現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > バッテリーサイズは同じでも新型日産リーフが航続距離400kmを実現できた理由とは

ここから本文です

バッテリーサイズは同じでも新型日産リーフが航続距離400kmを実現できた理由とは

掲載 更新
バッテリーサイズは同じでも新型日産リーフが航続距離400kmを実現できた理由とは

 モーターのパワーとトルクも大幅に向上

 新型リーフはモーターならではのタイムラグのない力強い走りと航続距離の延長を両立するとともに、利便性や安全装備を大幅に充実させ、派手ではないものの着実な進化と熟成が図られている。

「チョイ乗り」が多いとクルマを傷めるというのは本当か?

 プラットフォーム自体は先代から引き継いだものだが、車重増加と乗り心地や操縦安定性、エアロダイナミクスなどのために、サスペンションは新たにチューニングを実施。車高を10mmダウンして、トレッドもフロントで5~15mm、リヤで5~20mm拡大している。バッテリーがプラットフォーム中央に収まるレイアウトもそのまま受け継ぎ、バッテリーユニットのサイズは先代と同一のものを使用している。

 そのような制約があるものの、バッテリー容量は従来の30kWhから40kWhへと3割強もの拡大が行われている。リチウムイオンバッテリーの1単位であるセルは、ラミネートセル(パウチセルとも)と呼ばれる偏平型形状となっているのも同じだが、セルの厚さを約1mm増すとともに内部の電極材料を改良することで、エネルギー密度を増やすことに成功している。

 当然、そのまま搭載したのでは積層枚数を減らさなければいけなくなるので、モジュール構造が変更されている。従来はセルを4枚重ねてひとつのモジュールとしていたのを新型では8セルへと倍増させることで、モジュールを構成するための箱を半減した構造に変更している。

 具体的には従来が4セル×48モジュール(192セルとしていたのを8セル×24モジュールとして組み立てている。これは、電気的には2並列×96直列接続になるので、単純計算では約3.7V×96=355.2V。カタログスペック上の総電圧は350V(先代は360V)で、ユニット重量は先代比で約10kg増しとなっている。バッテリーユニットは従来と同じで車体への組み付け方法も同一なので、生産ラインは従来のものをそのまま使うことができ、製造コスト上でも有利になっている。

 バッテリーは容量だけでなく、耐久性の向上も図られている。新型ではモジュールあたりの積層セル数が2倍に増えているためセルの放熱という面では厳しくなってくるが、もともとラミネート型バッテリーは放熱特性が優れることと、先に紹介した電極材料そのものの改良もあって容量低下は従来以上に抑制。24kWhモデルに対して容量保証を5年10万kmから8年16万kmに延長し、かつ約10%程度の耐久性改善を実現させている。

 モーターは先代中期以降で採用されているEM57(先代前期型はEM61)でまったく同じだが、インバーター内のパワーモジュールの冷却性能を向上して、さらに制御方法も進化させている。減速時のエネルギー回生能力も大幅に増加し、アクセルペダルだけのワンペダルオペレーションであるe-Pedalを新採用することで、摩擦ブレーキに極力頼らずスピードコントロールが可能となっている。また、空力性能で新機軸を取り入れたことでとくに実走行での走行抵抗が大きく改善されている。それらによって、JC08モードでの航続距離は400kmを達成することができた。

 リーフの駆動用モーター型式は、先代の前期型がEM61で、中期以降はEM57となっている。どちらも最高出力は80kWと変わらないが、最大トルクや回転数、最終減速比は違っており、EM57のほうが小型化・高回転化されて最終減速比も大きくなっている。

 新型リーフでも、モーター自体はEM57で先代と同一のものを採用している。それでも、最高出力は先代の80kW(109馬力)/3008~10000rpmが110kW(150馬力)/3283~9795rpmに、最大トルクでは254N・m/0~3008rpmから320N・m/0~3283rpmと大幅に強化されている。これがエンジンと違うところで、モーター自体を変えなくても、1万分の1秒単位で制御する三相交流の出力方法を進化させることで、モーターのポテンシャルを余すところなく引き出すことが可能となるのだ。

 そのため、EVならではの発進加速のよさはさらに鋭くなり、0-100km/h加速タイムは先代から15%短縮、60-100km/hの追い越し加速タイムでは30%もの短縮に成功し、高速道路や登坂での駆動力でもストレスのないパワフルさが実感できるようになった。

 メカニズム的には、モーター上にレイアウトされるインバーターが変更されている。まずモーター制御用のインバーターだが、心臓部であるパワー半導体のIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)モジュールとCPUを新世代品にアップデート。制御精度が格段に向上し、制御信号を低速と高速の2段階で切り替えができるようになっている。これは、モーターの回転速度に合わせて高速な演算が必要になっており、たとえば70km/hとしたとき、車両は1万分の1秒で2mm進むが、そのピッチで次の制御信号を演算していることになる。

 IGBTモジュールは大電流を流すために冷却も必要となるが、冷やし方も一新している。従来はアルミケースの放熱部に取り付けられて、その内部を流れる冷却水に熱を逃していたが、放熱性能を上げるために新型ではIGBTモジュールを直接冷やす構造を採用してIGBTがフルに性能を発揮できるようにしている。

 パワーデリバリーモジュール(PDM)には、駆動用バッテリーの高電圧を一般電装品の12V系(実際は14V)に変換するDC-DCコンバーター、駆動用バッテリーやモーター、電動エアコンコンプレッサーといった高電圧系統のユニット間をつなぐジャンクションボックス、そして普通充電での交流100/200Vを直流の高電圧に変換する車載充電器がある。

