アドベンチャー・セグメントの王者、最新版となって遂に登場
BMWモトラッドの人気モデルで販売面でも大きな役割を持つ「GS」シリーズ。中でもBMWの伝統的な水平対向(ボクサー)エンジンを搭載した「R 1300 GS」シリーズへのモデルチェンジでまた新たなトビラを開きました。先代の「R 1250 GS」系から見ると、「アドベンチャーバイク=デカイ!」という方程式からシフトし、見た目も跨がってもコンパクトなものとなりました。
【画像】BMW Motorrad新型「R 1300 GS Advennture」シリーズを画像で見る(12枚)
1年の時間を経て、登場が待望されたのが「R 1300 GS Adventure(アール・センサンビャク・ジーエス・アドベンチャー)」です。1989年に登場した「R 100 GS PARIS-DAKAR(パリ~ダカール)」というモデルをルーツにした、舗装路・未舗装路性能や、長距離移動に適した装備を持たせたバイクです。世界一過酷なモータースポーツと言われる、パリ~ダカール・ラリーで当時4勝を納めたBMW「GS」のイメージを下敷きに造り出したモデルです。
その後、2002年からは「R 1150 GS Adventure」へと受け継がれ、旅するバイクの純度をさらに上げています。今作で4代目となる「R 1300 GS Adventure」は、こんな特徴を持っています。
「R 1300 GS」から11リッター増量された30リッター容量の燃料タンクや、大型化されたウインドシールドまわり。その高さを電動調整できるのも特徴です。快適なシートフォームにはシートヒーター、レーダー波による追従型クルーズコントロールも備えます。
また、車速によって自動的に車高を調整するアダプティブ・ライドハイト・コントロールも標準装備。停止時には車高を30mm下げ、50km/h以上になると車高が自動復帰するというものです。
灯火類では補助ヘッドライトが標準装備されることも「アドベンチャー」の伝統です。ダート走行での安心感とタフさを印象付けるエンジンプロテクションバーも標準装備します。
エンジンは排気量1300cc、最高出力107kW、最大トルク149N.mで、そのスペックは「R 1300 GS」と同じです。フレームは、メイン部分は鋼板を使ってコンパクトに仕上げた点は共通ですが、車体後部のリアフレーム部分は「R 1300 GS」のアルミダイキャストに対し、パニアケース、トップケース、タンデムランでの長距離悪路走行なども考慮し、よりタフな6角形のアルミ押し出し材とアルミ鍛造部品を組み合わせたものへと変更されています。
国内での気になる価格(消費税10%込み)は、装備面で同等となる「R 1300 GS Touring」が327万6000円なのに対し、「R 1300 GS Adventure」は335万5000円と、7万9000円高となっています。
仮に「R 1300 GS」にエンジンプロテクションバー、エンデューロフットレスト+ペダル、LED補助ライトなどをオプション選択すると、それだけで33万円以上になるので、ある意味で「アドベンチャー」はバーゲンプライスとも言えるのです。
最初に写真で見た「アドベンチャー」は巨大に見えました。しかし、現物は燃料タンクやエンジンプロテクションバーがもつ横方向への張り出しと、大型スクリーンがもたらす天地方向にサイズ感はあるものの、ノーズからタンク上部面、シートから後方へのラインが低く抑えられ、跨がると先代の「R 1250 GS Adventure」よりも明確に小柄な印象になります。
それでいてライダーの目の前には大きな燃料タンクがもたらす重厚なまでのアドベンチャーバイク感に満たされます。
今回の試乗では、通常のマニュアル(MT)モデルに加え、2025年モデルから「R」シリーズに適宜採用される、とウワサの「ASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)」を装備したモデルと双方に試乗できました。ダートもガッツリ走るようで、試乗車にはメッツラーの「カルー4」というダート向けタイヤが全車に装着されています。
最初に乗ったのは「GS Sport」というグレードで、前後でフラットになるシート、ロースクリーンなどを装備するオフロード走行を強く意識したモデルです。さらに、通常のマニュアルモデルにはオプションのアルミ鍛造ホイールも装備していました。
