BMWグループは2022年7月27日、MINIの次世代EVコンセプトカー「MINIコンセプト エースマン」を発表した。新しいMINIデザインの時代の幕開けを告げる都市型クロスオーバーのモデル。
ここでは、個性あふれる「MINIコンセプト エースマン」を詳しくご紹介。2030年代初頭にフルEVブランドへのシフトを表明しているMINIの将来に向けての提案とは?
「こ、これが次世代MINIか!??」 国内輸入車No.1 EVブランドの未来へいざ出陣!!
文/大音安弘、写真/BMW
「MINIコンセプト エースマン」とはどのようなモデルなのか?
次世代のEVコンセプトカー「MINIコンセプト エースマン」。ハッチバックのMINIとSUVのMINIクロスオーバーの間の溝を埋める新しいMINIファミリーの形
世代を超えて愛され続けるMINIの次世代モデルを想像したコンセプトカー「MINIコンセプト エースマン」が発表され、ドイツ・ケルンで8月29日まで開催中のコンピューターゲームの祭典「ゲームズコム2022」で一般公開されていた。
そのポップなカラーリングやデジタル技術を活用した内外装は、固定概念にとらわれず、自由な表現が行われているゲームショーの世界観とも重なる。次世代ユーザーのコアとなるさまざまなガジェットを自在に使いこなすZ世代に向けて、次世代MINIをアピールするのに、これほどふさわしい舞台はないだろう。
MINIコンセプトエースマンは、MINIの中核的モデルである「ハッチバック」シリーズとSUVの「MINIクロスオーバー」の特徴を融合させた都市型クロスオーバータイプのモデル。つまり、MINIシリーズの人気者たちの良いとこ取りをした欲張りな存在が目指されているわけだ。
同車は、EV専用車としてデザイン。ボディサイズは、全長4050mm×全幅1990mm×全高1590mmと、小ぶりのボディに仕上げられている。現行車と比較すると、全長がMINI5ドアハッチバックよりやや長めとなり、全高はMINIクロスオーバーよりも少し低い。全幅こそワイドだが、これはデザイン的な表現の高める要素だろう。
おそらく、市販車はもっと切りつけられるはずだ。EVの構造的メリットを活かしたショートオーバーハングのボディは、コンパクトながら、キャビンの最大化を図ることで、5人の乗車空間を確保。機能性を重視し、4ドア+テールゲートを備えている。
EVモデルらしくフロントマスクはグリルレス。上部にはLEDユニットが組み込まれ、ユニオンジャックが表現されている
クロスオーバースタイルのエクステリアの特徴を見ていこう。EVであることを主張すべく、フロントマスクはグリルレス。しかし、真正面から眺めると、しっかりとMINI顔に仕上がられているのが面白い。
象徴的なフロントグリルは、グリーンのライティング機構がグリルアーチを表現。MINIの進化を示すように、六角形スタイルから八角形スタイルに変更されている。さらにヘッドライトも丸目ではないものの、幾何学的なデザインに変換されているが、MINIらしさをしっかりと反映しているのは見事だ。
面白いのは、グリル部デザインの上部に、ライティングシステムが内蔵され、ユニオンジャックが表現されていること。その形状は、ヘッドライトのLEDピクセルとも組み合わされている。ユニオンジャックは、英国発祥のMINIを示すアイコンとしてエースマンにも取り入れられており、専用デザインのルーフラックやテールランプにも取り入れられている。これらも伝統的アイコンのひとつであり、現行型MINIのユニオンジャック柄のテールランプやクラシックの時代からユニオンジャック柄のルーフパネルに通じる。
またフェンダーモールやサイドのプロテクション、ワイドフェンダーなど、MINIクロスオーバーからのインスパイアされたものであるが、悪路走破性を示すというよりも、日常から遊びまでオールラウンドに楽しめることを示すエッセンスとして使われているようだ。
後方に向けて傾斜するガラスエリアとルーフラインは、スタイリッシュさと良好なエアロダイナミクスを兼ね備えたものだが、個人的には1世代で終わった個性派クーペクロスオーバー「MINIペースマン」の面影を感じてしまう。もしかすると、現代のMINIの歴史もしっかりと凝縮しようというアイデアなのかもしれない。
MINIの伝統を守りつつ最先端技術をたくさん盛り込んでいる!
