電動キックボードが日本でも解禁される日が近づいてきている。今年4月19日、道路交通法の改正案が可決されたことで、電動キックボードなどの電動小型モビリティが、運転免許やヘルメットが必要とされない「特定小型原動機付自転車」に含まれることになったためだ。
そもそも電動キックボードは「原動機付自転車」として、いわゆる原付スクーターと同じ扱いとされていたのだが、今回の改正道交法により、電動キックボードは新設の「特定小型原付」という車両区分に分類され、最高速度は20km/hまでで、運転免許は不要とされる。
いよいよ電動キックボードが日本でも解禁へ! 施行までに抱える問題点を探る
年齢制限は16歳以上で、ヘルメット着用は努力義務とされているのだが、安全面はどのような感じなのかがクルマやバイクのユーザーにとっても気になるところだ。そこで、自身も電動キックボードを所有する国沢光宏氏に電動キックボードの抱える問題について詳細を検証してもらった。
文/国沢光宏、写真/国沢光宏、AdobeStock(トビラ写真:tsubasa-mfg@AdobeStock)
■免許は必要なく、施行までは1年かからない?
免許もヘルメット装着義務もない電動キックボードが日本でもいよいよ解禁される日が近づいてきているのだが……(maroke@AdobeStock)
我が国でも電動キックボードの規制緩和が始まる。日本の場合、16歳以上という年齢縛りこそあるものの、免許は不要。ヘルメット着装は「推奨」という欧米並みの「緩さ」になりそう。すでに衆院を賛成多数で通過しており、参院も大きな問題なく通過しそうな雰囲気である。決まれば2年以内の施行という決まりながら、今までの流れを考えたら遅くて1年。年内の可能性あります。
電動キックボードの規制緩和については多くの識者が反対論を展開している。私も基本的に反対だ。なぜか? あんな乗り物が車道に出てくれば大混乱必至だし、歩道を走られたら高齢者や幼児にとってリスクでしかない。交通事故死者も確実に増えるだろう。
以下、電動キックボードについてQ&A方式でさまざまな方向から切り込んでみたいと思う。ちなみに私は電動キックボードを持ってます。
■交通違反をどのように取り締まる?
電動キックボードが解禁されれば人との接触事故なども充分想定できるだけに、解決すべき問題点を洗い出しておく必要がある(viaduct_k@AdobeStock)
Q:免許は?
A:最高速20km/hまでの電動キックボードは16歳以上であれば不要。自転車だって最高速20km/h以上出ることを考えれば免許不要で問題ないと考える。とはいえ、20km/h以上出るかどうかの判断をどうやってするのかは不明。電動キックボードの最高速はプログラムでいくらでも変えられます。警察がネズミ取りを頻繁に行わないかぎり、最高速を守らせることなどできないだろう。
Q:違反行為はどうする?
A:ここが一番大きな問題になってくると思う。警察は「ほぼ」取り締まっていない自転車と同じような状況になったら、もはや街中がカオスになってしまう。クルマの違反についちゃ軽微であっても容易にキップを切るけれど(ゴールド免許の人の少なさが警察の厳しさを物語っている)、自転車の違反は大半が見逃されてしまっている。
Q:なぜ自転車の違反は見逃されるのか?
A:免許取得者に対しては「反則金制度」という非常に簡易な罰則制度が導入されており、ひとりの警察官の判断で違反とされ、キップ切られた人は素直にサインして認める。これで終了。自転車の違反は1件ごとに検察へ書類送検しなければならず、膨大な手間がかかる。そのわりに罪は軽く、警察も「見ざる」を決め込む。
Q:電動キックボードもそうなる?
A:免許不要ということは自転車の違反と同じ扱いにせざるを得まい。自転車と電動キックボードにも反則金制度を導入すれば交通違反は激減すると思うけれど、それには一定期間の準備が必要。規制緩和後はしばらく電動キックボードによる事故で、病院が忙しくなると懸念している。
■電動キックボードは交通の道具ではないことを認識する必要あり
国沢光宏氏がつい最近購入したばかりの最新型の電動キックボード「ナインボットF20A」
Q:電動キックボードは危険か?
A:4年前から電動キックボードに乗っている私、国沢光宏は瞬時も迷うことなく「危険!」と答える。なぜか? そもそも交通の道具として生まれた乗り物でないため、安定性や安全性という概念が薄い。例えば小径タイヤだから斜めのミゾなど通過する際、簡単に横滑りして転倒する。タイヤもグリップのことなど考えていないゴムの塊だ。
Q:ブレーキ性能はどうか?
A:大半の電動キックボードが貧弱。加えて基本的に前後にブレーキ付いてないと違法(自転車も「ピストバイク」と呼ばれる競技用自転車で公道を走ると捕まる)。ただ、付いていても効くかどうかの判定ができないため、実際の性能を担保していない。取り締まろうとしたって最初から無理だとわかっている。
■自転車よりも圧倒的に劣る走行安定性
そもそも電動キックボードの走行性能は自転車よりも圧倒的に安定性が低く、ふらついたり、転倒する可能性が高いことを筆者は指摘する(tsubasa-mfg@AdobeStock)
Q:走行性能はどうか?
A:自転車とケタ違いに安定性が低い。ホンの少し左右に重心を動かしただけで直進しなくなるほど。背中に荷物を背負うと重心高くなり、一段とフラつくようになってしまう。左右方向の回避動作だって鈍いし、確実性だってなし。20km/h以上出したらコントロールできなくなる可能性が出てくる。こんな乗り物が車道を走るなんて悪夢に近い。
Q:ナンバープレートは不要か?
A:20km/h以下の電動キックボードは『特定小型原動機付自転車』という扱いになり、ナンバー取得が義務づけられ、原付バイクに準ずる税金も払う。とはいえ、現状を考えたら今までの概念のナンバーというより登録証みたいな扱いになると予想。簡単に交付されるんじゃなかろうか。
Q:保険制度はどうなる?
A:自賠責保険が義務づけとなる。金額など現時点でアナウンスされていない。原付だと3年契約で年額3500円。それ以上になることはないと思う。現在のバイクと同じく、ナンバープレートに自賠責保険加入ずみのステッカーを貼るような運用になりそう。自賠責保険に加入していない時の罰則は不明。
■安全性の担保が確認できたら「ラスト1マイルの足」として可能性あり
現状では安全面に課題がないとは言えないが、上手に使えば電動キックボードの便利さは充分に享受できると言えるだろう(maroke@AdobeStock)
Q:国沢光宏は規制緩和になったらどうする?
A:逆説的になるけれど大いに利用したい。ということから『ナインボットF20A』という定評ある最新型の電動キックボードを買ってみた。私が4年前に買った初期型のナインボットがゴミだと思ったくらい進化しており、驚いた。タイヤはソリッドの8インチから空気入りの10インチになり、リアにはストップランプ連動のディスクブレーキが付く。15km/hからなら2mあれば停止可能。こういった製品を15km/h以下で使えば役立つかもしれません。
Q:興味はあるが、どうしたらいい?
A:とりあえず詳細が決まるまでは待つことを薦めておく。登録できないモデルを買うのはムダですから。個人的には車道と歩道の区別のない道を走り、自転車走行可能の歩道については6km/hという上限速度を守って積極的に使いたいと考えている。安全性さえ担保できたら、とても便利なラスト1マイルの移動手段だと思う。
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