関連タグ

こんな記事も読まれています

電動化の[新型ロードスター]でもこだわりたい”人馬一体”感!! でもやっぱり内燃機関でしょ!!!!
電動化の[新型ロードスター]でもこだわりたい”人馬一体”感!! でもやっぱり内燃機関でしょ!!!!
ベストカーWeb
スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第7戦SUGOは小出峻がポール・トゥ・ウインで今季2勝目
スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第7戦SUGOは小出峻がポール・トゥ・ウインで今季2勝目
AUTOSPORT web
宮田莉朋、2番手チェッカーもペナルティで後退。マルタンスが今季初優勝/FIA F2第6戦レース1
宮田莉朋、2番手チェッカーもペナルティで後退。マルタンスが今季初優勝/FIA F2第6戦レース1
AUTOSPORT web
角田裕毅、F1スペインGPは為す術なく19位がやっと「うまくいかなかった理由を理解すべく、全てを分析しなきゃいけない」
角田裕毅、F1スペインGPは為す術なく19位がやっと「うまくいかなかった理由を理解すべく、全てを分析しなきゃいけない」
motorsport.com 日本版
雨でびしょ濡れ! タッチパネルがめんどい! オッサンが最新式のクルマにキレる「ハイテクトラブル」急増中!
雨でびしょ濡れ! タッチパネルがめんどい! オッサンが最新式のクルマにキレる「ハイテクトラブル」急増中!
ベストカーWeb
ル・マンでサーキットの救急車に乗ることに! お土産は「カルフール」のレース関連グッズ、特にエコバッグがオススメです【みどり独乙通信】
ル・マンでサーキットの救急車に乗ることに! お土産は「カルフール」のレース関連グッズ、特にエコバッグがオススメです【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
“尋常じゃない上げ幅”のTEAM MUGENにどう対抗? セカンドロウの坪井翔&牧野任祐が得た手応え/第3戦SUGO
“尋常じゃない上げ幅”のTEAM MUGENにどう対抗? セカンドロウの坪井翔&牧野任祐が得た手応え/第3戦SUGO
AUTOSPORT web
フロントロウ独占の裏に“共闘”アリ。TEAM MUGEN陣営が振り返るそれぞれのアジャスト/第3戦予選
フロントロウ独占の裏に“共闘”アリ。TEAM MUGEN陣営が振り返るそれぞれのアジャスト/第3戦予選
AUTOSPORT web
F1 Topic:マクラーレンのモーターホームで火災発生。搬送者が出るなか、代表が被害状況把握に務める
F1 Topic:マクラーレンのモーターホームで火災発生。搬送者が出るなか、代表が被害状況把握に務める
AUTOSPORT web
フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在
フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在
AUTOCAR JAPAN
F1スペインGP決勝速報|フェルスタッペンがノリスとの接戦制す。RB角田裕毅は19位と苦戦
F1スペインGP決勝速報|フェルスタッペンがノリスとの接戦制す。RB角田裕毅は19位と苦戦
motorsport.com 日本版
フェルスタッペン、猛追ノリスを退け掴んだ今季7勝目に喜び爆発。角田裕毅は終始苦戦19位|F1スペインGP決勝
フェルスタッペン、猛追ノリスを退け掴んだ今季7勝目に喜び爆発。角田裕毅は終始苦戦19位|F1スペインGP決勝
motorsport.com 日本版
今見ても美しい!! 5ドアクーペルックのBMW3シリーズ320iグランツーリスモ試乗プレイバック
今見ても美しい!! 5ドアクーペルックのBMW3シリーズ320iグランツーリスモ試乗プレイバック
ベストカーWeb
豪華装備のダイハツ「アトレー」は街乗りもアウトドアも両立! ケイワークスならではのハイエンドマルチ軽キャンパーとは
豪華装備のダイハツ「アトレー」は街乗りもアウトドアも両立! ケイワークスならではのハイエンドマルチ軽キャンパーとは
Auto Messe Web
「1つ以外は」最新ミニに求めるすべて! 1.5L 3気筒の新型クーパー Cへ試乗 活発な子犬のよう
「1つ以外は」最新ミニに求めるすべて! 1.5L 3気筒の新型クーパー Cへ試乗 活発な子犬のよう
AUTOCAR JAPAN
ベントレー「ベンテイガ」に世界5地域からインスピレーションを得た限定シリーズが登場! マリナーが仕立てた極上旅を表現した5台とは
ベントレー「ベンテイガ」に世界5地域からインスピレーションを得た限定シリーズが登場! マリナーが仕立てた極上旅を表現した5台とは
Auto Messe Web
アクシデントで途中終了に終わったSF第3戦。優勝の野尻智紀が安全対策に警鐘鳴らす「起こるべくして起きた印象。準備が足らなかったのでは」
アクシデントで途中終了に終わったSF第3戦。優勝の野尻智紀が安全対策に警鐘鳴らす「起こるべくして起きた印象。準備が足らなかったのでは」
motorsport.com 日本版
【正式結果】2024スーパーフォーミュラ第3戦SUGO 予選
【正式結果】2024スーパーフォーミュラ第3戦SUGO 予選
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408.1583.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

12.0484.0万円

中古車を検索
リーフの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408.1583.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

12.0484.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村