フツーのオフ車では刺激が足りない方へ
’19年7月号で790アドベンチャーの試乗記をお伝えしたが、今回紹介するのは、さらにダート性能を突き詰めた“R” 付きの790アドベンチャーRだ! ベテランにはさらなる高みを、初心者には最新の電子制御で安心の走りを提供するこのマシン。KTMが用意したモトクロスコースでの試乗インプレッションを詳細にリポートする。
KTM 790 ADVENTURE試乗インプレッション【パラツーエンジンの軽量小型ADV|映像あり】
最新のトラコンは後輪のドリフト具合を選べる!
スタンダードの790アドベンチャーが装備するストリート、レイン、オフロードにライディングモードに加え、R”にはラリーモードが追加装備されている。このラリーモードは、STDのオフロードモードの上位モードにあたり、さらにきめ細やかなトラコン介入が9段階で設定可能。「9はストリートモードと同様、7がオフロードモードと同様、それ以下はさらに段階的にリヤタイヤの空転を許容するようになる。最低の1を選択するとトラクションコントロールはほぼオフの状態」になり、かなりの奥の方までスライドを許容するようになった。
(◯)コースも攻められるできのいい車体
KTMが用意した試乗会場が完全なモトクロスコースであることに驚かされた。さすがに30m級のジャンプセクションはないものの、テーブルトップジャンプに、とにかくサスペンションに負荷がかかるウォッシュボードまである。このコースをまともに走るアドベンチャーツアラーがまず少ない。思いつくのは21インチホイールを備えた新型F850GSとアフリカツインなどだが、それにしたって“周回はできる”ものの、積極的に攻め込むのは難しい。
なぜか? 車重のあるアドベンチャーツアラーでウォッシュボードを走れば、ちょっと速度をあげただけで、重さが何倍もの負荷となってサスにのしかかり、よれたり、底突きしたりして足まわりが破綻するからだ。ところがである。この790アドベンチャーRは、コースを走っても、足まわりが破綻する気配がないのだ。
異様にコンパクトに感じる車体もペースアップに拍車をかける。前後長の短いパラレルツインエンジン採用によるホイールベースの短縮化が大きいのだろう。ほぼ同サイズの1190アドベンチャーRにも同時に試乗してみたが、体感的に790アドベンチャーRはひとまわり車格がコンパクトに感じる。もう、この車体をもって、ダートセクションでは現行最強だと言い切ってしまえる。
車体だけでも驚きだが、コイツには、さらに段階的にトラコンの介入レベルを変更できる機能まである(上表参照)。コーナーでアクセルを開けながら内足に体重をかけると、当然後輪が滑りだして、アウト側へと流れだすのだが、それがある程度スライドしたところで収束して戻ってくる。そのフィーリングも変にエンジン出力をカットされたり、ハイサイドを予感させるような唐突なものではなく、自然とリヤタイヤがグリップする感じで怖さがない。おかげでコーナリング中にも、アクセルを安心してあけられる開けられるというワケ。スタンディングのまま、テールスライドが楽しめてしまうのだから、楽しくないワケがない(笑)。
(△)ダート最強ゆえのジレンマを抱える
現行最強のオフロード性能。しかし、その長所をどこで発揮したらいいのかと思う。そう、日本の狭い林道ではコイツの性能を味わえるような速度が出せないのだ。BMWのGSトロフィーのような戦う場があればいいのだが、ダート最強とはいえ国内ではその性能をフルに活かせるシチュエーションに恵まれていない。
(結論)こんな人におすすめ:フツーのオフ車では刺激が足りない方へ!
ベテランにはさらなる高みを、初心者には最新の電子制御で安心の走りを提供するこのマシン。林道ツーリングに出かければ、誰もが尋常じゃない速度を“ 出せてしまう”。ビビリリミッターは常にオンに!
●写真:山内 潤
※取材協力:KTM JAPAN
※ヤングマシン2019年8月号掲載記事をベースに再構成
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