<前編ではデザインやモデル概要についてリポートする>
内装にも直線とカーブの対立構造が持ち込まれていて、自然を取り込んだ機能主義とでも表現できそうなスカンディナビア・デザインに息を飲む。
ボルボのワゴンはカッコだけじゃない! 走りもイイ!──ボルボV60 T5試乗記<前編:モデル概要&エクステリア編>
人工的な液晶画面は21世紀の象徴である。そのほかの表面はレザーとウッドのナチュラルな素材が覆い、ステンレスを思わせるシルバー部品が要所をキリリと引き締める。
試乗車の場合、ドアを開けると白夜を思わせる全面オフホワイトのシート表皮が目に飛び込んでくる。さぶっ。とは思わせない。クールに温もりを感じさせる。そこが北欧デザインのマジックというべきだろう。
プラットフォームは「90」シリーズや「XC60」と同じSPA(Scalable Product Architecture)である。
おなじだけれど、筆者の記憶のなかのV90やXC60より、仕立てはスポーティで、端的に申し上げれば乗り心地が少々硬い。タイヤは235/40R19という大径扁平のコンチネンタル社製「プレミアムコンタクト6」である。快適性とスポーツ性の両立を図ったというシリーズだけれど、縦方向のショックをコツコツと伝える。それがスポーティなフィールをドライバーに与える。
それでいて、基本的にはでっかいクルマに乗っている感覚がある。全長×全幅×全高は4760×1850×1435mm、ホイールベース2870mmという寸法は、現代のミドサイズとしてはむしろコンパクトである。たとえば、メルセデス・ベンツEクラスのステーションワゴンは全長が4930mm、ホイールベースは2940mmある。あちらこそ、デッカい。
ところが、筆者の印象によれば、あくまで印象ですけれど、運転感覚はV60のほうがゆったり、大きな舟に乗っているような心持ちがする。
そういえば、トレッドはEクラスとおなじほどあるし、エンジン横置きのV60のほうが室内はゆったりしているような気がするのだ。それに、低速でコツコツ感はあるけれど、足の動きはゆったりしていて、さらにステアリングがスローときている。
排気量1968cc、ボア×ストローク=82.0×93.2mmのロング・ストローク型にターボチャージャーを装着して、最高出力254ps/5500rpm、350Nmという大トルクを1500~4800rpmで生み出すT5の直列4気筒直噴ターボエンジンは、8速オートマチックに任せていると、ほとんど2000rpm以下に回転を抑えて、大排気量ユニットであるかのように錯覚させる。ようするにゆったり気分にさせる。
このエンジン、3000rpm以上まわすと、俄然パワフルになって「オオッ、こんなに速かったのか」と、驚く。ステアリングにもグワッとトルクステアがある。フロント・タイヤが急激に立ち上がったパワーを路面に伝えようとしている証しである。グワッとくるから「やめとこう」と、思うのであった。
アクセルペダルをゆったり踏んでやるほうが、ゆったりとトルクが湧き出してきて、そういうドライビングのほうがV60には合っている。ファミリーと荷物を積んでいたらなおさらだろう。
でもって、ゆったりとどこまでも走っていこう、という気分になる。「もしもこのワゴンがウチにあったなら、あれもしてこれもして……」というような想像が浮かぶ。新型V60だと、それが以前よりもスタイリッシュにできるような気がする。
筆者のこんな空想にもしも読者諸兄が同感されたとすれば、自分で書いておいてなんですけれど、それはカン違いである。たとえば、V60に自転車のロードレーサーを積んで大会に出る自分の姿を思い描いてみよう。スキーでもスノボでもサーフィンでもいい。練習してないのだから、うまくなっているはずもない。
だけど、カン違いから新しい物事は始まったりもすることもまた確かである。いまのボルボ全般にいえることではあるけれど、新型V60にもまた、そういう力がある、と私は思うのであった。
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