一台のクルマには、縁あってオーナーになった人との歴史や思い出があり、物語になるほどのエピソードが生まれることもある。
そんなクルマと人との関わりを、オーナーさんに直接取材して、リアルな生の声を紹介していきたいと思います。はたして、どんな生の声が聞けるのでしょうか?
「CX」以前のマツダSUV! トリビュートが短命に終わった理由【偉大な生産終了車】
購入した動機から、愛車に対するこだわりのポイント、年間の維持費、故障箇所、愛車の主治医まで、これからそのクルマを購入しようと思っている人にも役に立つ情報満載でお届けします。
文/松村 透
写真/松村 透
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■幼少期の頃から憧れたFD3S型RX-7に乗る34歳のオーナーさん
第1回は、幼少期の頃からFD3S型のRX-7に憧れ、2年前にその夢を実現させた鎌田 真輝さん(34歳)。手に入れたRX-7は、1995年式のtypeRSというグレード。デビュー当時のリアスポイラーやテールランプなどのデザインとしては最後となる「3型」のオーナーさんです。
鎌田さんのRX-7は、マフラーやホイールなど、当時はチューニング&ドレスアップの定番とされたパーツにいたるまでノーマルのまま。
なぜ、フルオリジナルの仕様にこだわるのか。実際にかかっている維持費やメンテナンス、トラブルにいたるまで。今後、FD3S型RX-7の購入を考えている方にとって参考となる情報を伺いつつ、オーナーならではの目線で語っていただきました。
オーナーの鎌田 真輝さん(34歳)と愛車の1995年式 マツダ アンフィニ RX-7 typeRS
■プロフィール&愛車紹介
・お名前:鎌田 真輝さん
・ご年齢:34歳
・ご職業:会社員
・所有しているクルマ(年式、グレード名):1995年式 マツダ アンフィニ RX-7 typeRS(FD3S型)
・購入時期:2018年
・所有年数:2年
・購入時の走行距離:120,600km
・現在の走行距離:145,000km
・購入時の金額:96万円
■RX-7を手に入れようと思ったきっかけを教えてください
幼いころから「RX-7に乗りたい!」と思っていたことが忘れられず、購入を検討するようになりました。とはいえ古いクルマであり、なおかつロータリーエンジンという特性上、故障する頻度が高いことはある程度覚悟していました。
しかし「クルマ好きとして生まれて、このままFD3Sに乗らずに死ねない!」と思い、購入に踏み切りました。
このテールランプが前期モデルの証。鎌田さんのFD3Sは3型にあたります
■愛車との濃いエピソードを教えてください
整備のため、朝から晩まで愛車をいじっていることが頻繁にあった時期は、手についた黒い汚れがなかなか取れませんでした。たまに壊れてくれるくらいがクルマをいじるきっかけにもなるし、むしろ“ちょうどいいな”と考えていました。
鎌田さんのFD3Sは隅々まで手入れが行き届いており、ドアの内側もご覧のとおり
■愛車に対するこだわりを教えてください
購入した時点では社外品のパーツが装着されていた箇所もありましたが、少しずつノーマル戻しを慣行。現在はフルノーマルの状態を維持しています。
「RX-7に与えられた機能や性能をはじめとするそのままの仕様=工場出荷時の状態」を楽しみたいからです。極力、この状態を維持することで、RX-7を設計、開発した方々の想いをそのまま受け取ることができると考えています。
ポルシェやフェラーリのようなハイパフォーマンスカーを所有する多くの人はノーマルの状態を維持しながら乗っているイメージがあります。FD3S型RX-7も、この種のクルマと同じように扱われてもまったく遜色ない性能を発揮していると思っているので、あえてフルノーマルで乗っています。
リトラクタブルヘッドライトをあげた状態もサマになります
■大まかな年間の維持費を教えてください
■大まかな年間維持費(自動車税、オイル関係、ガソリン代などを含めた概算)
・自動車税:45,000円
・オイル:年間4回/7,000円x4(3000kmごとに1回)
・プラグ:年間2回/6,000円x2(6000kmごとに1回)
・クーラント交換:年間1回(7,000円程度)
・任意保険:月に3,000円x12(30歳以上、車両保険なし)
・ガソリン:月に15,000円程度x12
・車検:2年に1回(90,000円程度)。1年で45,000円
・その他:洗車および高速代等々の費用がかかっています
・トータルで、年間で30万~40万円くらい使っている計算になります
ロータリーエンジン特有の交換ポイントがプラグとクーラントです。それ以外はそのほかのスポーツモデルと変わらないと思います。
エンジンルームもオリジナルの状態を維持
■失礼ながら、これまで大小の故障はありましたか?
