クルマ好きほど日頃のメンテナンスはできるだけ自分でやりたいと考えるもの。DIYでの整備は愛車のコンディションを知るために大切な半面、プロに任せないと大きな事故につながりかねない箇所もあり、その見極めが重要だ。
文/井澤利昭、写真/写真AC
「早期発見できてよかった!!」「キズを広げたっ!?」メンテンナンスは自分でやっていい? やっちゃダメ?
■難しく考える必要なし! 洗車は超簡単なDIY作業のひとつ
灯火類は、汚れがひどいと十分な光量を確保できないことも。こういった細かな部分までしっかりと洗うことで、そのクルマが本来持つ性能を引き出し、トラブルを未然に防ぐことができる
愛車を常にベストな状態に保ち、故障などのトラブルやそれが原因の事故を未然に防ぐために重要なのが日頃のメンテナンスだ。
クルマのメンテナンスと聞くと、メカにうとい人は何だか難しく感じてしまうかもしれないが、特別な知識を必要とせず誰にでも簡単にできることもあるため、愛車のコンディションを把握するためにも、ぜひ日常的に実践したい。
そこでメンテナンスの第一歩としてまず最初に手をつけたいのが“洗車”だ。
洗車の目的はもちろんクルマの見た目を美しすることではあるが、ボディやタイヤに付着した汚れを落とすことで、金属のサビや樹脂やゴムの劣化などを防ぎ、愛車の寿命を大きく延ばす効果も期待できる。
また、洗車時に合わせて車体各部を目視で確認することで、キズや劣化といった不具合を見つけることができるという利点もあり、大きなトラブルを未然に防ぐきっかけにもなりうる。
愛車を大事にしたい気持ちはあるものの「専門知識がないから……」と、日頃のメンテナンスをディーラーやショップに任せっぱなしにしていたという人は、まずは洗車のときの「コンディションチェック」から始めてみてはどうだろうか。
■これなら簡単! 誰にでもできるタイヤの空気圧チェック
タイヤの空気圧を測定できるエアゲージは、カー用品店やネット通販などで簡単に手に入れることができる。価格も1000円程度からとリーズナブルなため、クルマ好きであれば常備しておくのも悪くない
洗車よりもさらに一歩踏み込んだ、DIY初心者でもできるメンテナンスとしてあげられるのが、タイヤの空気圧やエンジンオイルのチェックだ。
タイヤの空気圧は安全に走行するだけではなく、燃費にも大きく関わってくるため、頻繁にチェックしておきたい。空気圧をチェックするためのエアゲージは1000円代から購入できるので、今後のためにも常備しておくことをお薦めする。
また、ガソリンスタンドやカー用品店で点検をお願いできるほか、一部のスタンドや洗車場ではセルフで使える充填機が備えられているところもあり、それらを活用するのも手だ。
空気圧の規定値は運転席側のドア付近に貼られたラベルで確認できるため、チェック時の値がそれより低くなっている場合は、規定値までしっかり充填しておきたい。
■エンジンオイルの汚れチェックはDIYで、交換はショップで
車種によって異なるものの、カーエアコンのフィルターも比較的簡単に交換ができる消耗品。価格も2000円程度からとリーズナブルなため、工賃を抑えたいのであれば自分で挑戦してみるのもありだ
いっぽうのエンジンオイルのチェックは、特別な工具や機器を必要としないためさらに簡単。
エンジンが停止した状態でボンネットを開けたら、エンジンに付いているリング状のつまみ=オイルレベルゲージをゆっくりと引き抜き、あらかじめ用意しておいたウエスやペーパータオルなどでレベルゲージに付着したオイルを拭き取る。
このときウエスに付着したオイルに透明感があれば問題ないが、黒く変色するなど汚れていたりザラザラする感触がある場合は、オイル交換の必要がある。
続いてオイルを拭き取ったレベルゲージを再度しっかりと差し込みオイルの量をチェック。先端に付着したオイルが「F(上限)」と「L(下限)」の間に収まっていればOKだ。
ただし、汚れがひどい場合は、オイル漏れ、残量不足を示す警告灯が点灯しているなどの緊急事態に陥ったとき以外、オイルの継ぎ足しはしないことが原則。
オイル交換は古いエンジンオイルを吸い出す器具や、廃油処理箱、オイルフィルターの交換が必要な場合はオイルフィルターなど、準備するものが多いのに加え、ある程度のスキルが必要となるため、DIY初心者はディーラーやショップに依頼するのをお薦めしたい。
■お財布にも優しい! 消耗品の交も自分でやれば工賃いらず
クルマのパーツのなかには、消耗品として、その性能が大きく低下する前に定期的な交換が必要なものがある。
