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同じ出発点 異なる到達点 ランチア・ガンマとシトロエンCX 協力関係が生んだ2台 後編

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同じ出発点 異なる到達点 ランチア・ガンマとシトロエンCX 協力関係が生んだ2台 後編

37年も保管されていたガンマ・ベルリーナ

改めて今回の2台を並べて見ると、どちらのスタイリングも新鮮。シトロエンCXは一般的な感覚で評価しても美しい。現代の交通に紛れても、存在感は小さくない。他方のランチア・ガンマ・ベルリーナは個性が強く、クセがある。

【画像】同じ出発点 異なる到達点 CXとガンマ・ベルリーナ 同時期のランチア シトロエンDSも 全112枚

レッドのシトロエンCXは、後に登場した高性能な2400 GTi。1978年式で、アルミホイールを履き、マットブラックのボディトリムが印象を引き締めている。ファストバックのフォルムを持つが、ガンマと同様にトランクリッドは独立している。

オーナーのリチャード・ジェームス氏は、ロールス・ロイスやベントレーの内装を手掛ける職人。普段使いのクルマとして不満はないと笑顔を浮かべる。「クロームメッキ・バンパーが備わる、前期モデルの方が好きです」

このCX 2400 GTiは2022年にフランスで購入し、サスペンションとステアリング、ブレーキ、電気系統などを整備。気兼ねなく乗れる状態へ仕上げた。「現代的ですが、面白いくらい変わっていますよね」

シルバーのランチア・ガンマ・ベルリーナは、走行距離が僅か1600km足らずという極上車。現存する例では、最も走行距離が短い1台だろう。オドメーターが25kmを指した状態で、トリノのランチア・ディーラーに眠っていたという。

英国人が注文したクルマで、契約後にグレートブリテン島へ持ち帰る予定だったが、その人物がディーラーを訪れることはなかった。そのまま2014年まで、37年も保管されていたらしい。

エレガントな雰囲気が漂う両車の車内

ガンマ・ベルリーナの容姿はCXよりフォーマル。Cピラーが太く、スリットの入った装飾部分には給油口が一体になっている。ヘッドライトは、バキュームポンプで水平が保たれるという高機能。トランクリッドはダブルヒンジで大きく開く。

初期型から細かな改良が加えられた1977年式で、マニアの間ではシリーズ1.5と呼ばれている。内装には、ファッションデザイナーのエルメネジルド・ゼニア氏が手掛けたクロスが用いられている。Lのパターンが特徴的だ。

レザーシートとエアコンはオプションだったが、リアのブラインドとパワーウインドウは標準。組み立て品質も高く、車内にはエレガントな雰囲気が漂う。ダッシュボードは直線基調。ヒーターや送風の操作パネルには、個性的なボタンが並ぶ。

CXのインテリアも同じく上質。フローティング・メーターパネルが他ブランドとの違いを主張する。ドラム式のメーター類だけでなく、ライトやワイパーなどのスイッチ配列にも、少しの慣れが必要だろう。

ボンネットを開くと、ボッシュ社製の燃料インジェクションを採用した、シトロエンのプッシュロッド式直列4気筒が美しい姿を表す。ランチアの水平対向4気筒は、ウェーバー・キャブレターにかぶさる大きなエアクリーナー・ボックスの下に隠れている。

160km/hを超えてもたくましいガンマ

CXのエンジンは静かに回る。粘り強く扱いやすい。5速MTはGTi仕様でギア比がクロスしており、キビキビとした加速を引き出せる。

最高出力はCX 2400 GTiの130psに対し、ガンマの142psと、大きな違いはない。だが、最大値に近いトルクを2000rpm付近から発揮する後者の方が明確に活発だ。

CXは速度上昇とともに穏やかに転じていくのに対し、ガンマは160km/hを超えてもたくましい。滑らかに回り、高回転域でも息苦しくなる様子はない。フィーリングの良い水平対向4気筒は魅力を生んでいるが、アキレス腱でもあった。

ガンマのクラッチペダルは重く、シフトレバーの動きは曖昧。ギア比は理想的だが、フルードが温まってもゴムのような印象は変わらない。

ステアリングは驚く正確。クイックなレシオで、手のひらへの感触は濃い。カーブを攻めてもタイヤはスキール音を発しにくく、適度なボディロールを伴いながら、アンダーステアは最小限。アルファ・ロメオ・スッドにも似た、落ち着きと機敏さがある。

対するCXは、運転環境と同様にドライバーの順応が必要。ブレーキは鋭く効き、ステアリングのレシオはクイックでセルフセンタリング性が強い。手荒く扱うと、途端に不一致感が出てくる。

グリップ力は高いものの、フロントノーズが重く、カーブでのマナーは魅力的ではない。ダンパーとアンチロールバーが強化された、2400 GTiでも。

高速コーナーではしっとり安定しているものの、タイトコーナーでは全長4666mmという、大きめのボディを実感する。シフトフィールも曖昧だ。

シトロエンへ期待する通りの快適性

高速道路の速度域へ届くと、風切り音やロードノイズはガンマより小さいことへ気が付く。僅かに、洗練性ではCXが勝るといえる。

乗り心地は、低速域でもしなやか。1970年代から1980年のシトロエンへ期待する通り、高級車のような快適性を味わえる。対するガンマは、路面からの入力の影響を受けやすい。

ガンマで惜しまれるのは、開発時にランチアのフラッグシップへ何が必要なのか、上層部が整理できていなかったことだろう。より上級なフィアット130に並ぶ存在でもなく、フルビアの直接的な後継モデルというわけでもなかった。

進化を重ねたCXを横目に、ガンマは同カテゴリーでの地位を築くことができなかった。1980年には燃料インジェクション化したシリーズ2へ進化し、ガンマ・クーペも追って登場するが、販売は振るわず。イタリアの税金制度へ対応した、2.0L版も同様だった。

フィアットにとって、ガンマの失敗は大きな痛手にならなかったかもしれないが、合理化されたランチアの進むべき道へ悩んでいた様子が伝わってくる。走りは素晴らしいものの、開発が不充分で、オーナーには小さくない不安を与えた。

フランスでは、CXの魅力を多くの市民が理解していた。スタイリングが似ていたガンマは、ブランドを支えるには頼りないまま、モデルライフを終えたのだった。

協力:HCクラシックス社、リチャード・カープ氏

シトロエンCXとランチア・ガンマのスペック

シトロエンCX 2400 GTi(1977~1984年/欧州仕様)

価格:6350ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約193万円)以下(現在)
販売台数:8万8231台(2400 GTiのみ)
全長:4666mm
全幅:1730mm
全高:1359mm
最高速度:183km/h
0-97km/h加速:10.1秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1375kg
パワートレイン:直列4気筒2347cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:130ps/4800rpm
最大トルク:20.0kg-m/3600rpm
ギアボックス:5速マニュアル

ランチア・ガンマ・ベルリーナ(1976~1983年/英国仕様)

価格:7136ポンド(新車時)/1万ポンド(約161万円)以下(現在)
販売台数:1万4554台(ガンマ合計)
全長:4580mm
全幅:1730mm
全高:1410mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:9.6秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1320kg
パワートレイン:水平対向4気筒2484cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:142ps/5400rpm
最大トルク:21.1kg-m/3000rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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