伊藤真一さんにホンダのオートバイを思う存分乗り尽くしてもらい、新しい魅力を発見するロングラン研究所。今回は人気の原付二種2台を市街地から幹線道まで、その実力と使い勝手を検証!
語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川忍/モデル:大関さおり
まるでモーター付きのハイブリッドモデルのようにスムーズに回り、スピードの乗りも良いクロスカブ!
最初に乗ったのは、クロスカブ110の方でした。ベースとなったスーパーカブ110は以前この連載でも取り上げましたが、スーパーカブに比べてクロスカブはエンジンのフィーリングがすごく滑らかになった印象を受けました。
あと、スーパーカブに試乗したときも、1980年代のモデルに感じた自動遠心クラッチの「ガッチャンコ感」が少なくなったと思いましたが、今回乗ったクロスカブはクラッチが繋がったときのショックがなく、スッと繋がるんですね。これもより良くなった、と感じる部分でした。
「ガッチャンコ感」がないのは、自動遠心クラッチの設計とセッティングの良さからなのでしょう。ただエンジンがより滑らかになったのは何故なのか、不思議に思いました。スーパーカブよりも低速が出ていて、振動も少なくて回転のフリクション感もない。
ホンダ車は細かい改良が施されることが多いので、その改良の成果なのかもしれません。クロスカブはRVっぽい見た目なのでもっと荒々しい走りをするエンジンなのかと予想したので、すごくスムーズな吹け方をするエンジンで、ちょっとビックリしました。言い方は変ですが、PCXハイブリッドみたいにモーターでアシストしているような、そんな滑らかさでした。
スペックの数字を見比べると、クロスカブはスーパーカブよりも7kgも重いのですが、スピードの乗りも良くて走っていて重さは感じませんでしたね。2次減速比がスーパーカブよりローギアードなのも、低速が良くなったと思わせる要因なのかもしれません。
車体については、サスペンションも前後へ過度にピッチングするわけでなく、クッションストローク時にサスペンションが良く動いていました。
あと、乗り心地の良さがとても印象に残りましたね。タイヤの設定が良いのでしょう。路面の凹凸をトレッド部の変形で包み込むエンベローブ特性が良い印象のタイヤで、前輪タイヤがスーパーカブよりも幅がちょっと太くなっているのも、乗り心地の良さに結びついているのだと思います。
クロスカブのライディングポジションは大柄な自分にはちょっと窮屈でしたね。シート後端に座ってもハンドルが膝に近い感じがしたので、もうちょっとバーハンドルを前に倒した位置にしたいな、と感じてしまいました。
「これがモンキーなのか?」 緻密な路面インフォメーションに絶妙なエンジンレスポンス。家に1台欲しくなりました!
ひと通りクロスカブの走りを確認した後に、モンキー125に乗ってみたのですが、このモデルに乗るのは今回が初めてでした。昔のモンキー系はゴリラを持っていたりしましたが、旧モンキー系とモンキー125はまったく違う乗り物ですね。
旧モンキー系はホビーバイクみたいな考えで作られたコンパクトさが魅力でしたが、モンキー125は車体が大きくなっていて、乗った瞬間からこれは1台のバイクとして思いのほか良くできている、と感心させられました。
モンキー125のタイヤはワイドな12インチですが、小径であることを意識させないというか、タイヤから得られる路面からのインフォメーションがとても良く伝わってきて、道路の上を走らせている! という楽しい感覚が味わえます。
エンジンも低回転域から高回転域までレスポンスが良いのですが、スロットル操作に対するエンジンの反応が「ツキ」過ぎない…、レスポンスが過敏すぎない設定になっているのが絶妙だと思いました。ああ、バイクに乗っているのが楽しいな~と、モンキー125に試乗している間は、そんな感覚に浸ることができましたね。
モンキー125の車体は、グロムの設計を元に作られていますが、グロムの走行フィーリングとモンキー125のそれは、全く違う印象だったのには驚かされました。グロムはリア1本サスペンションでモンキーは2本など、そもそも構造が違う部分もありますが、エンジンの基本設計が一緒なのにここまで走りが変わるのか、と思いましたね。
グロムは12インチのミニバイク、という操安性ですが、モンキーの方はひとクラス上の安定感というか、操安性の良さがありますね。スイングアームもしっかり幅広に作ってあって、この車体は構造的にしっかりしているな、という安心感が走らせていてありました。モンキー125のフロントフォークは自分の好みよりちょっと柔らかすぎると思いましたが、前後ともサスペンションの動きはとても良いです。
