■試作機から量産車まで、レアなハイブリッド車を紹介
1997年に世界初の量産ハイブリッド車、トヨタ「プリウス」が発売されて以来、いまでは世界中のメーカーからハイブリッド車が販売されています。
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「ハイブリッド」とは元々生物学で用いられた用語ですが、乗り物の場合は、ふたつ以上の異なる動力源を搭載していることを指します。
ハイブリッド車は爆発的に増え、いまでは軽自動車から大型ミニバン、トラックに至るまで多くのハイブリッド車が道路を走っていますが、なかには短命に終わったモデルもあるのです。
そこで、ハイブリッド車のなかから、非常に珍しいものや販売的に残念な結果だったものを5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「スポーツ800 ガスタービンハイブリッドカー」
前述のとおり1997年にトヨタがプリウスを発売してハイブリッド車の量産が始まりましたが、開発プロジェクトがスタートしたのは1993年といわれています。
しかし、トヨタによるハイブリッド車の開発開始は、それよりももっと前の1965年にまでさかのぼり、省エネルギー、軽量、コンパクト、低環境負荷という優れた特性を持つガスタービンエンジンに注目していました。
ガスタービンエンジンは、吸気・圧縮・燃焼・排気という一連のサイクルを回転運動のみでおこなう原動機で、ジェットエンジンもガスタービンエンジンのひとつです。
このガスタービンエンジンの特徴として、高い負荷で燃費が最大となり、低い負荷では急速に悪化してしまうことが挙げられ、クルマの動力源としては不向きとされていましたが、発電に使うならばこの特徴が活かせました。
そこで、トヨタはガスタービンエンジンのハイブリッド車の開発を1969年にスタートさせます。
1975年の第21回東京モーターショーに「センチュリー・ガスタービンハイブリッド実験車」を出展し、1977年の第22回東京モーターショーでは、ハイブリッドシステムを小型化した「スポーツ800 ガスタービンハイブリッドカー」が出展されました。
通称「ヨタハチ」と呼ばれる「スポーツ800」をベースに、ガスタービンエンジンと発電機、電流制御装置、バッテリー、モーター、トランスミッションを搭載。ガスタービンの動力は発電に使用し、駆動はモーターのみでおこなわれました。
エンジンの出力は30馬力ほどですが、最適な回転数を保ったまま発電をおこなうことで、レシプロエンジンよりも効率がよく、さらに燃料も灯油、軽油、天然ガスなど、さまざまなものが使えるというメリットがあります。
トヨタによるガスタービンハイブリッドの開発は1980年代まで続けられましたが、市販化には至らず、レシプロエンジンをベースにしたシステムに移行し、プリウスが開発されました。
それにしても、試作ハイブリッド車がスポーツ800をベースとしていたのは、とても遊び心のある試みです。
ちなみに、2019年10月24日に開幕した第46回東京モーターショー2019では、三菱がガスタービンエンジンを使ったプラグインハイブリッド車のコンセプトカーを出展しています。
●スズキ「ツイン ハイブリッド」
2003年に軽自動車のマイクロカー、スズキ「ツイン」が発売され、大いに話題となります。
通常、軽自動車のボディサイズは規格内ギリギリに拡張して設計されますが、ツインはシティコミューターとしての使われ方を想定して、全長はわずか2735mmの2シーターでした。
デザインはとにかく「丸」を基調としていて、ヘッドライトやテールライトも丸く、全体のフォルムもコロッとしています。
さらにツインにはハイブリッド車がラインナップされ、これは市販軽自動車初となる記念すべきモデルでした。
ハイブリッドシステムは、エンジンとトランスミッションの間に薄型モーターを配置して、加速時などにエンジンをアシストする、マイルドハイブリッドです。
バッテリーは12Vのオートバイ用小型鉛電池を16個直列につなぎリアに搭載して、192Vの電圧でモーターを動かしていました。
アイドリングストップシステムも採用され、10・15モードで34km/Lの超低燃費を実現。
ガソリン車の価格は49万円(5MT、消費税含まず)からと低価格に設定していましたが、ハイブリッド車は129万円(消費税含まず)からと非常に高価でした。
小さいことのメリットよりも2人乗りのデメリットのほうが大きかったためか販売台数は低迷し、わずか2年8か月でツインは販売を終了します。
●ダイハツ「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」
ダイハツは軽商用車では初となるハイブリッド車「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」を2005年に発売しました。
ハイゼットカーゴ ハイブリッドは、軽バンの「ハイゼット カーゴ」をベースに、1モーター方式のコンパクトなハイブリッドシステムを搭載し、高い走行性能と優れた燃費・低排出ガス性能を両立します。
バッテリーはニッケル水素を採用してリアシート下に格納しており、荷室容量への影響は最小限に留められました。
価格は215万5500円(消費税5%込)と、ベース車に対して100万円以上高価ということもあり、主なユーザーは官公庁や環境問題に関心の高い企業を想定。
燃費は10・15モードで20km/Lで、当時のガソリン車が15km/Lほどでしたから約3割向上していましたが、100万円の価格差を燃料代で相殺するのは、あまり現実的ではなかったようです。
結局、ハイゼットカーゴ ハイブリッドの販売は低迷し、2010年に生産を終了します。その後、ダイハツ独自のハイブリッドモデルはラインナップされていません。
■ひっそりと販売された日産初のハイブリッド車とは!?
