2021年は新型コロナウイルス感染拡大により中止になった東京モーターショー。次回は2023年で4年ぶりの開催となるが、名称が東京モーターショーから「ジャパンモビリティショー」へと変更されることが主催の日本自動車工業会から発表された。
当然ながら、名称が変わるだけでなくショーの内容自体も大幅に進化するという。一体どのように変化するのか? 「世界最大級のモビリティショー」がより盛り上がるためのアイデアについて、4名の自動車評論家が提言!!
「150万円縛りのコンセプトカー」で競ってほしい!!? TMS改めジャパンモビリティショーに期待したいこと
●ジャパンモビリティショー(JMS)のポイント
・目指すは「世界最大級のモビリティショー」
・オールジャパンで「未来の日本」を体感できる場所に
・自動車を軸に、日本を元気にするイベントに進化
※本稿は2022年12月のものです
文/ベストカー編集部、国沢光宏、清水草一、池田直渡、島下泰久、写真/ベストカー編集部、Adobe Stock ほか
初出:『ベストカー』2023年1月10日号
■2023年のTMSは「ジャパンモビリティショー」へ!!
スタートアップをはじめとする出展者募集はすでに始まっており、2023年1月31日まで。日本自動車工業会HP「ジャパンモビリティショー特設サイト」から申し込める
2021年は中止となり、2023年に4年ぶりの開催となる東京モーターショーは「ジャパンモビリティショー」に名称を変えて生まれ変わることとなった。
もちろん、ただ名称を変えるだけでなく、ショー全体のコンセプトを進化させ「世界最大級のモビリティショーを目指す」というのだから、その意気やよし!
会場は東京ビッグサイト(東京都江東区有明)でいつもと同じだが、改修されて前回(2019年)よりも50%面積が増加。
2023年10月25日(水)のプレスデーで開幕し、一般公開日は10月28日(土)~11月5日(日)となっており、一般公開日の開始時間が従来の午前10時から9時に早まるのもポイントだ(午前9時~10時は特別チケットが必要)。
■名称変更で内容はどう変わる!?
さて、「ジャパンモビリティショー」となって内容がどう変わるかだが、クルマ、バイクはもちろん、モビリティ全体の枠も大きく超えて、他産業やスタートアップ企業の参加も促進。
「オールジャパンでつくる、未来の日本を体感いただく場」を目標として、「2050年の“移動”がどうなっているか」を楽しみながら感じられるショーを追求するという。
東京モーターショーの入場者数は1991年に202万人で頂点に達し、以降、右肩下がりで2017年には77万人まで減少。2019年にコンセプトをガラリと変えて130万人超を動員する成功を収めた。
2019年は「従来のモーターショーは、メーカーサイドの見せたいものへの思いが強すぎて、お客さんが何を見たいかにミートできていなかった」(自工会)という反省からスタートして成功したわけだが、新生「ジャパンモビリティショー」はその方向性をさらに強化。
未来の日本のモビリティを提示するとともに「お祭りとして楽しんでもらえる、音楽フェスのようなイベントを目指す」(同)というから大いに楽しみだ。
もちろん、将来の日本を担う子どもたち向けのキッズコンテンツや、若者、家族連れも楽しめるイベントも満載となる予定だし、一方で「従来のクルマ好きが楽しめる内容も重視する」(同)ということで、自工会も欲張りさんである(←喜んでます)。
ただならぬショーになる気配濃厚の2023年秋の「ジャパンモビリティショー」。我々クルマ好きも一体となって応援していこうではありませんか!
(ここまでのテキスト/ベストカー編集部)
■ジャパンモビリティショー開催に向けたジャーナリストの提言!
2050年のモビリティ社会を体感できるショーが目標。どんなコンテンツが用意されるのか、今から楽しみだ
ジャパンモビリティショーへの期待は膨らむばかりだが、オンラインでの発表会で、主催者の自工会が「皆さんのアイデアをどんどんいただきたい」と言っていたのに注目。誌面で4名のジャーナリストにアイデアを募集した。ぜひ参考にしていただきたい!
■国沢光宏氏:150万円のクルマを競う
私の希望は前回のモーターショーからまったく変わっておらず。今の日本に一番必要だと思われる「150万円で売れるクルマ」をすべての自動車メーカー共通のテーマとし、コンセプトカーを出展してもらうこと。昨今の安全基準や素材の値上がりなど考えたら200万円でもいいですけど……。
ショーに来た人に投票してもらい、なんらかのアワードを作ってもいいと思う。どんなクルマになるかまったく予想できない。スポーツモデルを作るメーカーもあれば、ミニバンもあるかもしれない。
価格を落とすアイデアもたくさんあると思う。オーソドックスなのは「売れ筋を狙い生産台数を多く設定し、コストダウン狙う」という戦略だろうけれど、可能な限りシンプルな構造としてコストダウンするみたいなアプローチだって出てくる。
日本人はフリーハンドだと迷宮に入り込んでしまいがち。制限を付けることによって奥ゆきや工夫も出てくるんじゃなかろうか。安全性も条件に含めることで現実的なクルマの姿になる。興味深いです!
時節柄、電気自動車をテーマにすると面白いかもしれない。その場合、電池のサイズと容量を決める。純粋な車両価格で150万円くらいにしておくと、補助金を勘案して200万円前後になると思う。
電気自動車の開発、現在進行形で各社大いに悩んでいると聞く。さまざまな知恵が出てくることにより、日本車の魅力度アップに繋がるかもしれません。日本の自動車業界を引っ張って行く次世代の有力チームを作り、自工会会長に直訴したらいいと思う!