■主な故障箇所一覧
・エキセントリックシャフト(クランクシャフト)からのオイル漏れによるエンジンおよびミッション下ろし
・インマニのガスケット(4型以前は紙製)が破れたことによるエンジンを下ろし
・エンジン内のゴムホース類をすべて交換
・ノックセンサーが熱で溶けた
・吸気温センサーの断線
・ECUのコンデンサーがパンクしてECU自体を交換
・念のためスロットルセンサーを新品に交換
・ドアノブが破損しましたので交換
・ACV・チェックバルブがひどく汚れていたので洗浄
などなどです。
乗降時に触れる位置を考慮した実用性とデザイン性を両立したドアハンドル
■純正部品の入手に苦労していますか? 欠品・製造廃止している部品などご存知でしたら教えてください
スロットルセンサーが欠品しています。スロットル開度を検知してECUに送るセンサーです。エンジンへの空気の流入量を決定するロータリーエンジンにとって非常に重要なセンサーです。
使用によって摩耗するセンサーで故障すると燃調が狂うのでこの製品の欠品は非常に厄介です。5型および6型用は再販があったみたいですが、前期型用はない模様です。今後の再販に期待しています。
街中をかけ抜ける鎌田さんのFD3S。その姿はまさにスポーツカーそのもの
■愛車の主治医のどのようなお店ですか?
真横から見た時のラインの美しさを改めて実感
購入したお店にお願いする場合が多いです。また、自分でもネットで不具合事例やショップさんが出している整備法を読み込み、不具合や不調の前兆を察知できるように心がけています。最後に愛車を守るのは自分だと思っています。
■これからも乗り続けるご予定ですか?
特に考えていませんが、これからもずっと乗り続ける予定です。もし、このRX-7を降りることになったら…。もう自分のクルマ、愛車といえるようなクルマはいりません。
走り去るFD3Sの姿に、道行く人も思わず振り返っていました
■未来のオーナーのために購入時のチェックポイントや愛車のウィークポイントを教えてください
少ないかもしれませんが、エンジンルームがノーマルの個体を探すことをオススメします。通称「毒キノコ」と呼ばれるような、むき出し型のエアクリーナーが装着されている個体は、燃調が狂ったまま乗られていた場合が多く、エンジンのオーバーホールを要する可能性があります。
また、ラジエターキャップを開けてみて、クーラントが泥のようになっていたり、ひどく汚れている個体も要注意です。
エンジンのガスケットが劣化することで、冷却水が燃焼室に侵入する「水喰い」と呼ばれる持病を抱えている場合があります(※水喰いはエンジンブローです。エンジンのオーバーホールでしか治りません)。
ステアリングやシフトノブも純正品のままなのです!
■あなたにとって愛車はどんな存在ですか?
RX-7は、人生の1ページだと思います。
とはいえ、あくまでも人生の1ページなので「このクルマが俺のすべて」とか「命を懸けている」わけではありません。
「好きなクルマ=私にとってはこのRX-7」でさまざまな場所に出かけ、たくさんの人に出会い、非常にいい意味で人生に影響を与えてくれたことは間違いありません。
このFD3Sは「人生の1ページ」だと語ってくれた鎌田さん
■取材後記
愛車であるRX-7は「あくまでも人生の1ページ、俺のすべてとか命を懸けているわけではない」だと語る鎌田さん。一見するとクールな印象を受けるかもしれません。
しかし、それはまったくの誤解です。常に全力で、さらに何十年もモチベーションを維持するにはかなりのエネルギーを要しますし、ある日突然、燃え尽き症候群に陥ることも……。愛車はもちろんのこと、自分自身に負荷をかけすぎないことこそが愛車と長く付き合う秘訣なのかもしれません。
車名に「アンフィニ」を冠していた時代に装着されていたエンブレム
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