●日産「ティーノハイブリッド」
プリウス発売から3年後の2000年、日産初の市販ハイブリッド車「ティーノハイブリッド」が発売されました。
ティーノハイブリッドは1998年に発売されたトールワゴン「ティーノ」をベースとして、燃費性能を同クラスのガソリンエンジン車の2倍以上を目標としていました。
パワートレインは101馬力の1.8リッター直列4気筒エンジンとふたつのモーターが組み合わされ、走行用モーターは23馬力を発揮。バッテリーは当時、プリウスでも採用していなかったリチウムイオンでした。
発進時や低速走行時はモーターの動力のみで走行するEV走行が可能で、一定の速度ではエンジンのみで駆動して急加速時はモーターがエンジンをアシストし、減速時にはモーターが回生発電をおこないバッテリーに充電すると、ハイブリッドシステムとしてはかなり高度な制御をおこなっていました。
しかし、大きく重いボディのため燃費は10・15モードで23km/Lと、プリウスの28km/Lと比べ劣っており、また、価格も330万7500円(消費税5%込)とプリウスよりも約100万円高で、価格面でも太刀打ちできませんでした。
ただし、ティーノハイブリッドは100台の限定販売だったので、じつはかなりのバーゲンプライスだったといわれています。
日産はティーノハイブリッドの販売以降、国内では10年間ほどハイブリッド車を生産しませんでしたが、実際は電気自動車の開発にシフトしていました。
●ホンダ「アコード プラグイン ハイブリッド」
2013年3月にホンダ「アコード」は国内販売を一旦終了しましたが、2013年6月に、9代目として全車ハイブリッド車とした「アコード ハイブリッド」が発売されました。
アコード ハイブリッドは、ホンダ独自の2モーター式ハイブリッドシステム「スポーツハイブリッド i-MMD」を搭載し、30.0km/L(JC08モード)という低燃費を実現。
このアコード ハイブリッド発売と同時に、PHEVの「アコード プラグイン ハイブリッド」が発売されていたのは、あまり知られていないのではないでしょうか。
なぜなら、アコード プラグイン ハイブリッドは、企業法人もしくは官公庁向けのリース販売だったためです。その後、2013年12月には個人にもリース販売を開始しました。
アコード プラグイン ハイブリッドはアコード ハイブリッドをベースに大容量のバッテリーを搭載し、外部からも給電でき、EV走行可能距離は37.6km(JC08モード)を達成していました。
しかし、当時はアコードそのものの存在感が薄れており販売が低迷。また、アコード プラグイン ハイブリッドは500万円(消費税8%込)と、アコード ハイブリッドよりも100万円以上も高かったため、極めてわずかしか売れず、2016年3月に販売を終了していまでは幻のモデルとなっています。
※ ※ ※
いま、国内外の自動車メーカーはEV、HV、PHEVといった電動車へシフトしています。今後、販売する新型車はすべて電動車にすると宣言したメーカーもあるほどです。
しかし、EVは革新的な電池が出ないことには急激な普及は難しく、もうしばらくはHVやPHEVといったエンジンを搭載した電動車の天下が続きそうです。
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