マツダは2019年5月24日、次世代シリーズの先頭に立つ「マツダ3」の日本仕様の発売を開始した。このマツダ3は、これまでの「アクセラ」のフルモデルチェンジ・モデルだが、今回から海外で使用してきたこの車名に統一している。
マツダ3モデル概要
エンジンの常識は変わった 続々生まれる新しい技術トレンド 3/3回目
アクセラから数えて4代目となる新型マツダ3は、2018年11月のロサンゼルス・オートショーで発表された。そして2019年1月からアメリカで、3月からはヨーロッパで販売を開始しているが、ようやく日本での発売が開始されることになった。なおこの新型マツダ3は、日本とメキシコ工場で生産される。
アクセラからマツダ3に車名を変更したものの、ボディサイズはグローバルCセグメントであることに変更はなく、ボディはハッチバック(ファストバックと呼称)とセダンの2本立てであることも従来同様だ。ハッチバックのボディサイズは全長4460mm、全幅1795mm、全高1440mm、ホイールベースは2725mmで、サイズ的にはCセグメントの上限いっぱいだ。
ハッチバックは日本国内ではカローラ・スポーツ、シビック・ハッチバック、スバル・インプレッサなどと競合するが、マツダ3はそうした国内勢より、ゴルフ7、アウディA3などのCセグメント輸入車の顧客層を想定したクルマだと考えている。
一方、セダンのボディサイズは全長4660mm、全幅1795mm、全高1445mmでホイールベースはハッチバックと共通の2725mmになっている。セダンは、アメリカ市場、中国市場がメインになることもあって、Cセグメント超える全長になっている。日本ではセダンのマーケットは大幅に縮小しているが、トヨタ マークXの生産終了などもあり、多数派ではないものの伝統的なセダン愛好層にアピール、吸引できるクルマといえる。
深化した「魂動デザイン」
スカイアクティブ世代のマツダは、デザイン言語として「魂動デザイン」を掲げているが、今回のマツダ3からは深化した魂動デザイン、つまり第2世代の魂動デザインを採用している。そのデザイン手法は、コンセプトカーのRX-ビジョン、ビジョン・クーペなどで採用され、「魁(Kai)コンセプト」を経て今回のマツダ3に落とし込まれている。
第1世代の魂動デザインは、躍動感に溢れたダイナミックさを表現テーマとしていたが、第2世代の魂動デザインは光と陰影をテーマとした、日本の伝統的なデザインへと変わっている。マツダはこれを「引き算の美学」と称し、様々なデザイン要素を削ぎ落とし、プレスラインなどを使用せず、滑らかボディパネルに映り込む光の陰影によりクルマとしての美しさを表現するというものだ。そのためボディサイドにはキャラクターラインは存在せず、ワンモーションで構成し、ボディ側面を緩やかな凹面とすることで、凹レンズのように周囲の光景が写り込んで反射して見えるようになっている。
そしてハッチバックはエモーショナルな情感を表現し、特にボリューム感のあるCピラーによりキャビンとボディが一塊になる独自の存在感を生み出している。一方でセダンは水平基調でエレガントな端正さを強調している。
こうした新たなデザインを前提に、新型マツダ3の基本コンセプトは「誰もが羨望するクルマ」を目指して開発が行なわれている。
インテリアデザイン
インテリアは、ディスプレイや、3眼メータパネルなどをドライバー中心にしながら、インスツルメントパネルは左右対象のデザインを採用。そしてコックピット部分以外はシンプルな造形としている。
またシンプルなインテリア・デザインとしながら、例えばダッシュボードのシボは本革を忠実に転写することで質感を高めている。また一見するとピアノブラック調のシフトパネルは、光が当たるとカーボン柄のような模様が浮かび上がる2層成形とするなどエレガントな質感を実現している。さらにスイッチ類の触感も新たに統一設計され、今後のマツダ・プレミアムというにふさわしい質感を作り出している。
パッケージングでは、先代モデルよりデザインを重視した結果、ハッチバック、セダンともに前後のヘッドスペース、ショルダースペースがやや減少している。
シートは、今回から骨盤支持形状のシートを採用し、骨盤、腰椎をしっかりサポートすることで長時間のドライブでも疲れにくいシートになっている点も特筆すべきだろう。
パワーユニット
マツダ3はグローバルモデルのため、仕向地によって搭載エンジンが異なる。アメリカ市場、中国市場ではSKYACTIV-G 2.5L、ヨーロッパ市場では SKYACTIV-G 2.0とSKYACTIV-D 1.8をラインアップ。そして日本ではSKYACTIV-G 2.0,STYACTIV-G 1.5、SKYACTIV-D 1.8をラインアップする。そして2019年10月頃には新開発のSKYACTIV-X 2.0がヨーロッパと日本市場に投入される計画だ。
日本でラインアップされるエンジンは、遅れて登場するSKYACTIV-Xを含めて4種類だ。1.5Lが111ps/146Nm、2.0Lが156ps/199Nm、そして1.8ディーゼルが116ps/270Nmとなっている。また後から登場する火花点火圧縮着火燃焼式(SPCCI)のSKYACTIV-Xは出力未公表だが、24V電圧のマイルドハイブリッド方式も併用しているのも特長だ。
