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「4輪では1920年代から普及するも、2輪では70年代から」並列6気筒はなぜバイクで主流とならなかったのか

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「4輪では1920年代から普及するも、2輪では70年代から」並列6気筒はなぜバイクで主流とならなかったのか

70年代、奇しくも同タイミングで登場した並列6気筒の「CBとZ」

あくまでも高級車用ではあったけれど、1920年代から直列6気筒の普及が始まった4輪とは異なり、1960年代中盤以前に市販された2輪のエンジンは、単気筒と2気筒が主力だった。とはいえ、1970年にホンダCB750フォア、そして1973年にカワサキZ1/Z2が登場すると、状況は一変。以後のモーターサイクルの世界では、並列4気筒車がイッキに主役の座に躍り出たのである。

「V型12気筒と並ぶ、理想のエンジン形式」並列6気筒はなぜバイクで主流とならなかったのか

その勢いがさらに加速する形で1970年代末に登場したのが、革新的にして各車各様の並列6気筒を搭載するホンダCBXとカワサキZ1300だ。もちろんこの2台は、デビュー時には世界中で大きな注目を集めたものの……。

残念ながら2台の並列6気筒車は、以後のモーターサイクルの世界の主役にはなれなかった。そしてその印象が根強く残っているからだろうか、スズキは2005年に久しぶりの並列6気筒車として、コンセプトモデルのストラトスフィアを公開したのだが、市販には至っていない。

スーパースポーツからツアラーへ「ホンダ CBX(1000)」

年を経るごとに中古車市場での人気が上昇し、昨今では300万円以上の価格が珍しくなくなったCBX(1000)。ただし、日本の量産2輪車で初の並列6気筒車となったこのモデルは、現役時代に順風満帆な生涯を送ったわけではないのだ。

もちろん、当時としては画期的なDOHC4バルブヘッドを採用し、同時代の量産車最高値となる100psの最高出力を獲得したCBXは、1978年のデビュー時は世界中で大反響を巻き起こした。とはいえ、実質的な運動性能が基本設計を共有する並列4気筒の兄弟車、翌1979年にデビューしたCB900Fに及ばなかったため、市場でのセールスはいまひとつパッとしなかったのである。

そういった事実を認識したホンダは、1982年にCBXの路線をスーパースポーツ→スポーツツアラーに変更(意外に感じるかもしれないが、初期のCBXのガソリンタンクにはSUPER SPORTと記されている)。ただし、同社のツアラーには熟成が進んだGL1100ゴールドウイングが存在したからか、人気回復には至らず、結果的にCBXはわずか5年弱で市場から姿を消すこととなった。

■ホンダ CBX
排気量は1000ccだが、CBXは1960年代の世界GPで活躍した、RC165/166/174の公道仕様と言えなくもないモデル。DOHC4バルブ空冷並列6気筒エンジンに加えて、かなり前傾したシリンダーや6連キャブレター、ダウンチューブが存在しないダイヤモンドフレームなども、往年のRCシリーズに通じる要素だ。初代CBXの最高出力/乾燥重量は100ps/247kg。同時期に開発された並列4気筒車、CB900Fの95ps/235kgと比較すると、CBXにも分がありそうな気がするけれど、実際の運動性能はCB900Fの圧勝だった。

すべてを専用設計した水冷並列6気筒車「カワサキ KZ1300」

近年の中古車市場での人気は逆転した感があるけれど、量産初の「水冷」並列6気筒車として、1979年から発売が始まったカワサキZ1300は、現役時代にCBXを上回る成功を収めている。何と言ってもこのモデルは、派生機種にしてグランドツアラーのボイジャーと共に、1989年まで生産が続くロングセラーになったのだから。

120psという圧倒的な最高出力に加えて、抜群の静粛性や耐久性など、Z1300が成功を収めた理由には諸説があるものの、現代の視点で他の並列6気筒車と比較して興味深いのは、同時代の空冷Z系との関連性が希薄で、ほとんどすべてのパーツを専用設計したことだろう。

逆に言うなら、これまでに生産された並列6気筒車のほとんどは、既存の並列4/3気筒車の部品や思想を転用、あるいは並列4気筒車と同時開発されているのだ(ベネリ・セイにも350/500cc並列4気筒車という兄弟車が存在)。その事実を考えると、Z1300はモーターサイクルの世界では唯一となる、生粋の並列6気筒車なのである。

もっとも、1989年でZ1300の生産が終了し、以後のカワサキ製ツアラーの主力エンジンが並列4気筒になったことを考えると、同社は「並列6気筒は2輪向きではない」という結論に達したのだろう。そして他メーカーもその結論には同感だったようで、以後の十数年間、2輪の世界で並列6気筒が話題になることはほとんどなかった。

■カワサキ KZ1300
既存の空冷Zシリーズとはまったく異なる、高級グランドツアラーとして開発されたZ1300。最高出力120ps、乾燥重量297kg、軸間距離1580mmという数値は、いずれも当時の大排気量車の基準を大幅に上回っていた。Z1300が冷却方式を水冷とした理由は、発熱量を抑制すると同時に高級車としての静粛性を実現するため。ロングストロークの内径×行程(62×71mm)と、2バレル式×3のキャブレターは、幅の増大に配慮した結果だ。

大注目を集めた「スズキ ストラトスフィア」

Z1300の生産終了から十数年が経過した2000年代中盤、並列6気筒エンジンに対する2輪業界の認識は、オンロード用の2ストロークと同等かそれ以下だったと思う。非常に魅力的なエンジンではあったけれど、もはや新型が登場することはないだろう……という意味で。

だからこそ、2005年の東京モーターショーでスズキが公開したストラトスフィアには、大きな期待が集まったのだ。と言うのも、当時のスズキ製大排気量車は絶好調と言うべき状況で、GSX1300RハヤブサやGSX-R1000が、世界中で好セールスを記録していたのだから。

とはいえ、残念ながらストラトスフィアは市販されなかった。おそらくスズキは、コストや重量を考えて市販を断念したはずだが、エンジン幅が当時のリッター並列4気筒と同等で、最高出力が180ps、車重がそんなに重そうに見えないこのモデルが市販されていたら、並列6気筒車に対する世間の認識は変わっていたのかもしれない。

■スズキ ストラトスフィア
2005年の初公開時には、次世代カタナになるんじゃないか?と噂されたストラトスフィア。1100ccの水冷並列6気筒エンジンは、当時のリッター並列4気筒スーパースポーツの平均値を上回る、180psを発揮すると言われた。全長2100、全幅720、全高1150mmという数値は公表されたものの、気になる重量は非公開。ちなみに並列4気筒を搭載する当時のGSX1300Rハヤブサは、全長2140、全幅740、全高1155mmで、乾燥重量は215kgだった。

レポート●中村友彦 写真●八重洲出版 編集●上野茂岐

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みんなのコメント

21件
  • バイクの良さは必ずしも速さやスペックだけで語るものではないと思う。販売が振るわなかったのは事実だけど、CBXにしか味わえない音と他を圧倒する存在感は唯一無二の存在。これからも大切に乗り続けます。 
  • https://carview.yahoo.co.jp/news/detail/6cc64b92a46950baf36e5a37bc40599769bd1808/?mode=top

    の続編かと思ったが、こちらは単に6気筒モデルの紹介記事か。
    同じ人が書いてて同じネタだけど中身は違うのだから続編扱いにしてもいいとは思うが、何にせよ、理由らしい理由は書いてないのでタイトル変えるべきだな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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