シンプルなMINIらしいデザインと最先端のデジタル技術が組み合わされたインテリア
エクステリア以上に驚きにあふれているのが、インテリアだ。柔らかな曲線と素材で室内を覆うことで、ティータイムを楽しむ英国住居のリビングを彷彿とさせる。シート柄もアーティステックな仕上がりだが、ちょっとオールディーズで懐かしさもある。まるで古き良き英国文化も息づいているようだ。
コクピットデザインは、センターディスプレイを中心としたデジタルな構成だが、そのシンプルさは同時にクラシックMINIの世界観にも繋がるもの。ステアリングとシフトレバー、中央に配置された丸型メーターとトグルスイッチだけというのは、クラシックMINIの中でも特に初期型に近く、そのシンプルイズベストな設計思想に敬意を払ったものなのだ。
そのシンプルな構成で現代車の利便性を実現すべく、デジタル技術が活用される。操作機能を、中央の丸型ディスプレイとトグル、ステアリングスイッチに集約。マルチなセンターディスプレイは、自動車メーカーとしては世界初の有機ELディスプレイを採用し、高画質と鮮明な表現を可能に。
このディスプレイは、量産車にも採用される見込みで、そのオペレーションシステムには、Android系ソフトウェアが使われ、デジタル機能の拡張性も期待できる。ユニークなのは、ダッシュボード全体も表示エリアとして使うこと。これは走行機能というよりも、デジタル技術による内装の表現が行われているようだ。
またアンビエントライトの要素も、車内の内装に投影される映像のライトショーで表現されるので、ちょっとテーマパークぽさもある。また開錠時には、フロントグリルにユニオンジャック柄が表示され、グリル周りも点灯。アクセントとして、ヘッドライトのウィンカー機能が付いているのは、相棒感やペット感を高めてくれる愛らしい機能だ。
2030年以降電動化ブランドになるMINIの提案とは
個性が光るMINIコンセプトエースマンだが、現行型MINIでも取り組み始めた持続可能な取り組みをもう一歩推し進めている。内外装のクロームパーツの廃止。さらに内装では、英国車が得意としてきた心地よいレザーによるアイテムも排除されている。触感や快適性を保つべく、内装の素材も厳選。
ステアリングには、ラミネート加工されたベルベットベロア素材を使い、心地よい触感を維持。シートの座面は、フラット・ニットとベルベットベロア、ワッフル織りの布地を使用。ダッシュボードやドアトリムには、再生ポリエステル製ニット織物を使っている。サスティナブルを求められる時代の対応ともいえるが、それは同時に新たな武器にもなるといわんばかりの提案は、ファッション力の高いMINIらしいメッセージだ。
MINIも2030年以降に電動化ブランドへのシフトを表明しており、開発が公表された第5世代のMINI第一弾となる3ドアハッチバックは、エンジン車と電動車が共存する最後のMINIとなる可能性が高い。それはクラシックMINIと現代MINIのクロスオーバーともいえよう。
しかし、最新作となり、新たな仲間となる「MINIエースマン」は、MINIを愛する人の生活を楽しくする存在であることは、さまざまなアイデアが盛り込まれた新たなデザインと機能からも明白だ。まだまだMINIワールドは広がりを見せるだけでなく、電動化などの最新技術を武器にどんどん面白くなる。そんなメッセージが込められているように思える。
そういえば、2021年6月に発表されたMINIのコンセプトカーには、ミニバンらいくな「MINIヴィジョン アーバノート」なんてのもあった。まずはMINIのEV専用車初となるエースマンがどんな市販車へと昇華されるのか、それが楽しみだ。
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みんなのコメント
全くイギリス関係ないじゃん!
テスラも2012年にモデルSが出た当初のデザインはグリルにカバーをかけたようなデザインでしたね。その後のフェイスアップでなくなりましたが。