■清水草一氏:日本各地の「山車」が集合
東京モーターショー時代に不満だったのは、会場に並べてあるクルマたちを見るだけに近かったことなんだ。クルマは動いてないと面白くないんじゃないか? そこをコンパニオンが補ってくれてはいたけど、それも徐々に衣装が自粛になって、年年歳歳、面白くなくなっていたと思うのです。個人的な感想ですが。
ただ2019年の東京モーターショーでは、2つの会場をつなぐ「オープンロード」に光明を感じた。あの広々とした空間で、いろいろ参加型の催しがあったので。
次回のジャパンモビリティショーは、ほぼ完全に国内のお祭りになるわけだよね。だったら今回は、オープンロード的な会場に、日本各地の「山車」に集まってもらって、日本の祭り大集合を開催したらどうだろう。青森のねぶた、京都の祇園、岸和田のだんじり、唐津のくんちとか。山車は文字どおり車輪がついてるわけで、一種のモビリティでしょ。
有名なお祭りは、ニュースでは毎年見てるけど、実物を見る機会ってとっても少ないと思うんだ。私はほとんど見たことがありません。派手な山車は、見栄えもする。そこにあるだけでなんだかワクワクする。それが全国から集まれば、きっと楽しいと思うんだよね!
山車をどうやって運ぶかとか、人をどうするのかとか、難問山積とは思いますが、なにしろお祭りだけに、ジャパンモビリティショーのお祭り感は一気に高まるはず。クルマにあまり興味のない人も楽しめるし、クルマ好きにとっては守備範囲外で、きっと新鮮に感じられるでしょう。
■池田直渡氏:日本の自動車文化を輸出
今、世界のモーターショーは衰退へと向かっている。という現状認識のなかで、東京モーターショーは、名称を変更してジャパンモビリティショーへと衣替えを図ることになった。名前だけ変えても中身が変わらなければ、意味がない。
では一体、何を基準に考えるのだろうか? 残念ながら、今後、少子化が進む日本国内の自動車販売がそうそう上向くビジョンは持てない。
アメリカはアメリカで独立したマーケットがあるし、中国は当面かなり厳しい不況に直面するはずで、日本で行うこの種のショーが、成長を目指すのであれば、おそらくはASEANとインドをターゲットにしたアジアのモビリティショーを目指す以外に出口があるとは考え難い。
幸いなことに日本の自動車文化は、まだまだアドバンテージがある。だから筆者は、ASEANとインドのメディアと富裕層に、どうやってこのショーへ来てもらうかの戦略をしっかり練っていくことが最も重要だと考えている。
具体的に言えば1000組の人々にしっかり日本の自動車文化を見てもらうことだろう。だから日本の自動車文化資産をツアーで回れる仕組みを提案したい。
ジャパンモビリティショーと富士のサーキットホテル、同じく富士のモータースポーツ村、鈴鹿のF1、あるいはS耐でのカーボンニュートラルチャレンジ、トヨタミュージアムなどを一度に見て回れるツアーを組むことで、日本の自動車文化を積極的に輸出していく形ができれば、成長を目指す面白い取り組みになるのではないだろうか?
■島下泰久氏:モビリティ版ダボス会議に
ジャパンモビリティショーに私が期待するのは、これを展示中心の博覧会に留めず、世界の自動車メーカーのトップ、業界のリーダー、注目の頭脳が集まって未来のモビリティのための議論の場にしていってほしいということです。言わば‟東京モビリティサミット”、あるいはモビリティ版ダボス会議の併催ですね。
華やかに開催されていた頃の世界のモーターショーは、新型車のお披露目の舞台というだけでなく、実はまさに世界の自動車メーカーのトップ、業界の要人が集結する場でもありました。これが非常に大きな意味を持っていたと思うんですよね。
何しろオフィシャルに会うのは面倒な相手でも、容易に顔を合わせられますから、ここから意外なビジネスに発展することも……。
我々ジャーナリストにとっては、普段はアポの取れないメーカーの首脳陣に比較的容易に話を聞けたのがモーターショーという場でした。経営陣だけでなくデザイナーや技術者などたくさんの人が集っていましたから公式メディアセッションで、あるいは歩いているのを捕まえて、貴重な話を聞くことができたのです。
ジャパンモビリティショーにも世界から人が集まってほしい。けれど単に日本ローカルのショーに留まっていては、それこそ海外メーカーのトップなどに来てもらうのは難しい。実はこれがサミットというアイディアの裏テーマ。
「これは顔を出さないと!」と世界の関係者の誰もが思うような場を創り、そして発信していく。そうやってTOKYOをモビリティにとっての世界最重要都市に育てていけたらと思っているのです。
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みんなのコメント
アホか。
数が出なきゃどんなにシンプルでも安くできない。
その理屈が通用するならスズキ軽エンジンのスーパーセヴンなんて100万円で売れるはずだろ。
この40年ほど、日本で「シンプルを貫いて数を売った車は一つもない」。
本質的ではないシンプルごっこ的なクルマすら(ネイキッドやmujiカーなど)、死屍累々だ。
そんな難しいことを提案するなら、売り方も考えて書け。