なおヨーロッパ仕様のSKYACTIV-G 2.0もこの24Vのベルトドライブ式スターター/ジェネレーターを使用したマイルドハイブリッドを装備している。この減速回生、加速アシストを行なうマイルドハイブリッド用のバッテリーはリチウムイオン電池を採用。今後はこのマイルドハイブリッドの採用を拡大していく方針だ。
トランスミッションは従来通りの6速AT、6速MTを設定。ただし6速MTは1.5Lエンジン車とSKYACTIV 2.0のみ選択できる。また4WDは、ハッチバックではSKYACTIVG 2.0搭載モデルを除く他のモデルに設定。セダンは全グレードがFFのみで4WDは設定されない。
ボディとシャシー
マツダ3のプラットフォーム、ボディは、新世代スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーと呼称し、新開発されている。新世代アーキテクチャーの第1弾となる。ボディ骨格はストレート形状の前後フレームと環状構造を組み合わせたもので、キャビン前後、サスペンション取付部などでの剛性の変化が少ない構造としている。
この新構造により、ボディ全体の剛性を高め、路面からの入力の伝達の遅れを少なくしている。また骨格の要所には、接着剤、樹脂を採用し、減衰性の向上、微振動の低減を行なっている。また骨格部は冷間プレス式の超高張力鋼板の採用比率を従来の3%から30%へと大幅拡大し、軽量化、高強度化を実現。さらにBピラーにはホットスタンプ鋼板を使用し、強度と衝撃吸収性能を向上させている。
サスペンションはフロントがストラット式、リヤは軽量でスペース効率の高いトーションビーム式だ。フロントはジオメトリーも一新し、横剛性を高め、トー変化の少ない動きにしている。リヤのトーションビームは中央部と外側でビーム径を変えた新構造を採用している。
またシャシー制御では、加速時、巡航時の操舵に対してエンジンを制御し、タイヤ荷重を増大させて旋回をアシストすると同時に、ステアリングを戻す場面で外輪側に弱いブレーキをかけるG-ベクタリングコントロール・プラスを採用。コントロールしやすい操縦安定性を実現している。
高い静粛性
新型マツダ3は、従来の基準を大幅に超える高いレベルの静粛性も追求している。侵入音の大きさを抑え、キャビンに侵入するノイズをコントロールすることで、音の変化や届き方によって感じる不快感を抑制している。具体的には、荒れた舗装路面などでのロードノイズをコントロールし、不快感を抑制している。
さらに遮音性を高めるために、ボディパネルと遮音マットの間に空間を設けた2重壁構造を初採用。またドア部の内側の開口部を少なくし、キャビン全体の遮音性能を向上させている。
安全性能
従来のマツダの「i-ACTIVSENSE」をさらに進化させ、「前側方接近車両検知(FCTA)」、「クルージング&トラフィック・サポート」、「ドライバーモニタリング」を新採用している。
前側方接近車両検知(1.5S、1.5Sツーリング以外のモデルに標準装備)はフロントサイド・レーダーを使用し、ドライバーが見えない横の路地などから出現するクルマを検知してドライバーに警告するシステムだ。
クルージング&トラフィック・サポート(1.5S、1.5Sツーリングは設定なし。PROACTIVグレードはオプション。その他には標準装備)は、高速道路の渋滞時には前車追従し、加減速、操舵アシストが行なわれる。
また全グレードにオプション設定されるドライバーモニタリングは、車内の赤外線カメラでドライバーをモニターし、居眠りや脇見を検知して警報したり、ブレーキ警告の早期化を行なうようになっている。
この他に、LED式オートライトも進化し、20分割のLEDを制御することで対向車の照射をカットしたり、自動可変配光を行ない、さらにハイビームの遠方照射性能も高められている。
装備
マツダ・コネクトが大幅に進化した。今回の新世代プラットフォームの導入に合わせて電子プラットフォームも採用。全信号をデジタル化し、ナビやインフォテイメントの電子制御の処理能力のアップ、システムの応答速度向上などが図られている。
センターディスプレイは8.8インチワイドサイズとし、2画面を同時表示可能になっている。またナビは3Dジャイロの追加、制御の高速化などを採用し、より正確で扱いやすいシステムにアップグレードしている。
また1,5S、1.5Sツーリング以外の車種には車載通信モジュールをオプション設定している。この通信モジュールを装備することで、常時通信によりオペレーターと通話できるコネクテッド・サービス、エマージェンシー(SOS)コールなどが利用できる。またスマートフォン・アプリを利用することでクルマの状態を通知するサービスも設けられる。
この他に、インフォテイメントとしては、スマートフォンとの連携も実現している。
新型マツダ3はオーディオ性能も飛躍的に向上させている。新たに「マツダ・ハーモニクス・アコースティックス」を開発して採用している。そのため、スピーカーの最適配置、スピーカーボックスの新構造採用、さらにドライバー中心、前席中心など音場コントロールも可能など、従来の標準オーディシステムの常識をくつがえす高品質の8スピーカー・オーディオシステムを実現している。
15S、15Sツーリング以外のグレードにオプション設定されるBOSEサウンドシステムは、12スピーカーを備えたハイグレード・オーディオシステムになっている。
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