ユーノス・ロードスターの発売前と後では世界的にクルマへの価値観が変わってしまったといえる。発売前にオープン2シーターといえばMGやトライアンフに代表されるイギリス製のライトウエイトスポーツカーがメインで、それらはエアコンはおろかクーラーもなく、ましてパワーステアリングなどの快適装備とは無縁だった。オープンエアを楽しむなら少しのことは我慢するというのが、昔ながらの流儀だったからだ。我慢を強いる存在だったからだろう、80年代にもなるとこうした昔ながらのオープン2シーターは生産を終了して姿を消してしまう。もはや過去の存在でしかないと思われていたところに発表されたのがユーノス・ロードスターだった。
ハードトップを装着した姿はオープンとは異なる魅力がある。昔ながらの価値観を払拭して快適かつ楽しい存在として、ユーノス・ロードスターは世界中で愛されることになる。その後、他メーカーから続々とオープン2シーターが発売される事態となり、いかにロードスターの影響力が強かったかを物語っている。ただ、時代は巡り巡る。ロードスターは2代目のNB、3代目のNCへ進化を続け、いつしか初代NAは中古車相場が底値になる。ヒト桁万円で買える時代が続くと、初代NAの多くは改造ベース、サーキット走行用ベースとして人気になる。その頃にネットオークションで、やはりヒト桁万円で手に入れたというのが今回紹介する西澤好恵さん。なぜNAを選ばれたのか聞くと、誰とは教えていただけなかったが「サーキットでコースレコードをたくさん持つ人」に憧れて選んだのだそう。
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自家塗装のミラー越しにロールバーへ扇風機が固定されている。パナスポーツのフォーミュラワンを履く足まわり。給油口はレーシングタイプのアルミ製に変更している。定番のフジツボ製ステンレスマフラーで排気音を心地良くした。憧れの人がサーキット走行しているのだから西澤さんもサーキットを走るのかと思えば、そうではないという。実は旦那さんが長くAE86でドリフトを楽しんでいる人で、同行はするもののご自身でサーキットを走ることはないそう。とはいえ愛車のロードスターはロールバーまで装備された走り屋仕様。ご本人曰く「謎の」メーカー不明車高調システムやパナスポーツのアルミホイールで足元を固め、ボディはオールペイントによりピカピカに仕上げた。さらにホロを上げてオープンにすることは少ないし劣化もするため骨ごと取り外してしまった。そこへハードトップを装着して、ほぼこの姿のままで走り通している。サーキットを走るならロールバーは必須だしハードトップもあれば安心材料になる。サーキットを走らない西澤さんは、これらのアイテムをファッションとして楽しんでいる。だから給油口もアルミ製のレーシングタイプにしてサーキットから飛び出してきたようなスタイルを目指してきたのだ。
ナルディのステアリングや追加メーターが装備されたインテリア。走行距離は14万キロを越えたが、まだまだ元気。シフトノブのブーツを女性らしくアレンジしている。運転席は男らしく(?)フルバケットシートとして楽しんでいる。ロールバーを装着した室内にはブリッド製フルバケットシートを運転席に装備。快適性がウリだったユーノス・ロードスターだが、あえて古典的なスポーツカー像へ近づけている。「走るとガタガタうるさい」そうだが「それも大好き」と、路面の凹凸を正直に拾う特性に満足されているそう。ロールバーに扇風機が付いているのはなぜかと思えば「車内が暑い」のだそうで、換気用に追加している。
エンジンはノーマルのままでエアクリーナーだけ変更した。家族全員クルマ好きな西澤さん一家は2台でイベントに参加されていた。本気でサーキットを走るわけでもないので、ロードスターのエンジンはノーマルのまま。エアクリーナーとマフラーを交換してあるので吸排気音を楽しむ程度にしている。西澤さんのロードスターはすでに走行距離が14万キロを突破しているから、あまり激しいチューニングをしないのが無難といえそうだが、ノーマルだからといって壊れなかったわけでもないそうだ。トラブルや修理歴を聞くと「たくさんあり過ぎて…」との返事。すでに32年も前のクルマなのだから壊れるのも仕方ないところ。ただ、長く付き合うことで愛着は深まる一方のようで、入手から12年を経た今も手放す様子は一切ない。西澤さん一家は家族全員クルマ好きで、高校生になる息子さんはそろそろ運転免許が取得できる年齢になる。であれば、ロードスターを譲るという選択肢もあるのだが旦那さん曰く「すでに別のクルマを用意しました」と、さらに走りに向いたモデルを入手済みだとか。ご夫婦とも現在の愛車を譲る気はなさそうで、近いうちに家族3人が3台の愛車でイベントに参加する姿が拝見できそうだ。
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トランクとかか