ハスラーよりも前にクロスオーバー軽はスズキに存在した!
日本で軽自動車の普及が本格化したのは1950年代末から。1958年に「てんとう虫」の愛称でお馴染みスバル360が登場し爆発的にヒットする。これが軽自動車のみならず自動車全般の普及に火を点けた。
スズキから新型ハスラーが登場! パワートレインは「先代とは別物」といえるほど進化
当時の軽自動車は車名からもわかるように、排気量は360cc。1976年に規格が変更され、排気量が550ccに拡大。さらに1990年には排気量が現在と同じ660ccに拡大される。だが1990年代、軽自動車にある問題が発生する。
それは「衝突安全性」。1990年代に入るとクルマの安全性が重要視され始める。1995年からはJNCAPの衝突試験が行われることになった。安全性を確保するためには、衝突時に衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンが必要になる。
ところが軽自動車は小さすぎてクラッシャブルゾーンの確保が困難、という問題が発生。かくして1998年、軽自動車は660ccの排気量はそのままに、サイズだけを大きくする新規格に変更される。全長+10cm、全幅+8cmの大型化である。
1998年10月、各自動車メーカーから一斉に新規格へ合致した軽自動車が登場する。スズキでは大ヒット車のワゴンRが2代目となり、アルトは5代目が颯爽とデビューした。その新型車群のなかに、ある奇妙なクルマがあった。
一見して普通の軽自動車のようだが、明らかにタイヤ径が大きい。最低地上高は185mmもある。4WDも用意され、ジムニーほどではないにせよ、少々の悪路も余裕で走破する。だが内外装はシンプルすぎるほどシンプルで、華やかさには欠けた。
それが通常の軽自動車にSUVの要素も盛り込んだ軽初のクロスオーバー、「Kei」だった。当時クロスオーバーというジャンルは確立しておらず、スバルが1995年にレガシィ・グランドワゴン(現アウトバック)を登場させていた程度。この頃、国内ではSUVの人気も高くはなく、軽自動車にSUVの要素という発想は極めて斬新。Keiは爆発的ヒット、ではなかったが、2009年まで11年間というロングセラーモデルとなった。高いロードクリアランスで、降雪地帯ではとくに重宝された。
1998年 Kei 長きに亘って愛され続けた軽クロスオーバーモデルの先駆け
ハスラーの先代モデルと言えるクルマ。普通の軽自動車のようだが、大径タイヤを履き全高1550mm、最低地上高185mm(4WD)を確保する軽クロスオーバーの元祖。11年間生産された。
2000年にアルトワークスが消滅し、2002年Keiワークスを新設定。4輪ディスクブレーキやレカロシートなどを装備した。
2000年 スイフト(初代) 新時代スズキの世界戦略車
Keiと同じドアやサイドパネルを採用し、4WDの最低地上高は175mmと高くクロスオーバーテイスト。1.3Lが基本だが、専用チューンの1.5Lを搭載する「スポーツ」も設定。
2001年 シボレー・クルーズ(初代) GMとのコラボで生まれた個性派
当時スズキとGMは提携関係にあり、このクルマはデザインをGMが、中身をスズキが担当した。初代スイフトベースのコンパクトSUVで、通常モデルと同様にスズキの販売店で扱われた。
2006年 SX4(初代) 高いユーティリティを誇るクロスオーバー
5ドアハッチのようでもありSUVのようでもある独特な雰囲気を醸し出す異色のクロスオーバー。全高が高めで豊かなユーティリティが自慢。2007年には4ドアセダンも追加された。
1988年 エスクード コンパクトSUV市場を創設したモデル
トラックベースの大型SUVが主流だった頃、圧倒的にコンパクトなエスクードが世界的にヒット。トヨタのRAV4など追従するモデルが続出し、コンパクトSUVというカテゴリーを創設した。5ドアの「ノマド」も人気。
ハスラーの登場でクロスオーバーテイスト採用モデルが増加する
Keiは大ヒットではなかったが、軽クロスオーバーにスズキは手応えを感じていた。そこで後継モデルの開発に着手。Keiの後継モデルを熱心に後押ししたのは、カリスマ経営者、鈴木 修会長自身だったという。
そしてKei消滅から4年後の2013年、東京モーターショーに「ハスラー」を出展する。かつてハスラーはオフロードバイクの車名だったが、軽自動車として復活した。
