一部改良を受けた新しいスバル「WRX S4」に、小川フミオが早速試乗した。意外な進化に驚く。
今や希少なスポーツセダン
優れた都会的なSUV──新型スバル レヴォーグ レイバック試乗記
クルマは操縦して楽しめるのが一番! と、個人的には思っている、走り好きのストリート派に勧めたいのが、スバルの新しいWRX S4だ。2023年10月25日にバージョンアップして登場した。
最高出力202kW(275ps)の2.4リッター水平対向エンジンに、全輪駆動システムの組合せ。「SUBARUのAWDパフォーマンスを象徴するモデル」と、メーカーは謳う。
ひとことでいって、元気なモデル。スバルのエンジニアが喜びながら開発しているんじゃないか!? そんな雰囲気が伝わってくる。
高剛性シャシー、鍛造アルミニウムのフロントロワーアームと取り付け部に剛性の高いピローボールブッシュを採用した専用開発のスポーツサスペンション、グリップ性能の高いタイヤ、それに空力ボディと、スバルの代名詞のようなスポーティ4WDの魅力が堪能できるモデルだ。
とくに今回乗った「STIスポーツR EX」は、ZF製の電子制御ダンパーをそなえ、(試乗した車両には装備されていなかったけれど)大型リヤスポイラーをオプションで選べる。
変速機は「スバルパフォーマンストランスミッション」と呼ぶCVTで、このモデルはとりわけ「S(スポーツ)」と「S#」モードに特徴がある。エンジン回転のコントロール性をよくして、加減速においてよりダイレクトな反応が得られることを追求しているのだ。
実際にドライブすると、202kWの最高出力と375Nmの最大トルクを発生する2387ccエンジンのいいところ、つまりパワフルでかつ上の回転域まで気持ちよくまわるキャラクターを、うまく引き出してくれるのがわかる。
軽くアクセルペダルを踏み込んだだけで、回転計のニードルははじかれたように上の回転域までまわり、同時に乾いた排気音とともに、胸のすくような加速感が堪能できるはず。
このエンジンだったらマニュアル変速機で味わってみたい! と、ないものねだりの気持ちが湧くものの、ドライブモードに合わせて、上手に段がつけられている。その気になれば高めのエンジン回転を維持して走ることも可能だ。それがこのクルマの真骨頂である。
アクセル操作をクルマが読み取り、カーブ手前など強めの減速時には、早めのスピードで段を落とすため、ブリッピング(エンジンの中ぶかし)まで自動でおこなわれる。
足まわりは、しっかりしていて、走らせていて頼りがいがある印象だ。と、いっても、クルマに振りまわされるようなことはない。市街地では「I(インテリジェント)」モードも有効。
12.3インチの縦型モニタースクリーンで、サスペンション、操舵感など、好みのモードを選んで組み合わせられる。そのため、意外なほど、大人っぽい乗り味を作ることも可能だ。
インテリアは機能的で、基本的な操作は、会話型音声認識システムを使いながら、ハンドルを握った手だけで可能といってもいい。
ちなみにSTIスポーツR EXの前席にはレカロのシートが装備されていて、体格がいいひとでもホールド性がよさそうだし、路面からのショックも吸収してくれる。
今回の改良において、安全および運転支援システムである「アイサイト」に、広角単眼カメラが追加され3カメラになった。対向する自転車や右折する際の対向二輪車、さらに、横から来る歩行者や(巻き込み防止)、横方向からの横断自転車も検知するという。
スポーティなモデルだが、基本設計は、機能性の高いパッケージを追求しているため、前後席は空間的余裕があるし、荷室は広い。トランクスルー機構もあるので、実用性が高いのも美点だ。STIスポーツR EXには10スピーカーのハーマン/カードンのオーディオも標準装備される。
派手な大型スポイラーは“ナシ”で、落ち着いた雰囲気で楽しむのも実に良いスポーツセダンだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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