この記事をまとめると
■全日本ラリー選手権の第4戦はシュコダを駆るコバライネンが圧勝
サンルーフなワケでもないのになぜ? ラリー車の屋根にある「謎の穴」の正体とは
■スバルはVAB型のWRXを改良しながら闘い3度目の表彰台を獲得
■今シーズン途中から投入予定のWRX S4にも期待が高まる
ラリーの現場ではスバルがまだまだ強かった
全日本ラリー選手権・第4戦「久万高原ラリー」が5月5日~7日、愛媛県久万高原町を舞台に開催。あいにくの五月雨によりウエット路面でタイム争いが展開されるなか、2022年の王者、ヘイッキ・コバライネンがシュコダ・ファビアR5を武器にすべてのSSでベストタイムをマークし、最高峰のJN1クラスで3連勝を達成した。
トヨタGRヤリスRally2の開発モデルを駆る勝田範彦が2位に入賞。そして、賞賛すべき躍進を遂げたのが、スバルWRXラリーチャレンジを駆る鎌田卓麻で、3位入賞を果たし、開幕戦「ラリー・オブ・嬬恋」での優勝、第2戦「新城ラリー」での3位入賞に続いて、今季3度目の表彰台を獲得した。
まさに鎌田が素晴らしい安定感を見せるほか、第3戦「ツール・ド・九州」では新井敏弘も5位入賞を果たしたが、その原動力となっているのが、スバルWRXラリーチャレンジにほかならない。
今季のJN1クラスは国際規定モデルのRally2/R5仕様車のほか、国内規定のJP4仕様車が参戦可能で、スバルはS4をベースとするニューマシン、スバルWRXラリーチャレンジ2023の開発を発表。シーズン後半戦からの投入が予定されているが、それに先駆け、昨年まで主力モデルとして投入されていたVAB型WRXにさまざまなアップデートが実施され、スバルWRXラリーチャレンジとしてVAB型WRXの改良モデルが投入されている。
まず、第2戦の新城ラリーで行われたアップデートが冷却性能の向上と軽量化、そして吸気リストリクター系の拡大だ。
スバルからははっきりとアナウンスされていないが、ボンネットフードの両サイドに冷却用のエアダクトがレイアウトされたほか、両サイドやリヤのウインドウを見てもわかるように、フロントスクリーン以外の材質が、ガラスからポリカーボネートへ変更。さらに左右のドアトリムもカーボンパネルが装着されていたが、こちらも不要なパーツが切削されたうえで、耐衝撃性を高めるためにウレタンが注入されているのだろう。
これに合わせて吸気リストリタクター径を33mmから34mmに変更されるなど細部の改良を実施。
一方、フロントのブレーキキャリパーに関してはレギュレーションに合わせて、昨年までの6ポッドから4ポッドに変更されるほか、装着タイヤも、昨年までのハイグリップラジアルからFIA公認タイヤ、タイヤ幅では245mmから刻印サイズで215mmに変更されるなど、ダウングレードが行われているが、第3戦のツール・ド・九州では、ミッションのシーケンシャル化が行われるなど、まさに最終型へ進化したVAB型WRXはレーシングマシンと言える仕上がりとなっているのである。
GRヤリスにも負けない領域に入ってきた
「軽量化としては30kg~40kgで、リストリクターの拡大により最高出力が15馬力ぐらいアップしています。昨年のタイヤと違うので、直接的な比較はできませんが、冷却性能の向上やシーケンシャル化で確実にパフォーマンスはアップしています」と語るのはチーム監督の嶋村 誠氏。
事実、そのパフォーマンスは高く、前述のとおり、これまで2台のスバルWRXラリーチャレンジはJN1クラスで躍進中だ。
同モデルの感触について「フィーリングは激変しました。軽さを感じるし、シーケンシャルもいい。タイヤが違うので単純な比較はできませんが、タイヤ依存で走っていた昨年と違って、今年は細いタイヤでもグリップを生かせるような走りができていると思います」と鎌田が語れば、新井も「クルマは軽くなっている。昨年までのGRヤリスには追いついたと思う」と語る。
このようにスバルWRXラリーチャレンジは、VAB型WRXの最終バージョンとして進化を重ねてきたが、S4ベースの2023年仕様車はVAB型WRXの最終バージョンと同様に材質置換による軽量化やボンネットダクトの冷却性能の強化、34mmの吸気リストリクターが採用されるほか、新たなアイテムとして競技専用のサブフレームおよびロワアームが採用される予定。剛性の向上に加えて、ジオメトリーの変更が行えることから、セッティングの自由度が広がってくることだろう。
前述の嶋村監督によれば「先行開発としてVAB型WRXの軽量化や冷却性能の向上、リストリクターの拡大を行ってきましたが、昨年までのGRヤリスに追いつくことができました。それに、R5仕様車に対しても昨年まで1kmあたり2秒ぐらい離されていましたが、いまは1秒まで追いついてきたので、S4ベースの2023年型モデルではR5に対して、1kmあたり0.5秒ぐらいのところまでいきたい」とのこと。
さらに「ボディは大きいけど剛性が高いので、VABと車両重量が同じぐらいに収まればクルマは軽く動くと思う。あとはFA24型エンジンが直噴なので、そこにアドバンテージが出ることを期待している」と新井。
「いままでできなかったジオメトリーの変更ができるし、ボディも良くなって、エンジンパワーも上がっていると思う。タイヤをうまく使えるようなセッティングができれば、いままで以上に戦えると思います」と鎌田が語るように、両ドライバーの2023年型モデルへの期待値は高い。
S4ベースの2023年型モデルはいまだ開発中で、デビュー戦のタイミングは第5戦のラリー丹後もしくは第6戦のラリー・カムイになりそうだが、大幅なパフォーマンスアップを期待されているだけに、今後の動向に注目したい。
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みんなのコメント
先細り感半端ナイ