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伝説と共に輝き続けてきたマセラティのプレミアムサルーン「ギブリ」が放つ色気

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伝説と共に輝き続けてきたマセラティのプレミアムサルーン「ギブリ」が放つ色気

マセラティの“現在”を牽引する主力車種

人ごとになると、平穏無事より波瀾万丈にして紆余曲折のある物語のほうが印象深くなるのは、自然な心情かもしれない。クルマに関していえばマセラティ、いや「ギブリ」もそのひとつ。1914年に創業し、フェラーリ以上の名門であるマセラティには古くからクルマ好きの心に刺さる魅力的なモデルが数多くある。なかでも、アフリカ北部で吹くサハラ砂漠からの熱風に由来する車名が与えられた初代ギブリは特別な存在だった。

スポーティーなライディングフィールとツーリングの快適性を追求したカワサキのスポーツツアラー「Ninja 1000SX」

確か80年代中頃だったが、目の当たりにした1972年式のギブリSSには完全に魅了された。ジョルジェット・ジウジアーロが手掛けた彫刻のように美しい2ドアクーペのエクステリアと、イタリアンファニチャーもかくや、という豪奢で色気たっぷりのインテリア。搭載されている335馬力、4.9LのV8型エンジンは、妙なる快音を放っている。すべての立ち居振る舞いにおいて「なんて美しいのだろう」と感嘆するばかりだった。すでにその時点でギブリは生産を終え、ラインナップから消えていたという1点を除けば、この幸福な出合いはマセラティにのめり込むきっかけとして十分だった。

ギブリ以降にはカムシン、ボーラ、メラクなど惚れ惚れするほどのスーパースポーツや、大統領の公用車ともなったプレミアムサルーンのクワトロポルテ(イタリア語で「4ドア」の意味)が居並び、ブランドの存在感は色あせることがなかった。同時にギブリの名はつねに心の中にあった。

すると1992年、その名はモダンなGTカーとして復活を果たすのだ。80年代から90年代のマセラティを支えた大人気モデル、ビトルボの派生車という形ではあったが、名車ブランドの復活は嬉しい限りだった。ところがまたしても社会情勢に翻弄され、1998年にギブリの名はまたしても消え、多くのマセラティ・ファンを落胆させた。その後、名門マセラティにとって、もっとも辛い時期をクアトロポルテや3200GT、グランツーリズモなどによってなんとか乗り切った2013年、ギブリの名が再度復活する。

当初は「え、4ドアか?」と思った。しかし、この頃のラインナップを見ると、全長5メートルを超えるクアトロポルテと2ドアクーペのグランツーリズモだけであり、SUVのレヴァンテもまだない。そこでクアトロポルテよりもひとまわり小さなスポーツサルーンを企画し、伝統あるギブリの名前を与え、世界戦略車として投入したのは理解できた。すると期待を一身に背負った3世代目ギブリのデビューは大きな話題となり、現在まで主力車種としての任を果たしている。

サルーンとなったギブリは決して期待を裏切ることはなかった。エクステリアはマセラティ伝統の大きく口を開けたデザインの中央にはトライデント(三叉の槍)のロゴが配されたフェイスはなんとも刺激的である。さらに4ドアでありながらも、ドアがサッシュレスであることで、まるでクーペのようなサイドフォルムに仕上がっている。フロントフェンダーに3連エアダクト、Cピラーにはトライデントとサエッタ(稲妻、あるいはキューピッドの矢)というマセラティの伝統に支えられた必須アイテムが与えられている。

伝統あるイタリアンブランドだから出来る仕立てのよさ

興奮はインテリアへと続く。マセラティのスタンダードとなっていたダッシュボード中央のオーバル型クロックは当然のように健在。そしてシート! イタリアのクラフトマンシップによる上質な仕立ては本当に心地いいのである。インテリアの各部に最高級のソフトレザーを使用した上質な肌触りは、一度味わうと忘れられない感触。まさにイタリアのサルトリアだけが作り得る柔らかな風合いのスーツのごとく、華やかさや大人の色気を感じさせる仕立てになっているのだ。この点において、ブリティッシュモデルのスーツが持つドレッシーさとは、少しばかり印象は違うが、やはりイタリアンには、この艶めかした色気は必須である。こうした数々の演出によって、ギブリは伝統あるブランドだけに許されたエレガンスが際立つことになる。

