跳ね馬のDNAを完璧に体現
フェラーリ・ジャパンは、5月3日にアメリカ・マイアミで発表されたフェラーリ「12Cilindri(ドーディチ・チリンドリ)」が早くも日本に上陸したことを発表した。これに伴い、「Ferrari 12 Cilindri Japan Premiere」を東京都内にて6月11日から3日間にわたり開催し、招待顧客向けに国内で初披露を行う。
【FIRST PICTURE】 新デザインによる懐古主義からの脱却と伝統のV12気筒エンジンの共存「フェラーリ・ドーディチ・チリンドリ」
発表会では冒頭に代表取締役社長のドナート・ロマニエッロ氏が挨拶。「フェラーリのV12エンジンは1910年の275GTBから続く歴史があり、まさにDNAである」と語った。
続いて登壇したマラネッロ本社のヘッド オブ プロダクト マーケティングのエマヌエレ・カランド氏は、「ドーディチ・チリンドリのエンジンは812コンペティツィオーネ由来ではあるものの、一層官能的なサウンドに仕上がっています」と自信をのぞかせた。
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フェラーリ12チリンドリの詳細は以下の通り。
徹底した重量削減の行われたエンジン
ドーディチ・チリンドリに搭載されるF140HDエンジンは、自然吸気フェラーリV12の新バージョン。最高出力830ps、最高回転数9500rpm に引き上げられている。改良されたコンポーネントやソフトウェアは、一部が既に812コンペティツィオーネに採用されており、同カテゴリートップのパフォーマンスを実現したもの。
最高回転数の引き上げのため、エンジンは重量と慣性の徹底した削減が行われている。チタン製コンロッド、アルミニウム合金製ピストン、スライディング・フィンガーフォロワー式バルブトレインなどを採用。スライディング~は、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC) コーティングを施したスチール製で、油圧式タペットを回転軸として使い、カムの動きをバルブに伝達。この採用で重要な接点の摩擦係数が下がり、エンジンの機械効率が大幅に高まったという。
さらに、自然吸気エンジンでは「史上初の革新的な」ソフトウェア・ストラテジーを開発。その効果で、ギアを上げるにつれてピックアップがスムーズかつリニアに変化するのを感じられるとのこと。また今回新たに、革新的なアスピレーテッド・トルク・シェイピング(ATS)によって、3速と4速ギアのトルクカーブを形成。電子制御によって加速に影響を与えずにトルクの感覚を向上させ、ドライビング・プレジャーを高めるという。
加えて、エンジンと潤滑サーキットの機械効率の最適化、ガソリン直噴システム(GDI、噴射圧350バール)、新たな排気システム(セラミック触媒コンバーター)の導入などが実施されている。
また、高揚感のあるエンジンサウンド実現のため吸排気ダクトのあらゆる要素を最適化。排気ダクトは各バンク6-in-1の等長マニホールドとし、中央部に革新的設計を採用。その結果、点火順序による美しい倍音成分をすべて響かせる、フェラーリならではのV12の咆孝が実現したという。ダクトの形状やサイレンサー・バッフル内部の流体力学は、背圧を最小限に抑え、パワーデリバリーの向上に貢献するように設計されているとのこと。
8速DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)は、SF90ストラダーレなどでもすでに好評のもの。従来のV12モデルに対して低速ギアのギア比が5%低くなり、21インチの大径タイヤとの組み合わせによって、タイヤでのトルクが12%増大したとしている。
最先端のダイナミクス制御技術、4WSが採用されたシャシー
ドーディチ・チリンドリは、最先端のダイナミクス制御技術を盛り込んだフロント・エンジン・ベルリネッタだという。296GTBでデビューしたABS Evoと6Dセンサーを12チリンドリでも採用、これによって、バーチャル・ショート・ホイールベース(PCV)3.0やサイド・スリップ・コントロール(SSC)8.0といったシステムによる最適で精密な制御が保証されるほか、制動距離が短縮され、より正確で再現性のあるブレーキングが可能になったとのこと。SSC8.0は、フェラーリの制御ユニットの新たな進化版である。
また、四輪独立操舵(4WS)も備わっている。812コンペティツィオーネでデビューしたこのシステムは、各タイヤの動きを独立して制御、コーナリング中のヨー・マネージメントと、素早い切り返しでの応答性を向上させるという。後輪操舵は各アクチュエーターのポジション制御の精度が著しく高められ車軸の反応時間を短縮、コーナリング中の応答性が向上したとのこと。
ハンドリングの最適化には、フロント48.4:リア51.6という重量配分、20mmのホイールベース短縮(812スーパーファストに対して)も大いに貢献したという。
タイヤはミシュランのPilot Sport S5かグッドイヤーのEagle F1 Super sportを装着できる。いずれもフロント275/35ZR21、リア315/35ZR21という新サイズ。コンパウンド、トレッドの設計コンセプト、ケーシングの特性に関して最新の技術を採用し、パフォーマンスを最大化、ドライ路面でのグリップレベルとバランス、限界域とウェット路面での安定性といった性能のほか、快適性と車内外の騒音特性も向上したとのことだ。
軽量化と剛性の向上を実現したプラットフォーム
シャシーは総アルミニウム製、重点的に注意が払われたのはショックタワーやAピラー、Cピラーといった鋳造コンポーネントのジオメトリーで、ねじり剛性を高めると同時に軽量化も果たしたという。