そんな消耗パーツのなかでも、ワイパーゴムやエアコンのフィルターなどは比較的簡単に交換ができ、DIY初心者でも作業が可能な箇所だ。
ワイパーゴムは、雨が降ったときに視界をクリアにし、安全に走行するための重要なパーツ。ワイパーゴムのみなら1本1000円以下で購入できるため、拭きムラができたり、動作時に異音がするようであれば早めの交換するのがお薦めだ。
同じワイパー周りの消耗品であるウィンドウウォッシャー液の補充も、DIYで簡単にできるメンテナンスのひとつ。こちらも残量をこまめに確認し、タンクが空になる前に補充するようにしておきたい。
また、エアコンの利きが悪くなったり、カビ臭い、生乾きの臭いがするなどの異臭がする場合はフィルターをチェックしてみよう。
エアコンのフィルターは一部の車種を除いて助手席側のグローブボックス周辺に内蔵されおり、意外と簡単に取り外すことができるようになっている。
取り外したフィルターにホコリがたまっているようならハケやブラシ、エアブローなどを使って落とし、水洗いが可能なものであれば流水でしっかりと洗うことで嫌な臭いが軽減することができる。
ただし、カビで真っ黒になっているなど、汚れがあまりにひどい場合は新品に交換しよう。フィルター自体は2000~4000円程度で購入が可能だ。
■こんなところは自分でやっちゃダメ! プロに任せるメンテナンス
タイヤ交換時に重要となるのが、締め付けのトルク管理。一般的に普通車で10~12kg(約100~120N・m)、軽自動車では8~10kg(約80~100N・m)程度とされ、これを守らないと走行中にタイヤが外れて大惨事につながる可能性も
愛車のメンテナンスはできるだけ自分でやりたい! という気持ちはとてもいい心がけであるものの、素人が触ると大きな事故につながるものもあるだけに、そういった箇所のメンテナンスは、やはりプロに任せたい。
特にクルマを止めるためのブレーキ周りは重要保安部品にも指定されており、正しく動作しないと命に係わる重大な事故を引き起こすおそれがある。
そのため、ブレーキパッドやブレーキフルードの交換はプロに依頼しよう。
意外に思うかもしれないが、タイヤの交換もプロに任せたい作業。これからの時期に必要となるスタッドレスタイヤへの交換や、タイヤを長持ちさせるためのローテーションといった作業も同様だ。
その理由は、取り付ける際の適切なトルク管理やホイールバランスの調整などが必要となるため。加えてジャッキアップなど作業時に危険があることや、ブレーキと同じように作業ミスによるトラブルが大きな事故へとつながる可能性があるからだ。
古いクルマでは簡単にできたバッテリーのメンテナンスや交換も、ハイブリッド化や電装品の多様化によって複雑化した現代のクルマでは、専門知識のあるプロの手に委ねるべきだろう。
■不具合が出る前の確認が吉! メンテナンスのサイクルは?
クルマ好きなのなかには洗車が趣味という人も多いかと思うが、何事もやりすぎは禁物。特にタイヤなどのゴム製品は、洗剤やケミカルを多用しすぎると劣化を早める可能性があるため、注意が必要だ
ではこれら愛車のメンテナンスは、どれぐらいの頻度でやればよいのだろうか?
まずメンテナンスの基本ともいえる洗車だが、クルマの汚れ具合にもよるものの、おおむね1カ月に1回程度が目安。
特にタイヤなどのゴム製品は、洗いすぎたりケミカル類を多用すると逆に劣化を早めてしまうこともあるため、汚れが目立つようになったタイミングで水洗いする程度で問題ない。
同じく月イチでやっておきたいのが空気圧のチェック。こちらも洗車のタイミングに合わせて習慣化しておけば、確認を忘れる心配も少なくなるはずだ。
いっぽう、1年単位での交換が推奨されているのがエアコンフィルターやワイパーゴムの交換。
これらの寿命は使用頻度によって差が出るものの、性能の低下や不具合が出る前に交換しておくとより安心できる。
半年に1回、または5000km~6000kmが交換の目安といわれるエンジンオイルや、2~3年程度が寿命とされるバッテリーなど、プロに任せるメンテナンスは車検や定期点検時にチェックをお願いし、消耗具合や予算も考えて交換などの相談をするのが得策だろう。
近年はクルマのハイテクが進み、自分で手がつけられる場所は限られてきているものの、プロの手を借りながら愛情を持って日頃のメンテナンスをDIYで行えば、愛車の寿命をさらに延ばしたり、より高い安全性を確保できることは間違いない。
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計測機器が無いと下手に手を出せない。