2021年9月、トヨタカローラクロスが発売され、コンパクトSUV市場は賑わいをみせている。
今回は、コンパクトかつ200万円台で買えるヤリスクロス、ヴェゼル、キックスと、カローラクロスをあらゆる角度から比較する。どのクルマが一番お買い得なのか?
文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、HONDA、NISSAN、中里慎一郎
表/ベストカーWeb編集部
[gallink]
カローラクロス登場! コンパクトSUV人気車種を比較
コストパフォーマンスの高さが魅力のカローラクロス。事前受注開始から約1か月で、およそ1万3500台の注文が入るなど好調な販売が続く
最近、コンパクトSUVの人気が高い。2021年9月には、カローラクロスが発売され、注目を集めている。そこでライバル車のヴェゼルとキックス、同じトヨタ車でボディがさらにコンパクトなヤリスクロスも含めて、4車の買い得度を比べたい。
まず、カローラクロスはハイブリッドが割安で、現時点では受注台数の90%を占める。キックスはハイブリッドのe-POWERのみで、ノーマルエンジンは選べない。駆動方式も前輪駆動の2WDのみだ。そこで各車とも、ハイブリッドを搭載する2WDの買い得グレード同士で比較する。
そのラインナップは以下の通りだ。カローラクロスハイブリッドZ(299万円)、ヴェゼルe:HEV・Z(289万8500円)、キックスX(275万9900円)、ヤリスクロスハイブリッドZ(258万4000円)になる。
室内の質感/前後席の居住性/荷室の使いやすさ比較
ヴェゼルのインパネ。操作系の最適な配置や視界のよさを追求したデザイン
居住性を比べると、最も快適な1位はヴェゼルだ。インパネなどの内装が上質で車内も広い。身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ2つ半に達する。
居住性の2位はキックス。内装の質は平均水準だが、後席の膝先空間は、前述の測り方で握りコブシ2つ弱になる。3位はカローラクロスだ。内装はキックスよりも少し上質だが、後席の膝先空間は少し狭く握りコブシ1つ半に留まる。
4位はヤリスクロス。内装の造りは基本的にコンパクトカーのヤリスと共通で、後席の膝先空間は握りコブシ1つ少々と狭い。1~3位の車種はファミリーカーとしても使えるが、ヤリスクロスは2名以内の乗車に適する。
※順位
1位 ヴェゼル
2位 キックス
3位 カローラクロス
4位 ヤリスクロス
カローラクロスの荷室容量は487Lを確保(5人乗車時)。さらにハンズフリーパワーバックドアが搭載。簡単に荷物を積むことが出来る
荷室は居住性ほどの差が付かない。この4車は海外でも販売され、後席よりも荷室が重視されるからだ。特に荷室容量の大きな1位はカローラクロスで、リヤゲートの角度も立てたから、背の高い荷物も積みやすい。
2位はヴェゼル。後席の足元空間を広げたから、荷室長(荷室の奥行寸法)は特に長くないが、シートアレンジは多彩だ。燃料タンクを前席の下に搭載するから、後席をコンパクトに畳めて、床の低い大容量の荷室に変更できる。
3位はキックスで、シートアレンジは単純だが、荷室長に余裕があるから使いやすい。4位はヤリスクロスだ。リヤゲートを寝かせたから、背の高い荷物は積みにくい。
※順位
1位 カローラクロス
2位 ヴェゼル
3位 キックス
4位 ヤリスクロス
走行性能/WLTCモード燃費比較
キックスは、e-POWERならではの加速性と静粛性を持つ。ワンペダル操作で楽に楽しく運転することが出来る
次は走りを比べる。加速性能とエンジンノイズの1位はヴェゼルだ。滑らかで加速力に余裕があり、静粛性も優れている。
2位と3位は引き分けで、カローラクロスとキックスだ。十分な動力性能が確保されてノイズも抑えている。4位はヤリスクロス。動力性能は十分だが、直列3気筒エンジンがベースだから、登坂路などでアクセルペダルを踏み込むとノイズが大きくなりやすい。
