最近の経済情勢を見ると、エネルギーや原材料の高騰や極端な円安による物価高にヒヤヒヤものの毎日。そんななかでも30~40代の働き盛りの人たちの頑張りもあって今の日本がある。
ところで、その世代の方々が今新車を買いたいと思っているのか? また、無理せず購入可能なクルマに「欲しい!」と思えるいいクルマはあるのか? いろいろな見方で検証をしていきたいと思う。
消費のボリュームゾーンとなる30~40代は年収がどのくらいになればマイカーを購入する気になるのか!?
文/渡辺陽一郎、写真/ホンダ、トヨタ、スズキ
■30代から40代は年収がどの程度になるとマイカーを買うのか
冒頭から生臭い話になって恐縮だが、ユーザーは年収がどの程度になると、クルマを購入しようと考えるのか。クルマは不動産の次に高額な商品で、購入後に維持する段階でも、燃料代、駐車場代、税金、自賠責/任意保険料、車検費用などを支払う。経済的な負担の大きな商品だから、ユーザーの意識も気になる。
そこでSMBCコンシューマーファイナンスによる「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2022」をチェックした。クルマに関する結果は以下のとおりだ。
●年収とクルマ購入の意識
・年収が400万円あれば購入:32.8%(前回:35.7%)
・年収が500万円あれば購入:48.4%(前回:51.5%)
・年収が600万円あれば購入:58.8%(前回:59.3%)
*年収が少なくても購入したい:14.3%(前回:14.9%)
<今回の調査は2022年2月、前回は2021年2月に実施>
上記の調査結果から、クルマの購入には、相応に高い年収が必要だとわかる。年収の上限が500万円でも、クルマの購入を考えるユーザーは今回の調査では全体の50%以下だ。50%を超えるのは、年収が600万円以上であった。
■「クルマより貯蓄」コロナ禍で同一年収であっても購入マインドは低下傾向だ
ちなみに前回の調査では「500万円あれば」の該当者が51.5%に達していた。今回と前回を比べると、年収が同じでもクルマを購入できる人の割合が減っている。新型コロナウイルスの影響が長引いている事情もあり、貯蓄を増やしてクルマの購入を控えるユーザーが増加した。
その一方、年収が少なくても購入したいユーザーも14.3%と多い。居住している地域、介護などの生活環境、職種によっては、クルマが生活必需品になる。所有せずには生活できないユーザーも少なくないわけだ。
従って初年度登録されて13年を超えた車両の税金を増額する制度などは、クルマを必需品とするユーザーを苦しめる悪法だ。即座に撤廃すべきだ。
■年収600万円で堅実なクルマ選びとなると車両価格200万円台が基準となる
そこで年収が600万円以下のユーザーにふさわしいクルマ選びを考えたい。今は残価設定ローン、あるいは定額制でクルマを使うカーリースのサブスクリプションなども普及しているが、常に多額の債務を負担する危険を伴う。経済状況の先ゆきがわかりにくい昨今の状況を考慮すると、クルマは現金で買うのが好ましい。
そうなると新車価格は、税込み年収の3分の1程度に抑えるのが理想だ。年収が600万円とすれば、車両価格は200万円以下になる。この200万円という価格は、約30年前からクルマを選ぶ時の基準とされてきた。
国民生活基礎調査によると、今の全世帯平均所得は約560万円で、この金額はバブル期の1989年頃と同等だ。最も高かった1997年の約664万円に比べると、今の所得は100万円以上も下がっている。
所得が下がる一方、クルマの価格は1997年頃の1.2~1.4倍に高まった。当時と今では、安全装備と運転支援機能が大幅に異なり、安全性、快適性、燃費性能などを格段に向上させたからだ。そこに消費増税も加わる。
■安全装備や環境適合へのコストが積み上がり、新車価格は30年前の1.4倍にまで膨れ上がる
このように機能や装備と価格のバランスでは、今のクルマは1997年頃よりも割安だが、価格の金額自体は高まった。
例えば1996年に発売された初代ステップワゴンの最上級グレードとなるWは、価格が当時214万8000円だったが、新型ステップワゴンで一番安価な1.5Lターボを搭載するエアは299万8600円だ。初代の最上級と、新型の最廉価グレードを比べても、新型の価格は初代の1.4倍になる。
その代わり初代では、4輪ABSは9万8000円、運転席&助手席エアバッグは8万円のオプション装備だった。新型ではこのふたつの装備に加えて、横滑り防止装置、衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、サイド&カーテンエアバッグ、渋滞時を含めて先行車に追従走行する運転支援機能などがすべて標準装着される。エンジンも初代は2Lのノーマルタイプだったが、新型は1.5Lターボだから動力性能が向上した。
