なくスクリーン操作ができるだろう。試乗時に、エアコンや、ドライブモードなど簡単かつ必要なものだけ操作してみた。ちょっと前、モデルSを1日ドライブしたが、ナビの縮尺や表示設定を変えたいとなった時には、アナログ人間の私には運転しながら直感的な操作はできなかったが、最初にちゃんと覚えて、なおかつ慣れれば問題ない。
モーターは制御との相性が抜群
試乗モデルは「スタンダードレンジ プラス」というグレードで、後輪をモーター駆動する。モデル3の中では、パフォーマンス的にもっとも穏やかなグレード。ちなみに、オフィシャルサイトによればモデル3は3グレードあり、他の2つは前後にモーターを備えるAWDだ。
アクセルを踏み込むと、モーター独特の、シームレスでトルクのある加速感が気持ち良い。加速は、コンフォートと標準が選べるが、日常シーンではコンフォートでも充分。モデルSなどに装備される、「Sport Mode」や強烈な加速を見せる「Ludicrous Mode」は装備されず、一気に最大トルクを発揮して瞬間移動するかのようなパンチはないが、高速道路の追い越し加速なども含め、実用性はまったく不満ない。
もちろん、テスラ自慢のオートパイロット機能も備える。車線内でステア操作、加減速を自動的に行なうが、ここでもまた、モーターのスムースさと制御の相性の良さが感じられた。
ドライだけど心地よい
動力性能に加え、ライディングコンフォートも、不思議な乗り味だ。重心が低く、エンジンのようにクルマの先端に重量物がないため慣性モーメントも小さい。電気自動車はバッテリーをたくさん搭載するから重いイメージがあるが、モデル3は1600Kg台と、さほど重くもない。
なので、乗り心地もハンドリングも極めて素直。セグメントは異なるが、テスラと対局にあるのがジャガーのi-Paceだろう。電気自動車になっても、出力特性からサウンド、乗り心地に至るまで、ブランドを色濃く感じられる。一方、モデル3は、ある意味「道具」のような感覚。でもこれ、悪い意味じゃない。
たとえば、料理道具である包丁も、デザインや切れ味などに優れるものは愛着が湧き、ずっと使っていたいと思うだろう。それに近い。けっしてマルチシリンダーのガソリンエンジンやスポーツカーのハンドリングみたいに”官能的”ではないのだが、不快感や違和感はどこにもなく、至って快適。このドライだけど心地良い感覚こそ、シリコンバレー発の電気自動車の独特なキャラクターと言えるのかもしれない。
充電の壁を乗り越えた?!
試乗途中、テスラの急速充電施設、スーパーチャージャーステーションで充電もしてみた。テールランプの一角が開いて、コネクターを接続するだけ。コネクターが小さく軽いので、女性でも手軽にチャージできる。
そもそも、満充電で約400Km走行可能。そして、スーパーチャージャーは30分で270Km分と、充電スピードの速さも特徴だ。電気自動車にとって、航続距離と充電が大きな壁となっていたが、モデル3はこの垣根がかなり低くなった感がある。
たとえば、東京から北上して仙台まで368Km、西へ向かえば名古屋まで356Kmが、条件にもよるがノンストップで行ける。これはかなり実用性が高い。通勤や買い物で1日20~30Kmしか乗らなければ、ほぼ2週間も充電なしで走れてしまう。自宅に充電器があれば理想だが、これならなくてもさほど苦にならないかもしれない。もちろん、一般のCHAdeMOや普通充電器も、アダプターを装着して利用可能だ。
価格も約500万円からと、けっして安いとは言わないが、パフォーマンスや車格を鑑みれば、エンジン搭載車に対して、あるいは他社の電気自動車に対して「高い」とは思わせないし、現実感がある。また一歩、電気自動車が身近になったと感じさせるクルマだ。ライフスタイルに合えば欲しいと思った。<レポート:佐藤久実/Kumi Sato>
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