走行安定性と乗り心地のバランスは、カローラクロスとヴェゼルがほぼ引き分けで1位になる。ただしカローラクロスの場合、買い得グレードになる2WD・Zは、リヤサスペンションが車軸式でタイヤサイズは18インチだから乗り心地が下がる。
その点で4WDは、リヤサスペンションが独立式になって走行安定性と乗り心地が両方ともに向上する。またグレードが中級のSに下がると、タイヤが17インチに変わるから、操舵感は鈍めだが乗り心地はむしろ最上級のZよりも快適になる。従って優れた条件が重なる4WD・Sの乗り心地は、ヴェゼルを上まわる。
走行安定性と乗り心地の3位はキックスで、低速域の乗り心地が少し硬い。4位も乗り心地が気になるヤリスクロスだ。
ヤリスクロスのWLTCモード燃費は27.8km/L。同社のカローラクロスは26.2km/L。排気量は異なるが、燃費数値の差は6%と少ない
WLTCモード燃費は、最も優れているのがヤリスクロスハイブリッドZで27.8km/Lになる。2位はカローラクロスハイブリッドZで26.2km/Lだ。エンジンの排気量はヤリスクロスが1.5L、カローラクロスは1.8Lに拡大するが、燃費数値は6%しか変わらない。3位はヴェゼルe:HEV・Zで24.8km/L、4位はキックスXの21.6km/Lとなる。
安全面を中心としたメカニズムや装備と価格のバランスは、各車とも横並びに近い。コンパクトSUVは人気のカテゴリーとあって、競争も激しく、価格の割安感が拮抗するからだ。
走行性能と燃費についての順位表
総合的1位はヴェゼル!! 話題のカローラクロスは何位?
総合評価ではヴェゼルが1位。質感の高い内装や滑らかな走り、使い勝手の良さを兼ね備えながら、価格を抑えた最もお買い得な1台
以上の比較内容に装備も加えて価格の割安感を判断すると、総合的な1位はヴェゼルe:HEV・Zだ。装備については、後方の並走車両などを検知するブラインドスポットインフォメーション、リヤゲートの電動開閉機能なども標準装着する。内装は上質で、後席も広く、シートアレンジも多彩だ。その上で価格を289万8500円に抑えた。
2位はカローラクロスハイブリッドZだ。ブラインドスポットモニターはオプションだが、リヤゲートの電動開閉機能、7インチのディスプレイオーディオ、専用通信機も標準装着される。後席にも相応の広さがあり、荷室長はタップリと確保した。走行安定性と乗り心地も満足できる。燃費も良好だ。価格は299万円だから、ヴェゼルe:HEV・Zよりも少し高いが、買い得度はかなり近い水準になる。
3位はキックスX。運転支援機能のプロパイロットは、ノートやノートオーラではオプション設定だが、キックスXは全車に標準装着した。特に目立つ装備はないが、価格は275万9900円と割安だ。実用重視のユーザーに適している。
4位はヤリスクロスハイブリッドZだ。価格は258万4000円だから、カローラクロスハイブリッドZに比べて40万6000円安いが、リヤゲートの電動開閉機能は標準装着されず7万7000円のオプションになる。カローラクロスハイブリッドZでは、シート生地に本革が使われることも考えると、ヤリスクロスに比べて約14万円は内容が充実する。そうなると実質差額は約26万円に縮まるわけだ。
つまりヤリスクロスに約26万円を加えると、ボディが拡大されて、後席と荷室の広いカローラクロスが手に入る。走行安定性、乗り心地、静粛性などカローラクロスが上まわるから買い得感も強い。
コンパクトSUVを買う時は、販売店の試乗車で上記の4車を乗り比べて、選ぶ車種を判断すると良いだろう。
総合順位
1位 ヴェゼル
2位 カローラクロス
3位 キックス
4位 ヤリスクロス
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