新シャシーの上を覆うグリーンハウスは、卓越したNVHと安全性が保証されており、重量を増加させずに剛性を引き上げることができたとのことで、ねじり剛性は812スーパーファストから15%向上。結果的にサスペンションの精度にも恩恵をもたらしたという。また、鋳造をより幅広く取り入れたことで、組立を必要とする押出コンポーネントの数が大幅に減少し、組立工程の効率性が高まったとしている。
フェラーリのプロダクションモデルとしては初めて、100%リサイクル素材の二次合金を、ギアボックス・サブフレームのショックタワーに使用。これにより製造1台につきCO2排出量を146kg削減、化学組成をわずかに変えることで、非リサイクル合金と同じ機械的特性が保証されたという。
スタイリングルールを大胆に書き換えたエクステリア
フラヴィオ・マンゾーニとフェラーリ・スタイリング・センターのデザインチームによってデザインされたドーディチ・チリンドリは、従来のフロントV12エンジン・モデルのスタイリングルールの、大胆な書き換えを目指したとしている。
デザインはクリーンなラインで構成され、懐古趣味とは一線を画したとのこと。自動車の世界とは関係の薄いデザイン要素を模索することも目標の一つであったとされており、例えばヘッドライトの細長いフォルムや伝統的なグリル形状を排し、幾何学的形状や交差が生かされている。リアのアーキテクチャーにも同様のアプローチが見られ、テールライトもリア全体を横切るくぼんだブレードの中に埋め込まれた。
また、リア・スポイラーの代わりに、リア・スクリーンと一体化した可動フラップがふたつ備わり、特徴的な三角形のテーマを浮かび上がらせている。トランクリッドの25nmのノルダーとアクティブ・エアロはテールの特徴的要素となっており、前者は、空気抵抗が最小のときに、車両の空力効率を維持するのに必要な再加圧を作り出す。可動フラップは、「ロー・ドラッグ」(LD) と「ハイ・ダウンフォース」(HD) のふたつの仕様を可能とする。車速60km/hから300km/hの間ではハイ・ダウンフォースのポジションを取り、その効果が最大になるという。
アンダーボディは、風洞で最適化された3組のボルテックス・ジェネレーターによってダウンフォースを発生。中央部は、利用できるエネルギーを維持したまま気流がリア・ディフューザーに導かれるよう設計されており、そのためトランスミッション・トンネルの開口部を縮小。リアにはボルテックス・ジェネレーター1組あり、効果的なダウンフォースの生成に使われると共に、気流をディフューザーヘ導く役割を果たすという。
デュアル・コックピットをテーマとしたインテリア
インテリアのスタイリングは、ローマ/ローマ・スパイダー、プロサングエなどに見られるデュアル・コックピット・アーキテクチャーを採り入れたもの。ほぼ左右対称の構造で、ドライバーとパッセンジャーの2個のモジュールから成る。また、広々としたサイズの着色ガラスルーフが取り入れられ、キャビンの明るさと室内の開放感を格段に向上させると同時に、夏でも冬でも最適な熱効率が確保されたとのこと。
インテリア・デザインは3つの階層に分かれているとのことで、その第1はダッシュボード上面であり、左右へと回り込んでドアパネルの内張りに溶け込む。次は中央部、そしてみっつ目はフットウェルとシートを含む部分。各レベルは明確に区切られ、色と素材の組み合わせでデュアル・コックピットの効果を強めることが狙いとされている。さらに、このモデルでは環境サステナビリティーにも力を注いでおり、リサイクル・ポリエステルを65%含むアルカンターラCなどの素材が、幅広く採用されている。
ドーディチ・チリンドリでは、3個のディスプレイで構成された新しいヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)が導入され、主な機能はすべて、中央の10.25インチ静電容量式タッチスクリーンで操作できる。加えて15.6インチのドライバー用ディスプレイが、ドライビングとビークル・ダイナミクスに関するすべての情報を表示。さらにパッセンジャー用の8.8インチのディスプレイが備わる。
また、12チリンドリは、Apple Car PlayとAndroid Auto を利用するモバイルデバイスとの接続システムを標準で装備し、いずれも新しいセンター・ディスプレイから簡単に操作できる。センタートンネルにはワイヤレス充電マットも標準装備。オプション装備としては、Burmesterと共同で開発した高級オーディオ・システム(15個のスピーカーで構成され1600Wの大出力を誇る)がある。
7年間純正メンテナンス・プログラム
「卓越した品質基準と、さらなるカスタマー・サービスの充実を重視する」というフェラーリでは、12チリンドリに7年間の純正メンテナンス・プログラムを用意。最初の車両登録から7年間、パフォーマンスと安全性が最高の状態で維持されるべく、すべての定期メンテナンスを保証するという。
定期メンテナンス(20,000kmごと、もしくは毎年1回。走行距離の制限なし)では、純正スペアパーツおよび最新の診断テスターを使い、マラネッロのフェラーリ・トレーニング・センターで研修を受けた有資格者による詳細な検査が受けられる。このサービスは、全世界の市場で展開する正規ディーラー・ネットワークにて利用できるとのこと。
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12気筒のMT、どこかで縁がないだろうか。
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