このように今のクルマでは、機能と装備が充実して安心感も高めているが、200万円の価格を基準にすると、購入可能な車種のボディサイズとエンジン排気量がコンパクト化している。しかも前述のとおり、1997年頃に比べて所得も下がったから、小さなクルマに乗り替えるダウンサイジングが進んだ。
そこで改めて、税込み年収が600万円、車両価格は3分の1の200万円でクルマを選ぶと、購入の対象はコンパクトな車種になる。その推奨モデルをカテゴリー別に取り上げてみたい。
■コンパクトカー:ホンダフィット1.3ホーム(176万7700円)
「ホンダ フィット」e:HEVの陰に隠れがちだが、ガソリン仕様も1.3Lエンジン搭載車を用意。先代のような走りのイメージはないが、必要にして充分な走行性能だ(※ 写真はe:HEV仕様のHOME)
人気の高いコンパクトカーには、ノートやアクアもあるが、両車ともハイブリッド専用車だから価格が200万円を軽く超えてしまう。ヤリスには200万円以下のノーマルエンジンもあるが、後席が狭く乗り心地は硬めだ。
車内の広さで選ぶと、ルーミーも200万円以下のグレードを用意するが、走行安定性、乗り心地、後席の座り心地といった基本性能に不満が伴う。
そこでフィットを推奨する。特徴が乏しく動力性能は充分とはいえないが、走行安定性と乗り心地のバランスはいい。後席の足元空間は、前後方向の余裕についてはCR-V並みに広い。燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床も低く抑えられ、後席をコンパクトに畳める。ボディは運転のしやすいサイズだが、ファミリーカーとして使える実用性を備える。
さらにフィットはほかのコンパクトカーに比べて視界もよく、日常的な使用で気になる欠点が少ない。1.3Lノーマルエンジンのホームなら価格も176万7700円に抑えられ、実用的な機能と価格のバランスでは買い得だ。
■SUV:トヨタライズZ(203万9000円)
トヨタ「ライズ」新開発の3気筒1.2Lエンジン搭載車であれば、最上級仕様も購入可能だ。SUVだが軽い車重のため、街中をキビキビ走るにはもってこいだ
SUVは人気の高いカテゴリーとあって、車種の数も増加傾向にある。しかし、コンパクトなサイズでも、価格を200万円前後に抑えたSUVは少ない。カローラクロスは、価格が最も安いG・Xを除くとノーマルエンジンでも200万円を大幅に超える。ヤリスクロスは低価格だが、LEDヘッドランプなどを標準装着したZは、ノーマルエンジンでも221万円だ。
このほかヴェゼルは大半のグレードがハイブリッドのe:HEVを搭載しており、価格が高く、納期も1年以上と長い。キックスもハイブリッドのe-POWER専用車だ。価格の上限を200万円前後に設定すると、推奨できる車種がかぎられる。
そこで選んだのがライズZだ。エンジンは1.2Lのノーマルタイプだが、車両重量は1トン以下だから、不満のない動力性能を得ている。WLTCモード燃費は20.7km/Lと良好だ。後席は狭めだが、大人4名が乗車できる余裕はある。
外観はRAV4を小さくしたような印象でカッコよく、グレードがZであれば、LEDヘッドランプや17インチアルミホイールも標準装着する。趣味性が相応に強いSUVを200万円少々で購入できるのは魅力だ。
■ミニバン:ホンダフリードGホンダセンシング(216万400円)
ホンダ「フリード」。3列シートの最小ミニバンでも1.5Lガソリン仕様であれば216万円と非常にリーズナブルな価格設定となる。安全装備も抜かりなく、とてもお買い得モデルだ
200万円以下で買い得グレードを選べるミニバンは、フリードとシエンタのみだ。シエンタは薄型燃料タンクの採用で3列目シートの床も低く、3列目を2列目の下側に格納すると、広い荷室に変更できる。
このようなシエンタの使い勝手も魅力だが、ここではフリードを推奨したい。内外装のデザインにミニバンらしさが濃厚で、6人乗りなら2列目がセパレートタイプのキャプテンシートになる。両側にアームレストが装着されて上質な印象があり、2~3列目の移動もしやすい。
フリードのGホンダセンシングは、1.5Lノーマルエンジンを搭載して、価格は216万400円だ。200万円を超過するが、コンパクトミニバンでは最も買い得だ。
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みんなのコメント
年収は関係ない。
ブラック経営者を痛め付けたら損害賠償・和解金って名のアブク銭が出たから、思い付きで買った。