最低地上高は2WDで180mm(4WDは175mm)と高く、SUVの要素を採り入れたクロスオーバーモデルだった。Keiの反省からか、内外装に思い切り遊び心を盛り込み、メッキを周囲にあしらった丸目ヘッドライト、黒のバンパーにシルバーのバンパーガーニッシュなど、それまでの軽自動車にはなかったユニークさにあふれていた。ワゴンRをベースとし、室内の広さや使い勝手も軽ワゴン並みだった。イメージキャラクターに「Dr.スランプ」を起用。ハスラーは、その舞台である「ペンギン村」にいかにも似合うスタイルで、軽にありがちな貧乏臭さは皆無だった。
ハスラーは大ヒットとなり、ワゴンRやスペーシアと並び、スズキの軽自動車のエース格へと成長する。軽自動車の世界にクロスオーバーの概念を定着させることに成功した。
ハスラー成功の後、イグニスやクロスビーなどスズキならではの魅力的で個性的なクロスオーバーモデルを続々と登場させている。コンパクトなクルマ専門のスズキだが、その数は国産メーカー随一と言える。
また、スズキで特筆したいことのひとつに、こまめな改良が挙げられる。たとえば初代ハスラーは、当初エネルギーを回生する「エネチャージ」だったが2015年に「S-エネチャージ」に進化。JC08モード燃費は29.2km/Lから32km/Lへと向上した。また登場時の自動ブレーキは「レーダーブレーキサポート」と、今となっては性能的にもの足りないモノだった。だがこれも2015年に最新モデルに遜色ない「デュアルカメラブレーキサポート」に進化。新型車に採用した技術を惜しみなく既存車に投入することで、つねに高い商品力を維持する。ユーザーフレンドリーな自動車メーカーと言えるだろう。
軽クーペSUVという提案 2013年 ハスラークーペ
初代ハスラーは2013年の東京モーターショーに初出展されたが、同時に出展されたのがこのモデル。現在流行中のクーペのようなSUVを軽自動車で提案した。未発売に終わったが、将来、再提案される可能性もある。
2014年 ハスラー(初代) 軽クロスオーバー旋風を巻き起こす!
Keiの実質的後継モデルとなり、FFで180mm、4WDで175mmという高めの最低地上高を採用。遊び心を満載したスタイルもあり大ヒット。軽クロスオーバーというジャンルを確立した。
2015年 SX4 S-クロス(2代目) ヨーロピアンテイストのクロスオーバー
初代SX4よりひとまわり大きくなり、大径タイヤを採用することでクロスオーバーSUVに変貌。4モード選べる先進の電子制御式4WD「オールグリップ」を採用し、高い悪路走破性を誇る。
2015年 エスクード(4代目) 大きく方向転換し都会派SUVへと進化
3代目までは頑強なラダーフレーム構造だったが、4代目ではモノコックボディを採用、都会的なSUVに一変した。当初は1.6L NAエンジンだったが、現在は1.4Lターボを搭載し、4WDのみを設定する。
2016年 イグニス(初代) 極めてコンパクトでスタイリッシュなハイブリッドクロスオーバー
軽自動車以外では最小クラスの全長3.7mながら、クロスオーバー仕立ての個性派。オーバーフェンダーなどで小粒ながら存在感を主張する。1.2Lハイブリッドのみを搭載し、FFと4WDを用意。
インドでも大人気のスズキ製SUV 2016年 ビターラ・ブレッツァ
インドではシェアが約50%と圧倒的な強さを誇るスズキ。「マルチ・スズキ・インディア」や「スズキ・モーター・グジャラート社」という子会社もある。そんなインドで2016年に登場したのがこのSUV。発売から4年でなんと50万台を突破し、ベストセラーとなっている。
2017年 クロスビー(初代) 使い方自由自在の小型クロスオーバーワゴン
ハスラーと同じデザインモチーフのコンパクト・クロスオーバー。1Lターボを搭載し、モーターアシスト付きのマイルドハイブリッドを採用する。広い室内を達成し、ワゴンのように使い勝手の高さが自慢。
2018年 スペーシアギア(初代) SUVテイストを軽ハイトワゴンにも
2017年末に登場した軽ハイトワゴンの2代目スペーシアをベースに、クロスオーバー風味のアレンジを加え1年後に登場。タイヤサイズや最低地上高は通常のスペーシアと同じ。
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