シートの出来もとても良いですね。ちょうど良い感じで路面からのショックが乗り手に伝わりつつ、乗り心地の良さをキープしているシートで、ドーンと座っていても前後タイヤからのインフォメーションがお尻から伝わってくる。
四輪車の話になりますが、シートの良いクルマは運転しやすかったり、運転が楽しいじゃないですか? 荷重をかけたり、グリップ感とかを乗り手に伝えてくれるパーツとして、バイクにとってもシートは大事なパーツですが、モンキー125のシートは重心をドーンと車体にかけやすくて、快適性にも優れたとても良い仕上がりだと思いましたね。
なお今回試乗したモンキー125は5800kmほど走行した車両でしたが、あの幅広の小径タイヤが摩耗していくと、ハンドリングへの影響が大きいだろうと想像しました。6000km近く走行しても、これほど高水準の走りを楽しめるので問題ないとも言えますが、モンキー125本来の走りを楽しむためには、タイヤの状態のチェックは心がけた方が良いでしょう。
コストの問題やそれぞれの外観の好みもあるが、市街地を走る原付クラスこそ、ABS付を積極的に選びたい。
今回はホンダの原付二種モデルを2台乗り比べましたが、このクラスのモデルのブレーキについて、ちょっといろいろ考えさせられる試乗にもなりました。
クロスカブは前後ドラムブレーキを採用していますが、フロントブレーキはちょっと効きが弱くて、リア側は良く効くな、という印象でした。フロントブレーキ側はパニック時には制動力が足りないのでは、という気もしましたが、だからと言ってディスクブレーキにすると、コストアップで販売価格も上がってしまうでしょう。外観とかの理由で、ディスクよりもドラムの方が好きという方もいますし…。
一方モンキー125はディスクを前後に採用してますが、ABSなしのスタンダードと今回試乗したABS付きでは約4万円の価格差があります。昔の12インチミニバイクのNSR50/80とかは乗車位置がモンキー125よりも低く、ステアリングヘッドパイプ位置とハンドル位置も低かったので、急ブレーキをかけてもジャックナイフ状態になりにくかったですが、モンキー125の場合は乗り手の重心が高いです。
ブレーキの効力自体は排気量の大きいスポーツバイクほど強くはないので、急制動でジャックナイフから前転…、まではいかないと思いますけど、自分が選ぶならば安全第一でABS付きを購入するでしょうね。
先ほどもコストアップの話をしましたが、排気量の大きいスポーツバイクよりも幅広い層の人が乗り、交通量の多い市街地を走る機会が多い原付クラスこそ、ABSを普及させるのが大事なのかなとも思いました。まぁ贅沢を言ったらキリがありませんが…。
クロスカブとモンキー125のどちらかを選ぶとなると、価格差のことを考慮しなくても良いのであれば、やっぱりスポーツ性の高いモンキー125ですね。ただカラーバリエーションがどれも明るい若者向けの色なので、自分のようなオジサンも気恥ずかしくないシックな色が欲しいです(苦笑)。
2019年の東京モーターショーで展示していた「CB1000Rカスタマイズコンセプト」みたいな、ブラックアウト仕様とかがあると良いですね。フォークオイルを変えて、ちょっとフロントサスペンションのセッティングを変えるくらいで、あとはカスタムはしなくても良いかな、と思いました。もしクロスカブを自分で買うとしたら、アウトドアっぽいイメージが強いグリーンを選ぶかな?
でもモンキーは自分が所有するというより、娘に小型自動二輪免許取らせて乗せたいな、と思いますね。ちゃんとマニュアル変速だし、バイクの楽しさを娘に知ってもらうにはとても良い1台なので……あと保険がクルマのファミリーバイク特約を使えるのも、お財布的にいいなと思いました(笑)。
【モンキー125とクロスカブ110のライディングポジション]
大柄な伊藤さんでもライポジに余裕あるモンキー125!
一見すると、小径タイヤのモンキー125の方がコンパクトさゆえに窮屈なのかと思いきや、「自分の体格では、クロスカブ110の方はシートの後端に座っても、ハンドルを持つ手と膝の距離が近くて、もっと後ろの方に座りたく感じてしまいましたね」。
一方モンキー125については、「自然なライディングポジションで、不満を全く憶えませんでした」と伊藤さんは高く評価。なおモンキーは1人乗り仕様ですが、クロスカブはタンデムステップがあり、オプションシートを装着すれば、2人乗りが可能です。
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【アンケート】あなたは今回の2台、どちらがお好きですか?
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