この記事をまとめると
■6代目となる新型ステップワゴンが登場して「わくわくゲート」が廃止になった
ミニバン市場に異変! バカ売れだった「ノアヴォク・セレナ・ステップワゴン」が売れないワケ
■「わくわくゲート」のサブゲートの使い勝手は非常によくできていた
■左右非対称な見た目とドア自体の重さがデメリットとなっていた
新型で消えたステップワゴンの「わくわくゲート」
1996年にクリエイティブムーバーの第三弾として初代が発売され、日本のファミリーカー、多人数乗用車、Mクラスボックス型ミニバンをけん引してきたステップワゴンの6代目となる新型が今春、発売される予定だ。すでにディザー広告が始まり、YouTubeでのジャパンプレミアも済んでいる。そこで衝撃的だったのが、5代目の大きな特徴だった、第五のドア、わくわくゲートと、バックドア全体とは別に、玄関ドアのように横開きするサブドアが消滅したことである。
5代目ステップワゴンの売れ行きは、ホンダが想定したものとは違っていたようだ。2021年度の国産乗用車販売台数ランキングでは、Mクラスボックス型ミニバンとして、トヨタ・ヴォクシーが8位の7094台でトップ(旧型)。日産セレナが10位の6305台。ホンダ・ステップワゴンは15位の4713台に沈んでいるのだ(トヨタ・ノアは17位の4357台)。かつてこのクラスのトップセラーであった頃と比べると、寂しい限りである。
ではなぜ、e:HEVモデルを用意し、走りもいい、燃費もいいステップワゴンが苦戦してきたのだろうか。じつは、その理由のひとつが、わくわくゲートにあると言われている。
その便利さは、使ってみればわかるもので、たとえば、ボックス型ミニバン最大のウィークポイントだった、クルマを壁や後ろのクルマにギリギリにつけると、大きく後方にハネ上がるバックドアが開けられない……という使いにくさを、わくわくゲートの横開きするサブドアによって見事に解決。
通常のバックドアを全開にするには1m前後の車体後方スペースが必要だったところ、ステップワゴンの3段階に開く(止まる)サブドアでは、400mm、640mm、760mmの張り出し量となり、車体後方にあまりスペースのないシーンでも開閉し、荷物を出し入れすることができたのである。これが、先代ノア&ヴォクシーでは950mm。日産セレナではバックドア全体で1m前後、ガラスハッチだけ開くデュアルバックドアでも500mm前後の車体後方スペースが必要だったのである。
しかも、ステップワゴンのわくわくゲートは、サブドアによって荷物の出し入れができるだけでなく、人やペットの乗降も可能だった。3列目席左側席を簡単な操作で床下にすっきり格納する必要はあるものの、サブドア内側にドアオープナーやアシストグリップがあり、まさに第五のドアとして活用できる便利さ、楽しさが際立っていた。
「わくわくゲート」は諸刃の剣だった
しかし、それが、意外にも、5代目ステップワゴンの足を引っ張っていたのである。その理由はまず、後から見た時の左右非対称デザインにあったらしい。特に、このクラスのミニバンを購入する際の、実質的決定権を持つ女性の目に不自然に映ったらしく、ウケなかったというのだ(嫌い、違和感)。
では、左右対称であったならば、OKだったのか。じつはそうでもない。理由は、5代目ステップワゴンの運転席からの後方視界である。一般的なバックドアであれば、リヤウインドウは大きく広い1枚ものだ。が、わくわくゲートの場合、そこに縦の線が入ってしまう。それが後方視界を悪化させるほどではないにしても、気になる人は気になったようなのだ。
それだけではない。わくわくゲートのサブドアだけ使っていれば気にならないことなのだが、バックドアを大きく縦開きしようとすると、わくわくゲートのサブドアなどの重さが響き、かなり重い開閉操作となっていたのだ(5代目ステップワゴンにパワーゲート機能はなかった)。
さらに、筆者の推測としては、わくわくゲートによってリヤバンパーレスのデザインとなり、後部をぶつけたとき、追突されたときの被害が、バックドア全体に及ぶのではないか……という修理面での心配もあったと思われる。
そうした点を総合すれば、ライバルが真似をしなかったのも頷けるというものだし、日産は早期にバックドアにガラスハッチだけでも開閉できる、デュアルバックドアを採用(日産のステージアというステーションワゴンもガラスハッチだけ開閉した経緯がある)。
そして、新型ノア&ヴォクシーでは、任意の位置でバックドアが止まるフリーストップバックドアを開発。偶然にも、新型ステップワゴンもまた、バックドアの開き方を任意の位置で止められる、背が低い人でも手が届く位置にピタっと止まるように開度を記憶できるパワーテールゲート(スパーダ)を採用することになったのだ。
とはいえ、荷物の出し入れ性はともかく、人もペットも乗降できるわくわくゲートのサブドアの使い勝手の良さは、ほかにない魅力。なくなった今になって、その便利さが一段とクローズアップされたりしている、ないものねだりの今日、この頃なのだ。
左右非対称に見えない、あるいは後方視界に縦線の入らないわくわくゲートが開発され、縦開きする際の重い操作も、パワーバックドアを併用することで、現代のクリエイティブムーバーとして、わくわくゲートファンだった筆者は、5代目ステップワゴンのバックドアにかかわるウィークポイントがすべて解決し、より魅力的で使いやすい、ライバルなきMクラスボックス型ミニバンになり得ると思えたりするのである。
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