それにしてもギブリのファッション性に富んだ内外のデザインは3代目ギブリの大きな魅力である。以前にはエルメネジルド・ゼニアと組んだ「ゼニア・パッケージ」や「カーボン・パッケージ」などを始め、イタリアンブランドらしくファッション性の高いコラボレーションを成功させてきている。

つい最近では80年代のヒップホップカルチャーをリードし、その後もファッションデザイナー、ミュージシャンなどマルチに活動している世界的なアーティスト、藤原ヒロシ氏とのコラボでもギブリは大きな話題となったばかりだ。このコラボレーションモデルである「ギブリ・オペラネラ」と「ギブリ・オペラビアンカ」はハイブリッド・グランルッソをベースに開発された限定生産モデル。全世界で175台、そのうち40台が日本へ割り当てられるという貴重さで、発表前からオーダーが入るという注目度の高さを見せた。これを成功させたのもギブリのファッション性とドラマチックなストーリィがあってのことだ。

そんなことを考えながらステアリングを握るギブリ・グランスポルトには、初代ギブリでも感じた官能があった。3LのV6ツインターボエンジンをスタートさせると、マセラティらしい突き抜けるような快音が聞こえてくる。決して爆音ではなく、刺激的なサウンドが心地よく響いてくる。アクセルに対するレスポンスも軽快であり、自然とペースが上がっていく。走行モードはデフォルトのコンフォートである。不快な突き上げなどもなく、快適な乗り心地だが、一点だけ気になったことがある。速度が上がるほど路面のうねりに合わせてリアの上下動が気になりだしたのだ。

そこで走行モードをスポーツにセット。多少のゴツゴツ感はあるものの、走りがさらに落ち着く。安定したフラット感と乗り心地のよさ、そしてギブリらしい軽快さをバランスさせ「スポーツサルーンとは“かくありたい”」という見本のような走りが手に入る。

こうした数多くの魅力に加え、先進運転支援システム(ADAS)、そしてマセラティ史上初のハイブリッドモデルがラインナップされ、時代性はより向上した。イタリアンサルーンを求める人にとって、すでに欠かすことの出来ない重要な選択肢になっている。もはやギブリの名が時代に翻弄されることを望む人など、誰もいないのである。

中央にトライデントを備え付け、キリッと引き締まった表情に仕上がったフロントマスク。

スポーティな走りのDNAを感じさせる装備で仕上げたグランスポーツ。

独立したコクピット感があり、体にピタリとフィットする。

風合いのいいイタリアンレザーで仕上げられたシートは極上の座り心地。

ラグジュアリーとスポーティの雰囲気を端野いう出来る快適なリアシート。

アクセルにレスポンスよく反応するV6エンジン。心地いい加速感とエンジンサウンドが魅力。

奥行き、左右幅など実用面でも不足を感じることのないトランク。

Cピラーに輝くトライデントとサエッタのエンブレム。マセラティの誇りが輝く。

スペック

モデル名:ギブリ グランスポーツ
価格:11,560,000円(税込み)
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,985×1,945×1,485mm
車重:1,980kg
駆動方式:FR
トランスミッション:8速AT
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ 2,970cc
最高出力:257kw(350PS)/5,500rpm
最大トルク:500Nm(51.0 kgm)/1,600~4,500rpm
問い合わせ先:マセラティ・コールセンター 0120-965-120

TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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みんなのコメント

5件
  • 400万円代の中古なら買えますが、100%壊れるとのこと。
    やはり手が出せません。
  • 自宅のガレージに余裕があれば、その中の一台はマゼラッティにしたいと思うのですが、年収5000万以上なければ複数台所有は無理でしょう。
    昔 業務上月に一回ほど3200GTを運転していて、音と走りだけでなく官能的で退廃の極みのようなインテリアに魅了されました。
    ダッシュボードの真ん中のクラシカルなアナログ表示の時計が上質なイタリアンレザーのインテリアのキモになってますね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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