フロント210mm、リア220mmというホイールトラベルを持つこのバイク。オフロード系タイヤを履いていてもフロント52%、リア48%という重量バランスが、ラゲッジを載せていない状態では安心感あるハンドリングをもたらし、スペインのワインディングをスイスイ走ってくれます。
ブレーキのコントロール性の高さと制動力のバランスも「R 1300 GS」同様です。神経質な部分がありません。
149N.mの最大トルクを持つこのエンジン、2000~4000rpmの間で全てを受け止める懐の深さも備えています。BMWの「GS」シリーズ最大の魅力がここで、走りを楽しむことに緊張感を必要としません。発進時の半クラッチも、2024年モデルの「R 1300 GS」と比較しても、より扱いやすくなった印象です。
大きなバイクに翻弄されることなく、あっという間に友達になれる。そこが魅力です。
クロス(ワイヤー)スポークホイールと鍛造ホイールの差は、わずかに旋回に入る瞬間の軽さがあるかな、という感じです。強度もバッチリとのことだったので、スポークホイール信者も安心して使えそうです(高いですが!)。
実際、ダート路テストでも一体感、安心感、タイヤのグリップ感のどれをとってもサイズからは想像できないアジリティがあることを確認できました。「R 1250 GS」時代からも明確な進化を感じます。
クラッチ&シフト操作の自動化はどうだ?
次に、ASA装備の「Touring」仕様です。メカニズムとしては通常のMTと同じトランスミッション、クラッチの制御、シフト制御のアクチュエーターモーター、コントロールユニット、各種センサーを設けたシステムで自動変速、自動クラッチ制御を可能にしています。いわゆるオートマ的な「D」モードと、チェンジペダルを使ってシフトする「M」モードが選択でき、足元のシフトペダルも備えますが、これはメカニカルにミッションとの繋がりを持たず、パドルシフター的なスイッチだ、とのこと。
イグニッションスイッチを入れると、メーターには「P」という文字が。これは自動的に1速にシフトして、車両が動かないようホールドしているのです。シンプルなロジックを選んだことで、MTモデルとの重量差も3kg以内に納めています。
この点は、ホンダの「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」ではエンジン停止でニュートラルになるため、パーキングブレーキの装備などもあってMTモデルとの重量差が増える傾向があります。
停止時に「R 1300 GS Adventure」を動かす場合、イグニッションスイッチを押して一旦ニュートラルにする必要があるので、使い勝手をどう見るかは一長一短でしょう。
まずゼロスタートの発進で完璧な半クラッチを行なうASAは、市街地的な速度域でも滑らかなシフトが印象的。右側通行なので右折時が小回りとなりますが、その時でも駆動をしっかり保ちながら走ってくれます。Uターン時も同様。これは安心感と信頼感が高い!
「M」モードも体験しました。シフトペダルはスイッチ、とのことでMTモデルのシフトよりも操作が軽く、これはこれでなかなか良いのです。ただ、シフトプログラムやシフト感がきっちりと煮詰めてあるので、私(筆者:松井勉)は「D」モードと、必要な時にダウンシフトをペダルから行なうだけで満足度がありました。
高速道路での追い越し加速のように、ガバっとアクセルを開けるとホンダの「DCT」よりもややタイムラグあるキックダウンで、感覚とズレることもありますが、それを見越してペダルでダウンシフト操作をすれば、それも解決。このシステムとライダーそれぞれの個性、クセをチューニングすれば、相性バッチリだと感じました。
他のジャーナリストともASAの話題でもちきり。「買うならどっち?」という問いかけに、自分ならASAだね、と答えました。MTモデルとASA、それぞれに等量の使いこなす楽しみを内包しているからです。新しいモノ好きの私に、ASAはメガヒットです。
新世代「R 1300 GS Adventure」は、何所を走っても抜かりない、素晴らしい完成度でした。
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みんなのコメント
九分九厘オンロードしか走らん人は無印買った方が幸せになれると思う。
軽いし、キャストホイールの方が手間かからんし舗装路に適してる。
ただ、実を取るだけでは心が満たされないのも理解はできる。